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米国で議論になっている中立性の議論をわが国に置き換えると、NTT東西の関係会社が、ビデオ配信を行いたいと考えたとして、NTT東西が、そのビデオ配信会社の講読料を、パック料金のような形で、極端に割引するということが許容されるのか、というのが、そのもっとも大きな問題の一つということになるかとおもわれます。また、モバイル通信のシェアを有している携帯電話会社が、関連するビデオ配信会社に通信するパケット量を、その料金で算定するパケット量に算定しないというのは、どのように位置づけられるのか、という問題にもなります。
その11で、通信市場と競争の関係について、固定系の市場と移動系の市場とにわけて、みてみたわけですが、わが国で、そのような市場における競争上の地位を濫用する行為に対して、どのような法的な準備がなされているのか、ということについて触れる必要があります。
この点では、まず、電気通信事業法における「非対称規制」についてふれる必要があります。非対称規制というのは、「電気通信事業が国民生活及び社会経済活動の基盤として高い公共性を有することにかんがみ、従前のボトルネック設備に着目した規制に加え、一定の市場において市場支配力の濫用を継続的に防止、除去するための必要最小限のルールを導入することを目的としたもので、」市場支配力に着目して「市場支配的な電気通信事業者をあらかじめ特定して一定の行為規制を通常の電気通信事業者とは非対称的に課すこととするという制度をいいます。その規制についての基本的な考え方は、市場支配的でない事業者に対する規制を大幅に緩和するとともに、市場支配的な事業者にたいして現行規制をベースとしつつ、料金サービス面を含め極力緩和するというものです。
非対称規制の全体像については、また、別の機会ということにして、この非対称規制のための概念として、電気通信事業法は、第一種指定電気通信設備と第二種指定電気通信設備という概念の定義を準備しています。
前者の第一種指定電気通信設備は、法33条2項において、「他の電気通信事業者の電気通信設備との接続が利用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に欠くことのできない電気通信設備」として定義されています。この通信設備は、「その一端が利用者の電気通信設備(移動端末設備を除く。)と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備の電気通信回線の数の、当該区域内に設置される全ての同種の伝送路設備の電気通信回線の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該区域において当該電気通信事業者がこれと一体として設置する電気通信設備」で総務省令で定めるものの総体として、「総務省令で定める」とされています。
実際としては、この「第一種指定電気通信設備」として、NTT東西の設置する電気通信設備が、指定されています。
この通信設備を設置する事業者は、同法30条4項により、
(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)
(2)不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止(2号)
(3)他の電気通信事業者または電気通信設備製造業者・販売業者に対する不当な規律・干渉の禁止(3号)
の各義務が課されることになります。
また、移動体通信市場については、第二種指定電気通信設備の規定が問題となります。
第二種指定電気通信設備は、特定移動端末設備によって公正される市場において、他の電気通信事業者の電気通信設備との適正かつ円滑な接続を確保すべき電気通信設備として指定される設備として定義されます。
これは、その一端が特定移動端末設備と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数の、その伝送路設備を用いる電気通信役務に係る業務区域と同一の区域内に設置されている全ての同種の伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該電気通信事業者が当該電気通信役務を提供するために設置する電気通信設備であつて総務省令で定めるものの総体なのですが、その中で、最近一年間における収益の額の当該市場における収益のシェアが総務省令で定める割合を超える場合においては、他の電気通信事業者との間の適正な競争関係を確保するため必要があると認めるときは、同法30条3項の
(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)
(2)不当な優先的取扱・利益供与の禁止(2号)
の義務を負う事業者として指定されることになっています。
実際としては、この「第 二種指定電気通信設備」として、業務区域内で端末シェア10%超を有する携帯電話事業者(NTTドコモ、 KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクモバイル)指定されています(電気通信設備の接続に関する現状と課題)
「非対称規制」についての説明が長くなりました。エントリを変えて、説明を続けましょう。