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契約確認メールのスクリーンショットが信用できないとして保険契約の開始日が保険会社主張する日時が認められた判決例

弁護士会から送られてきた「交通事故相談ニュース48号」で、

ウェブサイトで契約した自動車保険の式が事故翌日と認定された事例    (神戸地判令和2年8月27日)

が紹介されています。そろそろデジタル証拠の法律実務のアップデートもしないといけないかなあと思っているので、同本の執筆時以降の判決例をピックアップしたいなあというところで、メモをしていきます。

事案

走行中の訴外B(以下「訴外B」という。)運転の原動機付自転車(以下「原告車両」という。)に反対車線からセンターラインをオーバーして走行して来た被告Y1運転の普通乗用自動車(以下「被告車両」という。)が衝突し,訴外Bが死亡した事故(以下「本件事故」という。)について,訴外Bの夫であり相続人である原告X1等が,運転者であるY1、車両の所有者であり被告Y1に被告車両を貸していた被告Y2、保険会社(被告会社)に対して、それぞれ損害賠償をもとめた事件です。

注目すべきなのは、被告Y1は,平成28年7月20日,仕事が終わって自宅に帰った後,スマートフォンによって,被告会社のウェブサイトにアクセスし,商品名:総合自動車保険  被保険者:被告Y1  証券番号:〈省略〉の保険契約の申し込みをしたのですが、その保険契約の開始日が問題となったことです。

事故は、平成28年7月23日に起きたのですが、原告らは、保険契約の開始日が、契約開始日が7月21日になっていたとして請求をなしたのに対して、被告会社は、保険契約の始期は、同24日であるとしたのです。

7月24日に事故を聞いた被告Y1の母親が,被告会社に本件事故の発生を連絡したころ,翌25日午前9時16分頃,被告会社から,被告Y1に対して,本件保険契約の始期は,7月24日になっているので,本件事故には適用できないとの連絡が入った、ということです。

契約締結日に関する証拠としては、保険会社としては、 契約確認メールのスクリーンショットと、被告Y1 の転送したメールが提出されています。これに対して、原告側は、被告Y1からLINEで送られてきたスクリーンショットによる契約確認メールを提出していますが、これは7月21日が保険契約の開始日となっています。

で裁判所は、保険会社の主張を認めて、7月24日が保険契約の開始日としています。

理由は、

(ア) 被告Y1は,7月20日に被告Y2に被告車両の貸借を申し入れた際には,7月 24日に使用する予定であったこと,被告Y1は,本件保険契約を申し込む前に,自動車保険の一括見積サイトのアクセスし,7月24日を開始日とする保険契約の見積もりを取って いること(丁11)等に照らしても,開始日を7月24日とすることに理由がある。

(イ) 現在,被告Y1らが保有している契約確認メールは,スクリーンショットだけであるところ,原メールをスクリーンショットにする際には,改ざんが可能であるし(丁9) ,被告Y1らの提出する契約確認メール(丁7,甲11)は,その受信日時が7月21日1 5時37分,同日18時13分と,被告Y1が本件保険契約を申し込んでから相当時間が経過しており,被告会社のウェブサイトの契約手続き上,通常起こりえない。

(ウ) たしかに,被告会社が本訴訟で提出した契約確認メール(丁2)は,従前Y1ら に開示されたメール(乙9)とは異なっているが,これらは提出の方法が異なっているため に生じたものであり,これをもって,その信用性が低下するとはいえない。 ことから,必ずしも原告ら及び被告Y1らの主張を裏付けるものとはなりえない。 さらに,加えて,

(エ) 日々多数の保険契約を締結し,また多数の事故報告を受けている被告会社につい て,本件保険契約に限って契約の開始日を改ざんする理由は認められないし,また,改ざん する時間的余裕もない。

(オ) 前記認定にかかる被告会社のウェブサイトによる契約手続きの流れに照らせば, 申し込み内容と,被告会社が受領した契約内容が異なる事態が起きる可能性も考えられない 。

(カ) 被告Y1らは,本件事故後,弁護士に,被告会社との間で保険期間が問題となっ ていることを相談しながら,当然原メールを保存し,場合によってはプリントアウトするな どして証拠保全するようにとのアドバイスを受けたはずであるのに,その後,原メールを消去してしまうなど,当事者として理解し難いことを行っていること。 などをも総合考慮すれば,原告ら及び被告Y1らの主張は採用できない。

となっています。

コメント

事実関係については、詳細は、わからないところですが、裁判所に提出されたメールが正反対のものであるようです。興味深い案件ということができるでしょう。

保険会社としては、どのようなシステムになっているのか、また、本件において、どのようなシステムの記録状態になっているのかは、判決からは、いま一つ読み取れませんが、裁判所の判断は、原告の証拠については、信用性がないものとしており、原メールの消去等の行為は、非常に問題のある行為であることがわかるだろうと思われます。

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