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ネットワーク中立性講義 その6 米国の議論(トランプ政権前)

FCCは、2014年5月に、Notice of Proposed Rulemakingで、「インターネットをオープンなままでいることを確かにするために正しい政策は何か」という基本的な質問をなしています。また、ブライト・ライン・ルール(ブロッキングなしルール、帯域制限なし、透明性の増加、および有料優先の禁止を含)を提案して、これを採用すべきか、また、それ以外の標準を用いるべきか、タイトル2が適用されるべきかも含めて諮問をなしています。

2014年11月には、オバマ大統領がインターネットの中立性の保護を訴える声明(Statement on Net Neutrality (Nov. 10, 2014)を発表しました。このステイトメントは「私たちは、インターネット・サーース・プロバイダが、ベスト・アクセスを制限するとき、勝者と敗者を選択することを認めることは許さない。」としています。裁判所のオープン・インターネット・オーダーの一部を無効とした判断については、FCCが、誤った法的アプローチをとっていたからよるとしました。そして、FCCは、ネット中立性を保護するルールのセットを作成すべきであり、ケーブル会社であろうと、電話会社であろうと、ゲートキーパーとして振る舞うことができないように確かにするべきであるとしています。

このステートメントでは、明確な線引きルール(ブライト・ライン・ルール)を提案しています。そして、ステートメントは、これらのルールは、ISPに対してなんら負担を増すものではなく、明確で、合理的なネットーワ―ク管理や、特別のサービスのための例外である、とも述べています。

また、これらのルールは、過去の教訓をもとに構築されなければならないとしました。つまり、もともと、世界に接続する会社は、特別の義務を負っていたとして、独占を貪ることは許されなかったとして、他の重要なサービスと同様の義務を課すべきであり、タイトル2(コモンキャリア)に再分類されるべきであるとしました。

このような経緯のもと、FCCは、2015年2月には、後にタイトルⅡオーダーと呼ばれる新たな規制ルール(REPORT AND ORDER ON REMAND, DECLARATORY RULING, AND ORDER)を公表しました。このタイトルⅡオーダーは、強固なルール、現在のタイトル2における投資の促進、維持しうるオープンインターネットルール、広範囲な規制差し控え(forbearance)を内容としています。

特に、そのうちでもっとも、注目される「強固なルール」は、ブロッキング、帯域制限、有料の優先接続をそれぞれ禁止すること(クリア・ブライトライン・ルール)を特徴としています。これらの規制を正当化するために、インターネットサービスプロバイダをタイトル2で取り扱うように定め直しています。その一方で、FCCは、タイトルにおける30の制定法の規定等の適用を差し控えるものとしました(広範囲な規制差し控え)。なお、プライバシー規定、障害者のアクセス、インフラアクセスの確保などの規定については、適用の差し控えはなされません。

このタイトルⅡオーダーは、2015年6月から効力を有していますが、これに対しても規制権限に関する裁判が提起されました。具体的には、ブロードバントサービスをタイトル2に再指定する権限を有するものではないし、また、仮にその権限があったとしても、その決定は、恣意的であり、また、タイトル2の規定は、憲法の第1修正に違反するというものでした。

ワシントンDC控訴裁判所は、この規制ルールが、FCCに与えられた権限を超過するものとはいえないという判断を下しています(2016年6月14日)。具体的には、実際のブロードバンドの利用は、第三者のコンテンツに対する通信という実質をもつものであって、電気通信サービスであるといえるとしました。

その後、トランプ政権において、これらの議論をめぐる動向は、一変することになります。

(2015年月のオーダーの名称をタイトルⅡオーダーとしました)

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