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競争法の教科書に紛れ込んだついでに、いま一つエントリを。「欧州委が示す巨大ネット企業の責任」という記事がでています。
EUのプレスリリースは、こちら。
ネットワーク中立性でも示しましたが、独占状態にあることが問題になっているわけではなくて(プレスリリースでも、Market dominance is, as such, not illegal under EU antitrust rules.って書いてあるでしょ)、具体的な排除行為が問題となるわけです(この点は、昨日のエントリでもふれておきました)。
市場の認定
ここでは、ヨーロッパ経済圏(EEA)におけるそれぞれの国における検索市場において「支配的地位(ドミナント・ポジション)」であると認識されています。各国での検索市場での支配的地位と高い参入障壁が認定されています。
支配的地位の濫用
これは、同一市場にせよ別市場にせよ、その支配的地位をその市場において固定・拡張したり、他の市場において「テコ」として利用することが禁止されているわけです。
本件においては、比較ショッピング市場において、この検索市場における支配的地位を頻用したと認定されています。具体的には、自分たちのサイトの検索結果を上に表示する(prominent placement)、また、ライバルのショッピングサイトの検索順位が下がる(demotions-格下げ)アルゴリズムを利用していたとされています。
違法行為による結果
この結果、グーグルの検索結果の現れ方が、ユーザのクリックやトラフィックに影響を与えています。また、グーグルの比較ショッピングサービスへのアクセスを増やし、ライバルのサービスへのトラフィックを減らしています。
あとは、グーグルに関連するものとして、アンドロイドの基本ソフトと、アドセンスの事件があるようです。
この事件の事実関係をみるときに、別の市場における競争を排除するために、支払的地位を濫用するという形態であるということになります。
ちなみに、わが国でいくと、「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」における供給拒絶・差別的取扱と同様の構造になるということもできそうです。
該当部分は、「供給先事業者が市場(川下市場)で事業活動を行うために必要な商品を供給する市場(川上市場)において,合理的な範囲を超えて,供給の拒絶,供給に係る商品の数量若しくは内容の制限又は供給の条件若しくは実施についての差別的な取扱い(以下「供給拒絶等」という。)をすることは,川上市場においてその事業者に代わり得る他の供給者を容易に見いだすことができない供給先事業者(以下「拒絶等を受けた供給先事業者」という。)の川下市場における事業活動を困難にさせ,川下市場における競争に悪影響を及ぼす場合がある。このように,供給先事業者が市場(川下市場)で事業活動を行うために必要な商品について,合理的な範囲を超えて供給拒絶等をする行為(以下「供給拒絶・差別的取扱い」という。)は,排除行為に該当し得る」ということなのですが、川下市場が「比較ショッピング市場」で、川上が、「検索市場」だとすれば、(比較ショッピング市場が、完全に検索市場に依存しており、そこからの検索でもって上位にランク付けされるという情報の供給がないのであれば、サービスが成り立たないということになるので、このような比喩もなりたちえそうです)、ランクを下げることは、「合理的な範囲を超えて供給拒絶等をする行為である」、ということもできそうです。
ただし、私たちがオンラインショッピングをするという時の行動が果たして、そうなのかというのは、問題ですね。というか、個人的には、完全にアマゾンに直行してしまいます。なので、委員会の市場の認定については、どうも個人的には、違和感が残ります。ITの分野で、MSのOSと、ウエブブラウザーを分離した法的紛争で、どれだけ役に立つ判断がなされたのでしょうか。イノベーションを敵視している間に、他の形態の競争が生まれて、市場の形が変わりつつあるのに、いまさら、の議論をしているようにも思えます。
(なお、利害関係を明らかにしておくと、アルファベットとアマゾンは、株式を有しています)