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ほとんどEU競争法の部屋になりかけていますけど、それはそれで。でも、駒澤綜合法律事務所は、「ロコでロハスな法律事務所」(死語か)を目指しています。
冗談はさておき、「Google faces a second massive fine from the EU — this time over Android」という記事がでています。欧州委員会が、モバイルOS市場について、アンドロイドOSが、支配的地位の濫用があったとして、7月4日のエントリの比較ショッピングサイト市場に対する検索市場の支配的地位の濫用を根拠とする罰金にもならぶ、罰金を課せられるだろうという記事です。
この事件は、40099 Google Android事件になります。事件の進行状況は、このページからみることができます。
欧州委員会の手続きは、 Statement of Objections(異議告知書)で開始されますが、その際のプレスリリースは、こちらです(2016年4月15日)。ファクト・シートは、こちら。
このファクト・シートによると、
(1)Googleが、自らのアプリケーションやサービスを、排他的にプレ・インストールすることに対して、スマートフォン/タブレットのメーカーに要求またはインセンティブを与えることによって、Googleがライバルのモバイルアプリケーションやサービスの開発と市場アクセスを違法に妨げているかどうか。
(2)Googleが、アプリケーションやサービスをいくつかのAndroid搭載端末にインストールすることを希望するスマートフォンやタブレットメーカーが他のデバイスに修正された競合するAndroidバージョン(いわゆる「Androidフォーク」)を開発したり、販売したりすることを妨げているか、それによって、 競合するモバイルオペレーティングシステムおよびモバイルアプリケーションまたはサービスの開発および市場アクセスを妨げているか、どうか。
(3)Googleが、その他のGoogleアプリケーション、サービス、API(アプリケーションプログラミングインターフェイス)とAndroidデバイス上で配布されている特定のGoogleアプリケーションやサービスを、結びつける/バンドルすることによって、Googleが競合するアプリケーションやサービスの開発や市場アクセスを違法に妨げているかどうか。
が調査の対象ということです。
Statement of Objectionsの内容は、こちら。
「グーグルの市場支配的地位」「委員会の懸念」から構成されています。
「グーグルの市場支配的地位」
「グーグルの市場支配的地位」においては、「dominant in the markets」として、「一般的検索サービス市場」「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」「アンドロイド・モバイルOS市場におけるアプリケーション・ストア市場」において、支配的地位を占めていると主張しています。
「一般的検索サービス市場」は、わかるとして「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」というのは、第三者の製造業者が、デバイスに利用できるものをいうそうです。逆に言うと、垂直統合された開発者によって、利用される基本ソフトは、含まないそうです。
個人的には、アンドロイドOSとiOSが、同一市場ではないという認識をしめしているのですが、これは、?ですね。どう考えても、iPhoneとアンドロイドは、同一の市場で争っているような気がするので、欧州委員会は、どうしちゃったの、という感じです。ECの見解だと、アンドロイドのライバルは、WindowsMobile、FirefoxOSということになるのでしょうか。さらに「アンドロイド・モバイルOS市場」という細かい市場までいくと、どうなのでしょうか。
「委員会の懸念」
「委員会の懸念」においては、グーグル製アプリのライセンス、断片化防止、排他性の項目のもとにさらに論じられています。
グーグル製アプリのライセンス
これは、Android用Googleアプリストア、Playストアを端末に事前インストールすること、Google検索の事前インストールを希望するメーカーは、これらの端末でのデフォルトの検索プロバイダとしすること、また、GoogleのPlayストアや検索機能を事前にインストールしたいメーカーは、GoogleのChromeブラウザをあらかじめインストールしておく必要があるということを意味しています。
グーグルのアンドロイドをインストールする場合に、一定の条件を課しておくということなのですが、「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」「アンドロイド・モバイルOS市場におけるアプリケーション・ストア市場」 などに細分化して、それぞれで、支配的地位を考えていくというのか特徴になりますね。どうも、日本的には、スマートフォンでの経験がポイントなので、その経験として、どのようなものを提供するかは、提供者の裁量がおおきいんじゃないの?という感想をもちそうですが、どうでしょうか。MSのOSと、ブラウザー市場を分けて、IEブラウザつきのWindowsとIEなしのWindowsを発売させたECなわけですが、それが、消費者にとって、どれだけのメリットがあったんでしょうかね。そんなことをしている間に、サービスは、みんなブラウザ上でおこなわれるようになっているわけです。
断片化防止
委員会によると、「Androidはオープンソースのシステムです。つまり、誰でも自由に使用して開発し、変更されたモバイルオペレーティングシステム(いわゆる「Androidフォーク」)を作成することができます。 もちろん、オープンソースモデルは、競争上の懸念を提起しません – 逆に。 委員会の懸念事項は、オープンソースではないAndroid搭載デバイスでのGoogle独自のアプリやサービスの使用条件に関するものです。特に、メーカーがGoogle PlayストアやGoogle検索などのGoogle独自のアプリをそのデバイスにあらかじめインストールしたい場合、Googleは、Androidフォーク実行中のデバイスを販売しないようにする「アンチフラグメンテーション契約」を締結する必要があります。」というのが問題であるということだそうです。
Google独自のアプリやサービスの使用条件として、OS独自の開発をしないという約束をさせることが、OSが、イノベーティブなものになる機会を消費者から奪っているというのが、委員会の主張です。個人的には、Google独自のアプリやサービスを考えるときには、アンドロイド・アプリ/サービス市場(ストアではなくて)を考えるべきでしょうし、そのなかでは、グーグルは、それほど、力があるとは思いません。(私は、純正で使っているのは、ドライブくらいかな。)それによって、イノベーティブなOSの開発を妨げられているというのは、どうも、分析になっとくがいっていないところです。中国製のGマーケットがないところでも、別にイノベーティブな断片化したOSが生まれているとは、おもえないしね、というところです。
どちらにしても、ここらへんの市場画定は、面倒なところです。
排他性
委員会によると、グーグルは、スマートフォンメーカー・タブレットメーカーやネットワークオペレーターに、多額のインセンティブを支払っていて、排他的に、グーグル検索エンジンをプリインストールさせているのを認めている。委員会としては、もし、他の検索サービスがプリ・インストールされていれば、インセンティブが支払われないというのであれば、問題であると考えているとしています。これは、我が国においても、取引の相手方にたいして、取引のライバルと取引しないことを条件として、条件することは、違法とされるので、インセンティブの額・効果が、取引の拒絶なみであれば、そうなるかな、という感じでしょうか。
どうも、「排他性」のところを除いて、微妙な異議告知書のような感じがします。どのようななりゆきになるのでしょうか。
アップル信者の存在の科学的証明?-
ところで、「アップル信者の存在の科学的証明?」というようにエントリの題名を変更しました。これは、上で検討したように、欧州委員会は、iOS市場と、「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」とは、別物であるという認識を有しています。通常の市場画定の作業については、別のページで触れているのですが、欧州委員会は、需要代替性を優先して判断するということをいっています。ということは、需要者をもとに考えて、価格が、5パーセント程度上昇しても、需要者は、代替物には、移動せずに、その価格上昇を許容することになります(SSNIPテストです)。要は、iOSの需要者は、「ライセンス可能なスマートフォンOS」を要した製品とは、別物を使っているので、代替製品ではないと考えていると欧州委員会がデータでもって、判断しているということになります。欧州委員会がどのようなデータを取得しているのかは、よくわかりません。私だったら、オンライン調査で、調べてみたいところですが、それは、さておき、踏まれても、蹴られてもついていきますというのが、iOSの需要者ということになりそうです。世間では、それを「信者」というのですね。