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図解 アップル・エピックゲームズ事件判決の理論的?分析

「アップルがApp Store外での決済方法への誘導ブロック禁止に、Epic Gamesとの裁判で」(techcrunch)の記事がでていますが、2021年9月10日朝、連邦地方裁判所 カリフォルニア北地区の判事がサードパーティによる支払いに関して「Fortnite」のメーカー(エピックゲームズ社)の主張を一部認める判決を出したと報道されています。

かたや日本では、公正取引委員会が、「(令和3年9月2日)アップル・インクに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」のプレスリリースを公表しており、それとの比較とかも面白いのかもしれません。(但し、細かい理論分析はないです-「競争に影響を与えるおそれ」でもって、判断がなされているので、以下の判断と比較してみるのもおもしろいでしょう。)

判決(理屈の上では、命令)は、こちらのページです。 185ページにわたる大部なものです。

連邦民事訴訟規則52条に基づく命令になります。

ちなみに、連邦民事訴訟規則52条は、こちら

陪審員なしまたは諮問陪審員を用いて事実に基づいて審理された訴訟において、裁判所は事実を特別に認定し、法律の結論を個別に述べなければならない。所見と結論は、証拠の終結後に記録に記載するか、裁判所が提出する意見書または決定の覚書に記載することができる。判決は規則58に基づいて下さなければならない。

概要は、そのまま訳します。


原告の Epic Games, Inc. は、Apple が App Store を運営していることに基づき、連邦および州の反トラスト法およびカリフォルニア州の不正競争防止法に違反しているとして Apple, Inc. をを訴えた事件です。大まかに言えば、Epic Gamesは、Appleが、(i)App StoreでApple自身のデバイスにアプリを配布するApple自身のシステム、および(ii)App StoreでApple自身のデバイスで購入された代金や手数料を徴収するApple自身のシステムに関して、独占禁止法上の独占者であると主張しました。つまり、アップル社がApp Storeに対する自社システムを「独占的」に支配していると主張しています。Appleは明らかにこの主張に異議を唱えました。

独占禁止法は、競争を保護するものであり、競合他社を保護するものではありません。競争は、革新と消費者満足をもたらし、自由市場システムの効果的な運用に不可欠です。また、独占禁止法では、ある行為者が市場での地位を利用して人為的に競争を制限しているかどうかを判断するために、市場構造と行動の両方を評価します。

独占禁止法のケースでは、「関連市場」の適切な決定が中心となります。Epic Gamesは、Appleは誰とも競争しておらず、1つの独占企業であると主張して訴訟を構成しました。対照的に、Appleは、競争の有効な領域は、AppleとEpic Gamesが激しく競争しているすべてのデジタルビデオゲームの市場であると主張しています。デジタルビデオゲーム市場では、Appleは独占力を享受していないため、連邦法および州法に違反していないと主張しています。

裁判所は、両当事者による関連市場の定義に同意していません。

最終的に、裁判の証拠を評価した後、裁判所は、ここでの関連市場は、デジタルモバイルゲーム取引であり、ゲーム一般ではなく、また、App Storeに関連するApple自身の内部オペレーティングシステムでもないと判断しました。モバイルゲーム市場自体は、1,000億ドル規模の産業です。この市場の大きさは、Epic Games がこの訴訟を起こした動機を説明しています。他のすべてのビデオゲーム市場に進出した Epic Games にとって、モバイルゲーム市場は次のターゲットであり、Apple はその妨げとなっていると考えています。

さらに、App Store の収益のほとんどは、すべてのアプリではなく、モバイル ゲーム アプリによってもたらされていることが証拠によって証明されています。したがって、ゲームアプリに焦点を当てて市場を定義することは適切です。一般的に、収益ベースでは、ゲームアプリがApp Storeの全収益の約70%を占めています。この70%の収益を生み出しているのは、App Storeの全消費者の10%未満です。これらのゲームアプリの消費者は、Epic Games の主張の中心となっているアプリ内課金を主に行っています。対照的に、App Store の全アプリの 80% が無料であることから、全消費者アカウントの 80% 以上は実質的に収益を生み出していません。

関連市場をデジタル モバイル ゲーム取引と定義した上で、裁判所は次に、この市場における Apple の行為を評価しました。裁判記録を考慮すると、裁判所は、最終的にAppleが連邦または州の反トラスト法に基づく独占企業であると結論付けることはできません。裁判所は、Appleが55%を超える相当な市場シェアと非常に高い利益率を享受していることを認めますが、これらの要因だけでは独占禁止法上の行為を示すことにはなりません。成功は違法ではないのです。最終的な裁判記録には、他の重要な要素、例えば、参入障壁や、関連市場での生産高を減少させたり、イノベーションを減少させたりする行為などの証拠が含まれていませんでした。当裁判所は、不可能であるとは判断しておらず、Epic GamesがAppleが違法な独占企業であることを証明する責任を果たせなかったというだけです。

それにもかかわらず、この裁判では、Appleがカリフォルニア州の競争法に基づいて反競争的な行為を行っていることが示されました。当裁判所は、Appleのアンチステアリング規定は、重要な情報を消費者から隠し、消費者の選択を違法に妨げていると結論づけています。Appleの初期の反トラスト法違反と相まって、これらのアンチステアリング条項は反競争的であり、これらの条項を排除するための全国的な救済措置が必要であるとしています。当裁判所は、以下に事実認定および結論を示します。


図解 エピックゲームズ対 アップル

ということで、概要は、あくまで概要で、実際の思考の経緯とかがわからないので、命令にしたがって見ていきます。


1部 事実認定

Ⅰ 当事者

A 概観

この概要に関する図は、こちらです(図1)。

 

 

 

 

 

 

 

エピックゲームズが、アップルとの開発者商品ライセンス契約に関して、訴訟を提起したということになります。

エピックゲームズ社(原告)が、成功したビデオゲーム会社であること、iOSを関連市場と主張していること、iOSのエコシステムが発展してきたことなどについては、争いがありません。また、アップルが30%のコミッションをえていること、アップルが、開発者に対して「イン・アプリ・購入(支払い)システム(IAP)」を求めていたことなどが論じられています。このコミッションは、問題にされていて裁判が起きていることが述べられています。

「B エピックゲームズ」は、判決4ページ目からです。ゲームソストの開発、配布・配信などを行っています。フォートナイトの開発を行っています。「 フォートナイト プレゼンツ… リフトツアー フィーチャリング ARIANA GRANDE」ですね。

2010年に開発者商品ライセンス契約を締結します(「4 アップルとエピックゲームの従前の関係」(判決の18頁)。)。

Epic Gamesは、AppleとDeveloper Product Licensing Agreement (DPLA)に合意し、署名しました。Epic International はその後、Developer Agreement (開発者契約) と DPLA (Unreal Engine に関連するアカウントのための契約) を締結しました。これらの契約の締結時、Sweeney 氏は、Epic Games が (i) アプリ内の購入に対してコミッションを支払う必要があること、(ii) App Store 内にストアを設置することが禁止されていること、(iii) iOS デバイスにアプリをサイドロードすることが禁止されていること、(iv) あらゆる支払いに Apple のコマース技術を使用する必要があることなど、重要な契約条件を理解し、同意していました。Epic Gamesは、これらの条件を承知の上で、これらの契約を結ぶことを選択しました。

「5 プロジェクトリバティ」(19頁)では、エピックゲームズ社は、2019年に「プロジェクトリバティ」という計画を採用します。これは、グーグルとアップルに対して攻撃的になるということでした。このプランのなかで、秘密裏に、支払い方式を追加する「修正プログラム(hotfix)」を開発していました。また、2020年の夏にわたって、アプリ公平連合(Coalition for App Fairness)を計画していきます。

その後、エピックゲームとアップルとのIAPについてのやりとりについて事実認定がなされたあとに2020年8月3日に上のhotfixが実行されたこと、アップルが報復したことなどが認定されています(その当時の記事だと「iOSフォートナイトって、アプリ内課金もうできないの?」)。8月28日に、エピックゲームの開発者IDが取り消されています。

「C アップル iOSとiOS機器の関連史」 は、「1 初期」「2 アプリ開発者一般とエピックゲームの役割」「3 アンプルの開発者との契約的合意」「4 アップルのアプリケーションの管理-アプリケーション・ガイドライン」「5 アップストアの運営マージン」「6 モバイルゲームのアップストアの収支」について述べています。

「3 アンプルの開発者との契約的合意」(28頁以下)についてふれます。

アップルは、基本的な開発ツールを無料で提供していますが、アプリケーションを配布するためのデベロッパープログラムのメンバーシップには年会費(99ドル/年)がかかります。

これについて定めるのが、開発者商品ライセンス契約で、具体的には

  • 契約条件を遵守することを証明すること(第3.1項)
  • Appleの法的権利に合致した方法でソフトウェアを使用すること(第3.2項)
  • App Storeを通じてのみ配布可能なApple製品用アプリを作成すること(第3.2項)
  • 適切に文書化されており、プログラムの要件に反していないことを確認するために、提案されたアプリを審査のために提出すること(第3.3.2188項および第3.3.3189項)
  • 購入が手数料の対象となる場合にIAPを使用するようアプリを設定すること(第3.2.2. (f)190)、
  • 「機能、コンテンツ、サービス、または機能性を隠蔽、誤認、または不明瞭にしようとしない」ことへの同意すること(第6.1条)

また、利用者を他に誘導しないという条項(アンチ・ステア条項)が2010年には、導入されていて、これがもっとも議論を呼ぶことになります。具体的には、

アプリ内の機能または機能性のロックを解除したい場合(例:サブスクリプション、ゲーム内通貨、ゲームレベル、プレミアムコンテンツへのアクセス、またはフルバージョンのロック解除)、アプリ内課金を使用する必要があります。 アプリは、ライセンスキー、拡張現実マーカー、QRコードなど、コンテンツまたは機能をアンロックするための独自のメカニズムを使用することはできません。アプリとそのメタデータには、アプリ内課金以外の購入方法にお客様を誘導するボタン、外部リンク、その他の行動喚起を含めることはできません

とされています。

また、別表2の3.4条は、アップルのマージンが30%であることを定めています。

なお、それ以外のところは、省略します。

Ⅱ 当事者の製品市場についての評価および事実認定

ついで、裁判所は、提案された 3 つの製品市場の事実上の根拠を検討します。Epic Gamesは、2つのアフターマーケット、すなわち、(i)iOSアプリの配信のためのアフターマーケットと、(ii)iOSアプリの支払い処理のためのアフターマーケットを主張しています。それぞれのアフターマーケットは、スマートフォンのオペレーティングシステムの市場の存在に依存しています。一方、アップルは、デジタルゲーム取引の市場を主張しています(44頁以下)。

エピックゲームズの主張は、ラフには、こんな感じです(図2)。

 

 

 

 

 

 

 

こんな感じです。iOSの市場をアップルは、独占しているし、上のライセンス協定の条項は、その独占化行為の一環だと主張しているようです。

一方、アップルの主張のイメージは、こんな感じです(図3)。

 

 

 

 

 

 

 

 

エピックゲームズの開発商品は、それ自体、マルチプラットフォームで、コンソール、PC、ストリーミングとかと競争しているでしょう、という感じです。

ここで、「関連市場」というのが、どれだけ重要かというのが基礎知識として必要になります。反トラスト法は、「関連市場」における競争を保護するのであって、「関連市場」というのに値しない「商品のくくり」などのところでの(結果としての)圧倒的なシェアを問題にしたりはしません。

A エピックゲーム アップル独自のiOSのためのフォアマーケット

上の大雑把な図をだしましたが、裁判所は、そもそも、iOSっていったって、消費者にそのまま提供されているわけではないので、それを独占しているといっても法的に失当であるという認識をしています。もっともそのいわんとするところを整理するとこうなるよね(日本的には業界用語で、善解といいます)、というのがこんな感じです(図4)。

 

 

 

 

 

 

 

裁判所は、Apple のオペレーティングシステムをフォアマーケットと見なすべきかどうかを検討しました。当裁判所は、そうすべきではないと判断しています。ここで、フォアマーケットとアフターマッケットという用語が出てきます。反トラスト法の関係では、「Competition Issues in Aftermarkets – Note from the United States」(FTCとDOJ提出)というドキュメントがありますので、また、別のエントリで検討しますひげそりと替え刃みたいなものを表現します。

そして、裁判所は、

すなわち、Epic Games は、訴状の中で「foremarket(前市場)」および「aftermarket(後市場)」という用語を明示的に使用して、その市場理論の概要を説明していません。裁判所は、Epic Games がより明確に説明できたはずであることに同意します。

といって、iOSというフォアマーケットで、具体的なアプリ配信市場/アプリ支払い市場等があるのではないか、という認識を示します。裁判所は、

実質的な面では、裁判所は、原告がApple自身のオペレーティングシステムのための「foremarket」を特定することは作為的であるとする

と考えました。誰にもライセンスされないし、販売されないものについて市場を考えることはできないとしました。消費者はエコシステムを選ぶことができるし、反トラスト法は、作為的に、排除することはできないとしたのです。

個人的に興味深いのは、この点で裁判所は、

アップルは、スマートフォン市場において市場力を有していません。2020年において世界市場のシェアは、15パーセントです

としています(45ページ最後)。欧州委員会が、iOSとアンドロイドの補完性を有しないとしていたわけ(「アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件」)ですが、ここでは、スマートフォン市場として議論しています。

B エピックゲームズ  iOSアプリ配信アフターマーケット

iOSについてのフォアマーケットが否定されているので、それに基づいたアフターマッケットは否定されることになるのですが、裁判所は、検討します。 エピックゲームは、

  1. フォアマーケットとアフターマーケットは関連しているが、2つの別々の市場であること。
  2. アフターマーケットには、フォアマーケットにはない拘束があること。
  3. Appleの市場力の源泉は、消費者との個別の契約上の合意ではなく、その壁に囲まれた庭に起因するもの
  4. 主たる市場の競争は、提案されたアフターマケットにおけるアップルの市場に影響(discipline)していない

というのを主張しています。この4つめの主張について裁判所は、「1 スイッチングコストと主張された「ロック・イン」」以下で検討します。

「1 スイッチングコストと主張された「ロック・イン」」

この点について、アップルの内部文書、専門家の証言、消費者の知識、アップルの証拠をもとに裁判所は、検討しています。

内部文書では、アンドロイドに対してスイッチするコストが、あることは明らかにされていないとしています。というか、プラットフォームを「魅力的(sticker)」にするということを強調していたようです(a)。

Athey博士の専門家承認の話(b)になります。もっとも、裁判所によれば、独自の調査はしていなかったようです。また、スイッチングのコストの測定も、インパクトについて文献の調査もしていなかったと認定されています。ニュース原稿以外の証拠を引用していないとされています(48ページ)。その結果として、裁判所は、スイッチングコストの影響について、暗黒のままだとされています。

「c 消費者の式および購入後のポリシ変更」についていえば、裁判所は、もし、柵でできた庭があるというのであれば、消費者はそれに気がついておらず、bait and switch( 囮商法)になるのか、という問題があるとされます。これについて、2008年のジョブスが、30%のコミッションは、AppStoreの運営費であるという発言と、Schiller氏の1ビリオンドルの利益を維持しうるのであれば、20%にさげてもいいという発言があり、これは、ポリシの変更であると原告がいっているして検討しています。裁判所は、これらのコメントについて、30%は、変更しうるものと認識します。

「d アップルの反証」これは、アップルの喜々とサービスに満足しているから、スイッチが低いとしています。購入サイクルのうち、26%のユーザがOSを変更し、うち、iPhoneユーザは、7%が、変更するということ、変更しないのは、iOSにユーザが満足していることを意味すること、を明らかにしています。これは、グーグルの調査で、訴訟とは、関係なしになされているもので、エピックシステムが証拠を提出していない以上、重要であるとされています。裁判所としては、利用者か、AppStoreの 価格、利用可能性、質において重要な変更があってもアンドロイドに変更しないだろうと判断しています。要するに「ロックイン」はされていないというのです。

「2 代替財(Substitute)」

市場のビジネス上の現実を考慮した代替品に関して、当事者の主張はそれぞれの市場の定義にかかっています。Epic Games は、その定義の問題にほとんど時間を費やしていません。

Epic Games は、iOS アプリ配信のアフターマーケットが存在し、これが市場全体を占めているため、代替品は存在しないとしています。

Appleは、すべてのデジタルゲーム取引が市場であるとします。Apple は、他のすべてのゲーム取引プラットフォームが App Store の代替プラットフォームであると主張しています。これらのプラットフォームには、モバイル、タブレット、コンソール、PCなど、あらゆるデバイスからアクセスされるものが含まれます。Epic Gamesはこの主張に反論しています。その理由は2つあります。1つは、開発者は複数のプラットフォーム向けにアプリを作成しているため、同じ消費者にリーチするための代替品とは考えていないこと。2つ目は、経済的な証拠と調査結果から、代替性がないことがわかっていることです。

「a シングルホームとフォートナイトのデータ」

開発者がひとつのソースをもとに、開発者キットで、マルチプラットフォームに対応させるのに比して、消費者は、(ゲームをするに)ひとつのプラットフォームのみを選ぶ「シングルホーム」になります。フォートナイトは、上のプロジェクトリバティの以降、ユーザのゲーム時間が減少していると出ているのですが,裁判所は、ユーザの代替財がないことを示す証拠としては、信頼性がないとしています。

「b Rossi博士、Evans博士」

Rossi博士は、iOSのユーザにAppStoreの価格が上昇したときに、ゲームの利用が減少するのか、というのを聞いています。ただし、この調査は、被験者に対する質問の方法、そのデモグラフィックの違いなどで問題るのあるものでした。

また、Evans博士は、Rossi博士のSSNIPテストを用いて、iOSのアプリ市場は、関連するアフターマーケットであると主張します。Evans博士は、適切なコミッションが、27.7%であるとして、5%の増加が、30%になり、消費者のスイッチをなさないことから、iOS配布は、それ自体、自身の市場であるとします。しかしながら、裁判所は、このEvans博士のSSNIPテストには、根本的な欠陥があるとしています。というのは、消費者サイドと開発者サイドのテストを別々に行っており、その間のネットワーク効果を見逃しているのです。同時に行うべきであったのにそれを怠っているのです。

「c モバイルデバイス(タブレットとスイッチ)」

アップルの主張する商品市場は、すべてのデジタルゲーム取引となります。従って、モバイル(タブレット・スイッチ)と非モバイル・デバイスを示唆しています。ここでは、裁判所は、タブレットゲーム取引は、同一の市場のスマートフォンのゲーム取引市場の代替財としています。

「d 非モバイル・デバイス(コンソールとPC)」

消費者は、複数のデバイスを利用しており理論的には、代替財となりうる。アップルの調査では、56%がモバイルと非モバイルのプラットフォームを利用している。この調査は、すべてのゲーマーの調査をもとに、iOSケーマーについての結論を導いている。これにらついてHitt博士とCragg博士の調査が法廷に提出されているが、それぞれ、問題があり、裁判所を説得できないものでした。この点については、裁判所は、問題を解決しないで、次にすすみます。

「3 ゲーム対非ゲームとアップルのAppStore」

エピックゲームは、AppStoreでの配信は、ゲームにかぎられないで、すべて、アフターマーケット構築しているとしています。証拠によるとAppStoreはゲーム市場で利益をだすビジネスモデルを採用していると考えられます。

  1. ゲーム取引は、AppStoreの60-75%をしめていること
  2. ゲーム取引とそれ以外では、別市場であるという業界・一般の認識があること(カテゴリが別にされている)
  3. ゲームアプリは、カテゴリと目的で、異なった製品になっている
  4. ゲーム開発者は、ゲームアプリを作るために特別の技術を利用している
  5. ゲームアプリは、明確に消費者と生産者/ゲーマーとゲーム開発者がいる
  6. ゲームアプリは、非ゲームアプリと価格構造(マネタイズのモデルと、効果的な価格)とで、異なっている。
  7. ゲームアプリは、専門化したベンダによって配信されている。
  8. ゲームアプリの配信を行うプラットフォームは、ユニークで、新規な競争圧力のもとにある。

として、ゲームと非ゲームとは異なると裁判所は、判断しています。

C エピックゲーム iOS アプリ内支払処理アフターマーケットに関する事実

エピックゲームは、iOSのアプリ内支払処理アフターマーケットは、関連市場だとします。これは、ioSアプリ配信市場において適法な独占を維持しているということから、考えられます。もっとも、エピックゲームは、そのような市場が存在することを示し得ていないので、議論は、失敗しています。

ただし、裁判所は、「アプリ内購入(in-app purchasing IAP)」の「製品」は何かという問題について検討します。IAPは、AppStoreに統合されていないで、iOS機器に統合されています。この仕組みで、すべての取引の手法、追跡、記録して、不正行為を検出しています。消費者は、購入履歴を確認し、家族や機器でのサブスクをシェアしたりできます。

裁判所は、このような観点から、アップルが、開発者と消費者を「マッチング」しているというだけではなく、毎年の99ドルの開発者費用以外には、直接に収入をえる術がないところで、自分たちの知的財産権をマネタイズするモデルを採用しているといえます。現在のモデルにおいては、他の会社の機能も別の製品をなしていないとして、裁判所は、結局、別の商品とはいえないしています。

D アップル デジタルビデオ市場

アップルは、より広く世界的デジタルビデオゲーム市場が関連市場であるとしています(上の図3)。基本的には、裁判所は、この主張には、否定的です。

1 ビデオゲームの定義

これは、非常にたくさんの見解があって、明確な定義はできないが、フォートナイトは、ビデオゲームに間違いないということになります。

2 一般的ビデオゲーム市場

ビデオゲーム市場は、ダイナミック、イノベーティフで競争的にみえます。四つのサブマーケットを有しています(70頁から72頁)。

  1. オンラインモバイルアプリ取引プラットフォーム(AppStore、Google Play、Samsung Galaxy Store)
  2. デスクトップ・PCのオンラインゲームストア(例ValveSteam)、(Epic Game Store)
  3. コンソールのデジタルストア(ソニープイレステーション、MS Xbox、ニンテンドウSwitch)
  4. ストリーミングゲームサービス(Nvidia Geforce Now、Microsoft Xbox Cloud gaming,Google Stadia)

3 4つのサブマーケット

裁判所は、サブマーケットについて市場の定義に影響を与える限りで、分析します。

  • オンラインモバイルアプリ取引プラットフォーム(AppStore、Google Play、Samsung Galaxy Store)

裁判所は、モバイルマーケットのみが別個の市場であると報告されているのが大事であるとしています。また、アップルは、グーグルを重要な競争者であると認識していたこと、他のプラットフォームに比較して、女性ゲーマー、X世代のゲーマーが、モバイルデバイスで遊ぶのをきわめて好んでいることなどがふれられています。

  • デスクトップ・PCのオンラインゲームストア(例ValveSteam)、(Epic Game Store)

この市場は、開かれた市場であるとされています。

  • コンソールのデジタルストア(ソニープイレステーション、MS Xbox、ニンテンドウSwitch)

この市場は、ソニープイレステーションとMS Xboxが争っており、ニンテンドウSwitchがモバイルでイノベーションを起こして争っています。また、ハードウエアを赤字で売却して、フトウエアで穴を埋めるモデルを採用するソニーとMS、ハードウエアで理恵を気挙げるSwitchという特徴があります。また、これらは、相互乗り換えができません。

  • クラウドベースのゲームストリーミングゲームサービス(Nvidia Geforce Now、Microsoft Xbox Cloud gaming,Google Stadia)

これは、新しいゲーム業界のイノベーョシンであるとしていすま。これは、単一のデバイスにひもづけられていません。この分野においては、レイテンシー(遅延性)が問題になる。

4 プラットフォーム間の競争および関連製品市場の発見

アップルも、強烈な競争圧力に面していたことが認定されています。これらの競争のなかで、裁判所は、関連市場を定義するために十分かをいうことはできないとしています。また、マイクロソフトのマインクラフトやエピックゲームズのフォートナイトが、マッチプラットフォームで成功していることを認定しています。

このような方針やクロスプラットフォームのゲームは、将来的にはそれらの間で競争が収束することを意味するかもしれませんが、現時点では、関連する製品市場は、すべてのプラットフォームを含むほど広くはないようです。 特に、上述したモバイルゲーム、コンピュータゲーム、コンソールゲームという個別のサブマーケットを考えるとなおさらです。

そして、ここのサブマーケットの性質等について検討した結果、

このように、当裁判所は、競争相手は、認知度の低いモバイルゲーム取引のサブマーケットにあると結論づけていますが、このサブマーケットには、Switchやゲームストリーミングサービスは含まれていません。

E アップルの市場シェア

裁判所は、結局、競争は、Switchやゲームストリーミングを含まないサブマーケットで行われているものとしました。

それを示すのが、この図5です。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、アップルの市場シェアを計算します。

これについては、アップルの専門家証人のHitt博士の証拠によります。同博士は、アップルの説(すべてのデジタルビデオ市場)を前提としていたので、それをもとに、全部のビデオゲーム市場の35%であるとしています。この分析をモバイルゲーム市場におけるシェアに置き換えます。そして、世界的モバイルゲーム産業のうち、57.1%であると計算されます。

(ということは、15%の機器の割合しかいないのに、57%のユーザって、iPhoneユーザは、ゲーマーが多いのか?ヘビーユーザなのか?支払はどうなの?とかいろいろと遊べるデータのような気がしますね)

Ⅲ 提案された地理的市場および認定(89ぺージ以下)

訴訟において、エピックは、中国を除く世界市場を主張し、アップルは、国内市場を主張します。

スマートフォンについては、世界的に購入されるものについては、争いがありませんが、アップルは、ゲームアプリ取引については、地理的市場は、国内であると強く主張します。アップルは、消費者は、本国のストアにアクセスするといいます。もっとも、裁判所は、アップルの主張は弱いと考えました。

少なくとも本件では、Appleの制限は、市場の力ではなく、Appleによって課されているように思われます。 重要なのは、裁判所は、Appleが実際にアプリ配信をグローバル企業として扱っていることに説得力があると考えていることです。 Apple の規則とガイドラインはすべてのストアフロントにグローバルに適用され、事業開発チームはグローバルに開発者と関わり、DPLA (開発者利用合意)はグローバルに適用され、IAP システムの複雑さとその正当性は、事業のグローバルな性質が大きな理由となっています。

として、関連市場は、世界市場(中国は除く)としています。

Ⅳ 関連市場における市場支配力(90頁)

アップルの市場におけるシェアを計算したので、市場支配力(market power)見ていきます。価格、制約の性質、営業利益率、参入の障壁から見ていきます。

A 価格

超過利潤価格(supracompetitive)を設定・維持することができるのが、市場支配力の証拠であるということで専門家証人は一致します。30パーセントというのが、他のゲームのコミッションのレートから来ているということです。また、2011年(サブスクリプションによる値引き)、2016年(検索広告)、2020年(小規模企業プログラム)にそれぞれプログラムが変更されています。

結局、アップルの平均のコミッションは、低下していて、この減少は、市場支配力とは一致しません。

B 制約の性質

エピックゲームズは、アップルは、技術的・契約的手段によってアプリの配信を妨げていると主張します。iPhoneでは、発行者の認可されていないアプリを実行することはできず、また、開発者製品ライセンス協定では、AppStore以外でのアプリの配布を禁止しています。SpotifyとNetflixは、開発者契約を変更できましたが、Down Dogや Match Groupは、できませんでした。これによって、Down Dogは、利用者の90%が、ウエブでの購入を利用しているのに、iOS では、50%しかそのようにしていません。

したがって、Appleのアンチステア規制は、デベロッパーが他のプラットフォームでの低価格の情報を伝達することを妨げることにより、Appleの市場支配力を人為的に増大させていることを示す証拠があります。

C 営業利益率

継続的な経済的利益は、市場支配力を示唆することから、裁判所は、市場支配力は明らかであると考えています。

D 参入の障壁

参入障壁については、証拠は、それぞれであるとしています。プラットフォームビジネスは、利用者と開発者を結びつけないといけないので、参入障壁が高い、という見解がある一方で、クラウドゲーム・ストリーミングをみるとわかるように変化しています。裁判所は、比較的高いが、将来には、低下がありうるとしています。

ⅴ 主張された反競争的影響に関する事実(94頁以下)

裁判所は、AppStoreは、二面市場であって評価が難しいとしています。というのは、ここで、二面市場を図にしてみましょう(図6)。

 

 

 

 

 

 

 

一方で反競争的な価格や制限があっても、他方では競争的な均衡を反映している場合がある。このように、競争効果は、間接的なネットワーク効果を含めて、取引の両サイド(開発者とユーザー)を慎重に検討した後にのみ決定されるというのが専門家の見解である。

二面市場の代表例としては、検索市場とそれをもとにした広告市場の例があります。グーグルは、プライバシの認知にバイアスがあることを利用して、利用者の興味情報を安く購入して、その情報をもとに、オンライン広告市場での卓越したプレゼンスをましています。アップルの例でいうと、ゲーマすきのプラットフォームを構築して、その塀付きの庭にアクセスがしたいのでしたら、ちゃんと利用料払ってね、ということで、このライセンス契約とコミッションをとるというモデルということになります。

A 反競争的効果 アプリケーション配布制限

1 効果 

エピックゲームズの主張は(a) 競争の遮断(foreclosure) (b) 消費者価格の上昇 (c) 生産量の減少 (d) イノベーションの減少 (e) 他の市場への影響 (b)消費者向けアプリの価格上昇 (c)生産量の減少 (d)イノベーションの減少 (e)他への影響 によるというものです。

裁判所は、

(a) 競争の遮断(foreclosure) については、xCloud や GeForce NOWは、結局、ウエブで提供が可能であること、AppStoreは、中小の開発者のためのものであり、そのためのしくみを設けていることを認定するとともに、大規模事業者に対しては、競争を遮断しているとします。

(b) 消費者価格の上昇については、アップルの制限は、開発者にとって価格を上昇させているとします。(消費者にとっては、留保)

(c) 生産量の減少については、直接の考察は記録には、ありませんが、成長率が高いことから、もし、アップルの制約がなければより生産量が高かったかもしれないが、結局、決定するのには不十分であるとしています。

(d) イノベーションの減少については、エピックゲームズは、30パーセントが高すぎること、ゲーム配信自体のイノベーションを減少させていること、をあげていますが、開発者に対する調査では、むしろ、スマートサーチの機能がないこと、おすすめのの機能が貧弱なこと、A/Bテストが必要なことなどが述べられていることから、AppStore自体には、満足しているということを認めています。もっとも、サードパーティのアプリストアがあれば、イノベーションへの圧力をかけることができるとしています。その意味で、この制限は、コアであるゲーム配信についてのイノベーションを妨げているとしています。

(e) 他への影響 によるというのは、アップルが、自分の好みを出していること、スイッチングコストを削減するための「ミドルウエア」減少させていること、をいいますが、裁判所は、証拠は認められないとしています。

2 ビジネス上の正当化事由

アップルは、二つの正当化事由を主張します。ひとつは、エコシステムの安全性を高めるためと、いまつひとつは知的財産権の契約の一部であるということです。裁判所は、これらの主張について調べます。

a セキュリティ、プライバシー、信頼性

裁判所は、これについて両当事者の定義が異なることを述べています。狭義のもの(マルウエアやソーシャルエンジニアリング)については、主としてソーシャルエンジニアリングに対抗するものという意味で、セキュリティを増すと判断しています。また、広義の観点(プライバシー、質、信頼性)からもアプリケーションの配布制限は、これらを増加する効果があるとしています。また、制限については、開発者は、より健全なエコシステムを利用できるという意味で利益もあるとされています。

(高橋、これは、アンドロイドのGoogle Playが確かに、怪しいソフトもあることを考えると、なっとくの事実認定だったりします)

b 知的財産権

これについては、裁判所は、いままでの投資金額や、その一方で、ライセンス料の実態などから裁判所は、特に30%のコミッションレートに関しては、Appleの主張は口実であると判断しています。但し、何らかの補償措置を除外するものではありませんとしています。

B 反競争的効果 アプリ内支払制限

1 効果

エピックゲームズは,価格と質にフォーカスします。裁判所は、もし、配布制限が弱まった場合に、サードパーティのアップストアが、アプリ内支払取扱で競争しうるかを考えます。これは、競争促進的な効果と反競争的な効果があります(既に検討している)。また、プライバシも考えないといけません。(矛と楯の役割)

2 ビジネス上の正当化事由

アップルは、3つの正当化事由を主張します。裁判所は、上と異なる限りで述べています。

a セキュリティ

アップルは、不正検知のために有効であるとするのですが、デジタル財としては、開発者がちゃんと商品を利用者に届けたかを求めるだけなので、そのような不正検知をなすことはないとしています。

b コミッション回収

これについては、コミッション自体の競争促進効果は、上でふれている通りになります。

c 知的財産の価値

結局、知的財産権の価値しかこれを正当化するものはないのですが、エピックケームは、自分の顧客を有しており、アップルによって新しいユーザにアクセスするというのは、それほど多くないと判断しています。

C 複合的影響

裁判所は、Apple は、連動する規則や規制を伴うエコシステムを構築しているため、特定の制限を単独で評価することは困難です。 すなわち、消費者がより安い価格、より充実した顧客サービス、購入に関するオプションを見つける能力に影響を与えるポリシーに関する情報と透明性の欠如が問題であるとしています。このようなポリシーを採用することで、利益率の高いゲーム業界から超過利潤的な手数料を得ることができるでのではないかとしています。

また、これらの制限は、実店舗の状況とは明らかに異なります。 アップルは革新的なプラットフォームを開発しましたが、そのルールを一般消費者に開示しませんでした。 アップルはこの知識のなさを利用して、自分の立場を利用してきました。 したがって、制限を緩和すれば、Appleは集中型モデルのメリットで勝負するか、知的財産の価値と実際に結びついた方法でマネタイズモデルを変更しなければならなくなるため、アップルに競争することを強いることになります。


Ⅱ部 事実の法への適用および結論 (119頁から)

Ⅰ 関連製品および地理的市場

A 法的枠組

市場の画定については、その必要性、製品市場と地理的市場を定めること、原告の責任であること、などが述べられています。

B 分析

1 関連製品市場

これらの主張については、上でのべたとおりです。裁判所は、「効果的な競争の範囲」における製品・サービスを決定しなければならないこと、関連する製品と製品の経済的な代替財によって範囲が定められることなどが述べられています。裁判所は、アップルの市場画定により理解を示しています。なぜ、エピックゲームズの主張が適切でないかという議論になります。

a アップルの製品市場セオリ

裁判所は、これは、二面市場であるとします。二面市場においては、

両面市場では、売り手は「異なる製品やサービスを2つの異なるグループに提供し、両者はプラットフォームに依存してそれらの間を行き来する」。 Amex, 138 S. C.at. at 2280. ここでは、Epic Games は明らかなことを避けようとはしません。  原告は、Apple のプラットフォーム上の App Store を通じて iOS ユーザーに販売しているだけであり、「流通サービス」を含むような市場を形作る取引のための他のチャンネルは、存在しないのです。

そして、裁判所は、関連するApp Storeの商品は、取引であり、サービスではないこと、という認定します。

次は、アプリケーションか、デジタルゲーム取引かという問題について検討します。この点についての一般的な理論は、

限定された環境では、関連する製品市場は、物理的な互換性と交差価格弾力性の境界を超えて、識別可能なサブマーケットや製品クラスターを考慮して狭められることがある

とされています。

サブマーケットとは、「代替可能な製品の一般市場のごく一部」であり、「一般の製品市場とは経済的に異なる」ものになります。 経済的に区別されたサブマーケットには、「サブマーケットが独立した経済的実体であることを業界や世間が認識していること、製品の特異な特性や用途、独自の生産設備、個別の顧客、個別の価格、価格変動に対する感度、専門業者など、いくつかの『実用的な指標』」があるが、それらは「実際の競争または潜在的な競争の領域を特定するための実用的な補助」であり、「それらの有無がサブマーケットの問題を自動的に決定するものではない」とされています。  裁判所は、これらの要素を考慮して評価を行っています。

その結果、裁判所は、一般的なアプリの市場とゲーム市場とは別の市場を構成すると考えています。

  • (i) App Storeのビジネスモデルは基本的に収益性の高いゲーム取引に基づいて構築されていること、
  • (ii) ゲームアプリはApp Storeの収益の大部分を占めていること、
  • (iii) ゲーム、モバイル、ソフトウェアの各業界および一般の人々は、ゲームアプリと非ゲームアプリを区別して認識していること
  • (iv) ゲームアプリとその取引には特有の特徴とユーザーが存在すること
  • (v) ゲームアプリの開発者は、その製品の開発において、その業界に固有の特殊な技術を使用することが多いことなどが挙げられます。
  • (v)ゲームアプリ開発者は、その製品の開発において、その業界に固有の特殊な技術を使用することが多いこと、
  • (vi)ゲームアプリには、一般的にゲームアプリの開発のみに特化したゲーム開発者という明確な生産者が存在すること、
  • (vii)ゲームアプリは、他のカテゴリーのアプリとは異なる価格体系の対象となること、
  • (viii)ゲームおよびゲーム取引は、特殊なベンダーによって販売されること、
  • (ix)ゲームアプリは、非ゲームアプリの市場における競争とは種類も程度も異なる、独自の新たな競争圧力の対象となることなど

を指摘しています。そして、 裁判所は、フリーミアムモデルや、特別ルールが存在していること(リーダールール)、ゲームにおけるヘビーユーザの存在もふれています。

では、すべてのゲーム取引でしょうか、モバイルゲーム取引でしょうか。NewcalやBrown Shoeで提唱された枠組みとしての“実際的な指標(practical indicia)を適用します。そこでは、そのサブマーケットが独立した経済的実体であることが業界や世間で認識されていること、独立した経済的実体、独特の特性と用途、明確な顧客と生産者、そして専門の業者として世間に認知されていることなどが挙げられています。また、モバイルとコンソールのゲームではかなりの程度異なっていることも認定しています。

これらの考察の結果、裁判所は、「モバイル・ゲーム取引」市場としたのです。

 b エピックゲームズのアプローチ/フォアーケット/アフターマーケット定義

裁判所は、エピックゲームスの理論に基礎的な欠陥があるとしています。スマートフォンのOS自体については、市場が成立していないので、検討の対象がないのです。エピックゲームズの二面市場という認識とアフターマーケットという主張は、それ自体あいいれないものとなっています。

裁判所は、それで、単独ブランド市場(アップルという市場の意味)について検討します。これは、Eastman Kodak Co. v. Image Tech. Servs., 504 U.S. 451, 482 (1992) (“Eastman Kodak”)において問題となったもので、消費者の直面する「商業的実際」についての事実的検討が必要であるとされます。そして

単一ブランドの市場は少なくとも極めて稀であり、裁判所は「ブランドロイヤリティが高い場合でも」そのような市場の定義を否定しています。 Apple, Inc. v. Psystar Corp., 586 F. Supp.2d 1190, 1198 (N.D. Cal. 2008) (内部引用符および引用を省略).  (しかし、単一のブランドで構成される独占禁止市場は、それ自体が禁止されているわけではありません。理論的には、まれな不測の事態において、関連市場が製品の単一ブランドのみで構成されることはあり得る。」)。) 実際、「基礎となる製品が偽造可能である場合、単一ブランドは決して関連市場ではない」。 Areeda & Hovenkamp § 563d. 「単一ブランド市場が嫌われていると言うのは控えめな表現である。現代の反トラスト法のほぼ初期から、最高裁は単一ブランド市場に懐疑的な見方を示してきた」In re Am. Express Anti-Steering Rules Antitrust Litig, 361 F. Supp.3d 324, 343 (E.D.N.Y. 2019); Herbert J. Hovenkamp, Markets in IP & Antitrust, 100 Geo. L.J. 2133, 2137 (2012) (“[反トラスト法は、単一企業ブランドが関連市場となるのは、ほとんどない( few situations))。

ここで、問題になるのが、アフターマーケットの理論枠組です。これは、情報コストとスイッチングコストから分析されます(kodak事件)。(なお、これは、別のエントリで、今後検討します-というか、いま一つ理解できてません)

情報コストについては、サービス市場の価格が機器の需要に影響を与えるためには、消費者は購入時に機器、サービス、部品といった「パッケージ」の総コストを知らされる必要があり、つまり消費者は正確なライフサイクル価格設定を行う必要がありますとされます。ここで、筆者としては、消費者の認知の時間的バイアスの図を独自に参照しておきます(図7)。

 

 

 

 

 

 

 

 

この図は、消費者が直近のリスクについては、低く見積もり、より長期間のコストについては、高く見積もってしまうバイアスがあることを示しています。なので、消費財などの市場においては、保守が必要になるなんてことは考えないので、最初の商品市場(フォアマーケット)について、アフターマーケットのことを考えないで、商品購入したりするよねということです。

スイッチングコストについては、最高裁判所は、スイッチングのコストが高ければ 切り替えコストが高ければ、すでに機器を購入して「ロックイン」されている消費者は、ある程度のサービス価格の上昇を容認してから機器ブランドを変更すること、消費者は、機器ブランドを変更する前に、ある程度のサービス価格の上昇を容認すること、そして、このシナリオでは、売り手は、スイッチングコストが高ければ、ロックインされた顧客の数が多ければ、アフターマーケットで超競争的な価格を維持して利益を得ることができることを認定しています。

この理論は、Newcal事件で

  • その市場が「一次市場から完全に派生し、一次市場に依存している」こと。
  • 違法な取引制限と違法な独占は、最初の市場ではなく、アフターマーケットにのみ関連していること
  • 被告の市場支配力が「消費者との関係に由来する」ものであり、被告は「初期市場で得た契約条項によってアフターマーケットで市場支配力を獲得したのではない」こと
  • 「初期市場での競争は、アフターマーケットでの反競争的行為を規律するのに必ずしも十分ではない」こと

で、この場合は、アフターマーケットに対する行為が、反競争的になることを認めています。

裁判所は、この場合に、このアフターマーケットの論を適用して、製品市場を、特定の者(ロックインされた者)に限っての議論としてしうるのか、ということになります。(コメント アフターマーケットの理論は、時間によって、認知に差がでること/(経済学的には、需給の時間による違い-ロングランとショートランというそうです)を理由にしているので、裁判所のこの見解は、納得できていませんが、以下、裁判所の見解を紹介します)

消費者は、iPhoneを購入する際にApp Storeを通じてのみアプリを入手することに契約上同意していないこと、アフターマーケットにおいて開発者は契約上の制約を受けていること、iOSデバイスの技術的な制約を考慮すると、アップルの市場支配力は消費者との関係から生じており、アップルは初期市場で得られる契約条項によってアフターマーケットでの市場支配力を獲得したわけではないことは満たしてるとします。

問題は、スイッチングコストと消費者の知識の関係で、OS市場での競争がアフターマーケットの競争を規律するのに十分ではないという要件を充たすのか、ということになります。

しかしながら、裁判所は、エピックゲームズの訴訟行為の不十分さを指摘します。結局、デジタルモバイルゲーム市場においては、利用者も開発者もロックインされていないのではないかということになり、アフターマーケットの理論により、反競争的になるという主張は認められませんでした。

2 地理的市場

これについての一般的な理論は省略します。いままでの先例でも世界全部としているものは、あります。この事件においては、中国を除く世界と判断されています。

Ⅱ シャーマン法1条および2条

A 一般的枠組

(高橋解説)シャーマン法1条は、取引制限の禁止を定め、2条は独占行為(monopolization)の禁止を定める。

同1条は、

 数州間または外国との取引または商業を制限するすべて(every)の契約(contract)、トラスト(trust)その他の形態による結合(combination)または共謀(conspiracy)はこれを違法とする(以下、略)

と定めています。

また2条は、

「数州間若しくは外国との取引又は通商のいかなる部分も、独占化し、独占化を企図し、又は独占化するために他の者と結合又は共謀するすべての者は」、重罪を犯したものとする

競争の結果としての独占の状態が違法になるわけではなくて、その状態にあるものが、行う独占の形成行為・維持行為が違法であると評価されるわけです。なお、「フェースブックはね、フェースブックブルーっていうんだほんとはね-だけど、シェアだけで独占っては、いえないよ-裁判所の意見メモを読む」を参照ください。

同法1条の対象は、共同行為に限られるが、同法2条の禁止は、共同行為に限られることはなく、単独行為もまたその対象となり、独占を形成し維持する行為が禁止される。

ちなみにFTCの解説

(解説終了)


Qualcom事件における責任の転換テストによってシャーマン法1条と2条について同時にあつかう取り扱うこと、シャーマン法2条の違反を証明することは、より厳密であることになること、2条においては、間接的証拠を利用できないこと、などがふれられています。その結果、アップルの市場支配力・独占力について評価することになります。

B 関連製品・地理的市場におけるアップルの市場支配力の評価。

1 法的枠組

市場支配力と独占力は概念として異なっていること、「市場支配力は、競争市場においてつけられない価格をつける能力」とされること、独占力は、「価格をコントロールするか、競争を排除する力」であるとされること、この二つは、程度の違いであること、市場シェアは、スタートポイントであること、独占力については、65パーセント、もしは75パーセントと考えられること、市場支配力においても、50%以下では、不十分とされることが記載されています。

その上に、直接証拠・間接証拠から他の市場の要素を裁判所は、考慮します。直接証拠は、「生産量の減少や超過利潤価格の設定などの証拠」のように「市場支配力の行使について害を与える行使」の証拠をいいます。

市場の構造に関する一般的なより一般的なタイプの証拠が次のものです。間接手に市場支配力を示すには、「(1)関連市場を定義し、(2)被告がその市場で支配的なシェアを所有していることを示し、(3)参入に大きな障壁があり、既存の競争相手が短期的に生産量を増加させる能力を欠いていることを示す。」とされています(FTC v.Indiana Fed’n of Dentists, 476 U.S. 447, 460–61 (1986))。

2 分析

裁判所は、モバイル・ゲーム取引において、シェアを52-57%と判断していること、そのシェアは、2条における独占力が認められるような範囲に満たないものであること、と認定しています。

また、裁判所は、エピックゲームスは、関連製品の生産量を示すことによって取引制限があるという要件を示すのに、失敗していると判断しています。そして、裁判記録によれば、モバイルゲーム取引では、生産量を増大させています。解釈としては、

「独占力を直接証明するには、利潤超過的な価格設定に生産量の制限が伴わなければならない。Safeway Inc.、761 F. Supp.2d at 887(引用:Rebel Oil Co.Rebel Oil Co., 51 F.3d at 1434)。)

裁判所は、52ないし57%のシェアでは、それ自体として独占とはいえないが、市場の状況と耐性を調べるには十分であるとしています。しかしながら、証拠は、不十分で、また、取り混ぜられているとされています。でありながら、裁判所はかぎられた証拠から、判断をします。

一方で、モバイルゲームを配信するためのプラットフォームは、iOSとAndroidという少数のプラットフォームしか存在しないこと、ネットワーク効果による規模の経済が、新規参入者よりも既存のデジタルゲームストアやプラットフォームに有利に働くこと、新規参入者は、ユーザーが他のプラットフォームでより安価なゲーム配信が可能であることを知らない可能性があることなどをあげて参入のための情報障壁に直面する可能性があるとしています。

その一方で、広範なゲーム市場とモバイルゲーム市場には大きな変化があり、どちらも流動的であると思われます。 競合他社が参入しようとしており、ハードウェアやゲームコンテンツなどの既存の知的財産や、自社の消費者基盤や開発者基盤などの既存のネットワークを活用して、この市場に参入していると思われます。 このような競合他社の最近の動きを見ると、今回の記録では、参入障壁が圧迫されている、あるいは高いとは言えないとしています。

これらの考察の結果、裁判所は、モバイルゲーム市場においてアップルは、市場支配力には達しているが、独占力にはいたっていないという判断にいたっています。

C シャーマン法1条 アップルのiOSアプリ配信市場の違法な取引制限(請求原因3)およびiOSアプリ内支払取扱市場(請求原因5)

1 法的枠組

これは、解説で上述しているので、省略です。もっともAmex事件枠組で

原告は、問題となっている取引制限が、関連市場の消費者に損害を与える実質的な反競争的効果を有していることを証明する最初の責任を負う。

原告がその責任を果たした場合、責任は被告に移り、取引制限のための競争上の合理性を示すことになります。

被告がこのような立証を行った場合、原告は、より反競争的でない手段によって反競争的な効率を合理的に達成できることを立証する責任を負うことになる。

とされています。

2 アップルのiOSアプリ配信市場(請求原因3)

「a 協定(agreement)の存在」では、開発者協定が、「協定(agreement)」に該当するかが議論されています。これについては、 事業者は、一方的に取引条件を設定し、その条件を満たさない人との取引を拒否することができるとされ、反トラスト法においては、上の枠組の最初の要素を満たさないと考えられるとされます。(この場合、反トラスト法の目的とそぐわないという記載もあります)

「b 取引制限の合理性」

「合理性の基準」を用いて二つ目の要素の判断をなします。これは、Amex事件では、

理性の法則は、裁判所が「市場支配力と市場の構造」を事実に基づいて評価し、「取引制限が競争に及ぼす実際の影響」を評価することを要求している。 Copperweld Corp.対Independence Tube Corp.467 U.S. 752, 768, 104 S. Ct. 2731, 81 L.Ed.2d 628 (1984). その目的は、「消費者にとって有害な反競争的な効果を持つ制限と、消費者の最善の利益となる競争を刺激する制限を区別する」ことである。 Leegin Creative Leather Products, Inc. v. PSKS, Inc., 551 U.S. 877, 886, 127 S. Ct. 2705, 168 L.Ed.2d 623 (2007).

これの最初は、「反競争的効果」になります。モバイルゲーム市場という二面市場における反競争的効果を示すには、エピックゲームズは、アップルのアプリ配信規定が、モバイルゲーム取引のコストを「競争水準より超過して」増していること、「モバイルゲームの取引の生産量が減少していること」もしくは、その市場の競争を制限していることをしめさなければなりません。

裁判所は、アプリ配信の制限についての反競争的効果を評価するというのが大きな課題であると認識するとともに、劇的な増加を果たしていること、コミッションレートが変動していないこと、競争上の効果は、個別の軽減ごとに評価されるべきこと、特に、市場が成長している場合には特に難しいこと、十分な配慮が必要であることなどが述べられています(QualcomやMicrosft事件を引用)。

裁判所は、ある程度の反競争的効果があるとしています。そもそも、コミッションが運営コスト等を考慮して決定されたものではないこと、いろいろな圧力のもとでも維持されていること、消費者にそのコストが転嫁されている証拠があることを述べています。これらの判断のもとに、裁判所は、エピックゲームズは、反競争的な効果の証拠を提出していると判断しました。

「競争促進的正当化事由」としてアップルがセキュリティ、ブランド内競争、知的財産権投資を保護するためという理由をあげています。Qualcom事件の記述では、競争促進の論理的根拠とは 競争促進の根拠とは、「(被告の)行為が、例えば効率性の向上や消費者への訴求力の強化を伴うことから、実質的には競争の一形態であるという非弁解的な主張」であるとされます。

そして、裁判所は、セキュリティの主張について、これを理由があるものとして認めます。グーグルにたいしてブランド間競争を押し進めるものになるのです。これが反トラスト法が主として目指していたものとしてLeejin判決が引用されています。アンドロイドデバイスをオープンな配信のもと提供されることに価値をおくものと「壁で囲まれた庭」の保護とセキュリティに価値をおくものとの競争になるとしています。これが競争促進効果となります。

もっとも、知的財産権の保護の主張は、弁解的なものと認定しています(前述)。知的財産権を念頭に決めた経緯はないのです。(もっとも知的財産権の防御自体が、弁解的であるとはしていません)。

「他の選びうる手段」については、他の選びうる手段によってこの競争促進的な正当化事由が実現されうるかというのを議論します。もっとも、企業は、もっとも制限的ではないものを選択することを求められるものではなく、効率性の程度の判断に行為の適法性が左右されるという合理的な必要性についての推測を用いてはならないとなります。

裁判所は、人間によるアプリケーションの検証の仕組みを不要とすることはできず、エピックゲームズは、この点について十分に主張を展開できていないとしました。

結局、裁判所は、アップルのアプリ配信の制限は、シャーマン法1条に違反していないと判断しました。

3 請求原因5 iOS アプリ内支払手段市場分析

これについては、請求原因3と同様の仕組みで裁判所は、理由がないものとしました。

D シャーマン法2条 アップルのiOS配信市場(請求原因1)およびiOS アプリ内支払手段市場(請求原因4)

1 法的枠組

シャーマン法2条については、上の解説でふれているので省略です。これについては 「(a)関連市場における独占力の保有、(b)その力の故意の獲得または維持、(c)因果関係のある反トラスト法上の損害」。Qualcomm Inc.、969 F.3d at 989-90。 90. が必要になります。

「独占」については、企業が、競争レベル越えて実質的に価格を引き上げて利益を上げることのできることができれば、独占者といえるとされます(Microsoft Corp., 253 F.3d at
51,)。

2 請求原因1 iOS配信市場

この主張については、エピックゲームズが、アップルが関連製品市場および地理的市場において独占力を有していることを証明できていないこと、1条における合理性の基準も満たせておらない以上、当然に認められないこと、として認められていません。

3 請求原因4 iOS アプリ内支払手段市場

これも同様の理由で認められていません。

Ⅲ シャーマン法1条 抱き合わせ販売(請求原因6)

A 法的標準

無効な抱き合わせ販売の本質的な特徴は、売り手が抱き合わせ製品に対する支配力を利用して、買い手が全く欲しくない、あるいは別の条件で他の場所で購入することを望んだかもしれない抱き合わせ製品の購入を買い手に強要することにある。

となっていて、「当然違法の法理」による場合は、制限が、常に、あるいはほとんど常に、競争を制限し、生産量を減少させる傾向がある場合です。この場合は、(1) 被告が2つの異なる製品またはサービスの販売を抱き合わせにしていること、(2) 被告が抱き合わせ製品市場において顧客に抱き合わせ製品の購入を強要するのに十分な経済力を有していること、(3) 抱き合わせの取り決めが抱き合わせ製品市場の商取引に少なからず影響を与えていることを明らかにすることになります( Cascade Health Sols. v. PeaceHealth, 515 F.3d 883, 913 (9th Cir. 2008);

B 分析

この問題についてエピックゲームズは、アップルは、iOSプラットフォームを利用する配信業者に対して、アプリ内支払システムを利用することを求めており、それが抱き合わせ販売であるとするのですが、裁判所は、このアプリ内支払システムは、製品ではなく、統合と消費者の要求によるとしました。従って、「当然違法」か、「合理性の基準」かということを争うこともなく、この争点は理由がないとしています。

この仕組みは、裁判所の判断によると、コミッションとアプリ内支払を管理する統合的な仕組みだとされます(マイクロソフト事件参照です)。また、裁判所は、App Storeは、二面市場であるとしています。これは、ひとつのプラットフォームで、二つの製品にわけることはできません。さらに消費者もこのような仕組みをもとめているのです。

Ⅳ カリフォルニア カートライト法(請求原因7、8および9)

エピックゲームズは、カートライト法でも請求をなしています。

  • 請求原因7 iOSアプリ配信市場における不当な取引制限を理由とする
  • 請求原因8 iOSアプリ内決済ソリューション市場における不当な取引制限を理由
  • 請求原因9 アプリ配信と決済処理の抱き合わせを理由

A 法的枠組

カートライト法は、公序良俗に反するあらゆるトラストは、違法であり、無効であるとしています。ここで、「あらゆるトラスト」とは、「2人以上の者が資本、技術、行為を組み合わせて、貿易や商取引に制限を設けたり実行したりすること」と定義されています。 Cal. Bus. & Prof. Code § 16720(a), 16726。

連邦反トラスト法の解釈は、Cartwright法を解釈する際に、せいぜい参考になる程度であり、決定的なものではないとされています。

B  分析

エピックゲームズは、シャーマン法の主張が失当でも、カートライト法は、より広範な定めなので、請求による救済が与えられるべきであるとしています。これに対してアップルはこれを争っています。しかしながら、エピックゲームズは、その根拠たるべき判例等を示すことがなく、裁判所は、アップルの主張を採用しています。

但し、裁判所は、開発者覚書(DPLA)については、合理性の基準に照らして検討します。アプリ配信(請求原因3)、アプリ内支払システム(請求原因5)については、競争促進効果があって、エピックゲームズは、この促進効果が他の手段では達成しえないことを明らかにしていません。その結果、結論は同一です。また、抱き合わせについての請求原因9と同一です。

ⅴ シャーマン法2条 アップルが、iOS配信マーケットにおいて不可欠施設であることを否定していること(請求原因2)

第9巡回区において、原告は、(i)被告が「必須施設を支配する独占企業」であること、(ii)原告が「合理的または現実的に施設を複製することができない」こと、(iii)被告が「(原告に)施設へのアクセスを提供することを拒否した」こと、(iv)「(被告が)そのようなアクセスを提供することが可能である」ことを示さなければならない。 Aerotec, 836 F.3d at 1185; MetroNet Servs. Corp. v. Qwest Corp., 383 F.3d 1124, 1128-29 (9th Cir. 2004); Alaska Airlines, Inc. v. United Airlines, Inc., 948 F.2d 536, 542-46 (9th Cir. 1991).

しかしなが、そもそも、アップルが、iOSプラットフォームの独占者であることの証明に失敗しているし、また、iOSプラットフォームが不可欠施設であることの証明ができていないので、上の理論の適用は認められません。

Ⅵ カリフォルニアの不正競争法(請求原因10)

連邦法は、州の反トラストの救済を補充するものであるとされています。そして、カリフォルニア州の不正競争防止法(UCL)は、「不正競争」を構成する商行為を禁止しており、その定義は「違法、不公正または詐欺的な商行為または商慣行」とされています。 ある行為は、他の法律で特別に禁止されていなくても、また反トラスト法に違反していなくても、不公正とみなされる可能性があります。

UCLは、原告は「(1)事実上の損害、すなわち経済的損害として定量化するのに十分な金銭または財産の損失または剥奪を立証し、(2)経済的損害が不公正なビジネス慣行の結果、すなわち原因となったことを示さなければならない」としています。

エピックゲームズ は、アップルの行為が、UCL の「違法」および「不公正」の条項に該当するとするのに対して、アップルは、エピックゲーム には「顧客」としての地位がないと主張しています。 

A 当事者適格

具体的で、詳細な損害が明らかにされなければならないのが当事者適格の問題です(なお、憲法3条)。もっともエピックは、製材的な競争者になります。なので、この点については、問題がないことになります。

B 「違法」な商行為

これについては、法に違反したということはいえないとしています。(いままで分析したとおりです)

C 「不公正な」商行為

これについては、裁判所によると、エピックゲームは、(1) 「反トラスト法の初期の違反を脅かす」、(2) 「その影響が法律の違反と同等または同じであるため、これらの法律の一つの方針または精神に違反する」、または (3) 「その他の方法で競争を著しく脅かしたり、害したりする」ことを明らかにしなければならないとされます。そして、 これらの認定は、「立法によって宣言された政策、または競争に対する実際の影響や脅威の証拠に結び付けられている」必要があるとさています。

そして、裁判所は、「結びつき(Tethering)」テストと利益考量テストについて検討します。

1  「結びつき(Tethering)」テスト

結びつきテストは、問題となっている行為と立法政策との間に密接な関連性があることを要求しているものです。しかし、このテストの下での不公正な行為は、既存の法律の違反に限定されません。 代わりに、カリフォルニア州の裁判所は、法律によって合法とされた行為(または救済が禁止されている行為)と、どの法律でも禁止されていない行為(不公正)を区別しています。

この不公正の範囲についてアップルは、シャーマン法やカートライト法と別個に考察するのは、不適当であると主張しているのですが、裁判所は、この見解には同意しません。法律のポリシや精神に違反する場合を定めているこのほうが意味がなくなってしまうからです。配信の制限等については、アップルの行為は競争促進行為があることを明らかにしてり、それは、弁解的なものではないことは見た通りです。

しかしながら、裁判所は、カリフォルニアの不正競争法に関する訴訟は、「エクイティ」の性質を有銑するものであるとします。そして、裁判所の裁量は広いとしています。

この見地からいくとき狭い救済は排除されるものではないとしています。そして、超過利潤は、正当化されないこと、コミッションについて十分な検討がなされたわけではないこと、透明性の欠如があること、などを認定しています。

また、価格情報についての制限は、よりコストの低い販売者を発見するのを困難にすること、技術マーケットにおいては、情報のオープンな流れがより重要になること、情報コストの存在が反競争的な効果を有しうること(コダック事件)をあげています。その結果、裁判所は、

また、Epic Gamesは現在の反トラスト法違反を証明していませんが、アンチステアリング条項は、情報に基づいた選択を妨げることで、「反トラスト法の初期の違反を脅かす」ものです。 Cel-Tech, 20 Cal. 4th at 187; cf. FTC v. Neovi, Inc.1150, 1158 (9th Cir. 2010) (FTC の不公正性テストでは、「消費者が十分な情報を得た上で自由に選択できる」ことが必要とされています)。638 さらに、アンチステアの規定は、アンチステアの規定がこれらの法律の「政策と精神」に違反している。
さらに、アンチ・ステアリングの規定は、取引のためのプラットフォーム間の代替を妨げる効果があるた め、これらの法律の「政策及び精神」に違反する。

と判断しています。

2 利益考慮テスト

バランステストでは、裁判所は「被告の行為の有用性と、被害者とされる人々の被害の重大性」を比較検討しなければならない。 このテストでは、消費者への損害に焦点が当てられます。 この裁判では、詳細に説明する必要のない数多くの反競争的な影響が明らかになりました。一方、Apple は、Apple もウェブや Android に価格を広告する必要はないと、例え話をしているだけです。

裁判所は、Amex事件と比較して、テクノロジー分野はことなるとしています。アップルは、ブラックボックスを作ったとしています。上のたとえ話は、根拠を示しているだけで、競争害しており、超過利潤価格と利益を考えれば、アップルは間違っているとして、やはり不正競争法違反を認めています。

D 救済

裁判所は、衡平法上の救済の要件として、Sonner事件の(1) 回復不能な損害を被っていること、(2) 金銭的損害賠償など、法律で利用可能な救済措置がその損害を補償するには不十分であること、(3) 原告と被告の間の苦難のバランスを考慮すると、衡平法上の救済措置が正当化されること、(4) 終局的な差止命令によって公共の利益が損なわれることはないこと」eBay Inc.v. MercExchange, L.L.C., 547 U.S. 388, 391 (2006)をあげます。そして、裁判所は、この要件を満たしているとします。

これらについて検討した結果、裁判所は、

したがって、アップル社がデベロッパーに対して、

IAPに加えて、アプリおよびそのメタデータに、顧客に購買メカニズムを誘導するボタンやその他のアクションを含めることを禁止することを求める

全国規模の差止命令を発布します。

また、Appleは、

開発者がアプリ内のアカウント登録を通じてお客様から自発的に取得した連絡先を通じてお客様とコミュニケーションをとることを禁止すること

はできません。

Ⅶ アップルの反訴

A エピックの抗弁

アップルは、エピックゲームズが、上のフォートナイトのHotfixに関して、DPLA の開発者に対して、(i)アプリ内の機能、コンテンツ、サービス、または機能を「隠したり、誤魔化したり、不明瞭にしたり」しないこと 、「App Store 以外の配布方法で追加の機能を提供したり、ロックを解除したり、有効にしたり」しないこと 、(ii)App Store を通じて「各エンドユーザが支払うべきすべての価格の 30%に相当する手数料」を Apple に支払うことを求めているという規定に違反し、契約違反、信義公正取引違反、不当利得、補償規定の適用、宣言的判決をもとめています。これに対して、フォートナイトは、DPLAが有効である限りで、認めるとしていますが、その有効性については、違法性の原理、公序違反により無効、非良心的であるとして争っています。

これらの主張について裁判所は、アップルの反訴は、妨げられるものではないとしています。そこで、そもそも、具体的にアップルの主張が救済を与えられるかについて検討しています。

B 契約違反

Apple は Epic Games に対し、反訴においてProject Liberty に起因する契約違反を請求原因としています。具体的には、しました。 特に、Epic Games の行為は、ています。(1)開発者は、アプリケーション の中の機能、コンテンツ、サービス、または機能を「隠したり、誤魔化したり、不明瞭にしたり」せず、「App Store 以外の配布方法で追加の機能や特徴を提供したり、ロックを解除したり、有効にしたり」しないことを要求し、(2)Epic Games は Apple に対し、App Store を通じて「各エンドユーザーが支払うべきすべての価格の 30%に相当する手数料」を支払うことを要求するというDPLA の条項に違反ししています。そして、エピックゲームズはアップルが主張するようにDPLAに違反したことを認めています。

C 誠実かつ公正な取引に関する黙示の誓約の違反(Breach of the Implied Covenant of Good Faith and Fair Dealing)

これは、契約当事者が(技術的には明示的な条項に違反していないものの)契約の利益を得るための相手方の権利を阻害する行為を行うことを防ぐために、明示的な契約の条項を補完するものとして約定が九時で定められているとするものです。アップルは、「エピックゲームズの不誠実な行動が、いずれも [DPLA] の明示的な条項に違反していない場合においては、エピックゲームズ は、アップル が契約上の権利を有するコミッションの支払いを回避するフォートナイト のアップデートを公開したり、ガイドラインに違反したり、アップル によるアップストア の運営と保守を妨害するなど、実際に結ばれた契約の利益を受け取る アップル の権利を挫折させた」と主張しています。

D 不当利得

アップルは、原告がDPLAに基づき合意した30%の手数料をアップルに支払わなかったとの主張に基づき、不当利得の反訴を主張していますが、この反訴は、契約違反の主張の「代替」としてのみ主張しています。

従って、裁判所は、上の契約違反を認めているので、不当利得については認めないことになります。

E 補償(Indemnification )

これは、開発者製品ライセンス協定の10条についての争いです。この規定が、協定当事者間に適用されるのか、ということが争われました。裁判所は、問題となっている補償規定には、「indemnify (補償する)」および「hold harmless (無害にする)」という言葉が含まれており、その周辺の条項には第三者の責任が記載されているとして、この補償義務は、第三者からの請求に関連してのみ発生するものであり、両者間の請求には該当しないことになると解しました。

F 宣言的判決

アップルは、

  • (a) DPLAは、有効、適法、かつ執行可能な契約であること
  • (b) Apple による Epic Games との 開発者製品ライセンス協定(DPLA )の終了は、有効かつ合法的であり、執行可能であること。
  • (c) Apple は、Epic Games の完全所有子会社、関連会社、および/または支配下にあるその他の事業体のいずれかまたはすべてとの間で、DPLA を終了する契約上の権利を有すること。
  • (d) Apple は、理由の如何を問わず、30 日前の書面による通知をもって、Epic 関連会社の一部または全部との間で DPLA を終了する契約上の権利を有していること、また、DPLA に関する「誤解を招くような不正な、不適切な、違法な、または不誠実な行為」を行った場合には、直ちに終了することができること

についての宣言的判決を求めています。

これに対してエピックゲームズは、DPLA の問題となっている条項が「非合法」であり、DPLA の終了が「非合法」な報復であることを理由に、アップル には宣言的判決を受ける権利がないと主張しています。

したがって、裁判所は、DPLA全体が有効であり、適法であり、執行可能であるという広範な宣告をする気はありません。 とはいえ、「App Store以外の配布方法で追加機能を提供したり、ロックを解除したり、有効にしたりしない」ことを開発者に要求するDPLAの条項(DPLA第3.2条、第3.3.2条、第3.3.3条、第3.3.25条)については、連邦および州の反トラスト法またはUCLの下で違法であるとは認められず、また、本件は報復にはならないと判断しました。

G 救済

裁判所は、エピックゲームズの契約違反の責任を認めて、

損害賠償として、(i)2020年8月から10月の間にEpic Direct Paymentを通じてEpic GamesがiOSのFortniteアプリでユーザーから収集した収入12,167,719ドルの30%と(ii)2020年11月1日から判決日までにEpic Gamesが収集した当該収入の30%に相当する金額

宣言判決として (i)AppleによるEpic GamesとAppleの間のDPLAおよび関連契約の解除は有効、合法、かつ執行可能であり、(ii)AppleはEpic Gamesの完全所有子会社、関連会社、および/またはEpic Gamesの管理下にあるその他の事業体のいずれかまたはすべてとのDPLAを、いつでもAppleの単独の裁量で解除する契約上の権利を有すること

を認めています。


コメント

市場を画定して、そのなかで、具体的な競争に対する影響を緻密に見ていくというアメリカの反トラスト法のアプローチが特徴的に出ている判決(命令)ということができるように思います。

新ブランダイス活動がどうの、というよりも、このようにきちんとした分析をする判決を読むのは、本当に勉強になります。ポイントは、思考方法としては、垂直的制限についての合理の原則と同様の理屈になっていることなのかと思います(リージン判決)。図8でしめします。アンドロイドのほうが、開発者との関係で、すこし規制が弱いという感じです。その分、グーグルプレイでの審査の問題とかがありますね。

 

 

 

 

 

 

 

そうだとすると、iOS市場は、ゲーマー達に対して安心かつ、憧れのiOSゲーマー(?)というサービスを確保できるのであり、それで、アンドロイドの陣営に対して、ブランド間の競争を確保しうることになります。このような競争促進効果があって、実際に、ゲーム業界が廃れているわけではない、ということであれば、これについて、反トラスト法的な是正を図る必要はないだろうということになるかと思います。

個人的には、判断過程をきちんと分析するに値する興味深い判決ですし、アメリカ 反トラスト法の考え方が、よくわかる判決だろうと思います。

自分としては、「アフターマーケット理論が適用されうる」という位置づけがよくわからなかったですし、このところは、別の機会に分析したいと思います。

ちなみに日本の「(令和3年9月2日)アップル・インクに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」だと

独占禁止法上の考え方
デジタルコンテンツ等はウェブサイト等アプリ以外の媒体でも配信されており,消費者は当該コンテンツ等を配信するデベロッパーのウェブサイト等を訪れて決済することもできる。このように,IAP以外の課金による販売方法という選択肢が存在することは,デジタルコンテンツ等の価格を引き下げる効果を持ち得,消費者の利益となり得るものである(注6)。
上記及び3(2)のような状況の下,アウトリンクを禁止する行為は,IAP以外の課金による販売方法を十分に機能しなくさせたり,デベロッパーがIAP以外の課金による販売方法を用意することを断念させたりするおそれがあり,独占禁止法上問題となり得る。

となっています。ブランド間競争の競争促進効果が、取り上げられていないというところが特徴に思えます。どうでしょうか。

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