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ネットワーク中立性講義 その5 米国の議論 (ゼロレーティングの包摂)

この頃から、モバイルネットワークにおいて、いろいろいな契約の態様が生まれてきました。

モバイル通信サービスにおいては、データ通信量の制限を定める料金プランのもとで通信契約をなすのが一般です。これは、わが国でも同様です。しかしながら、特定のアプリケーションを利用する場合には、その通信量にカウントしないという内容になってきていました。。これは、ゼロレーティングといいます。T-Mobileは、音楽のストリーミングのプログラムにこの仕組みを導入し(2014年)、現在は、ビデオストリーミングまで拡張しています(2015年)。また、ベライゾン・ワイヤレスも、FreeBee Dataという名称で、音楽・ビデオ・アプリケーションダウンロードなどをデータ量にカウントしないサービスを開始しています(2016年)。

このゼロレーティングは、反競争的な行為なのではないか、特に特定の通信トラフィックの優先を禁止するFCCの規則に違反しているのではないか、という議論がなされるようになってきているのです。

モバイルの入り口の市場を考えてみれば、そこが寡占化されているのは、よくわかります。その寡占化されている市場における力を利用して、そのプラットフォームの上で提供される特定のサービスを有利に取り扱うことになれば、その特定のサービスの市場における健全な競争が阻害されるのではないか、ということです。このあたりを図にしてみると以下のようになります。

 

競争法(独占禁止法)の考え方ですが、基本的には、独占状態自体が悪いわけではないです。特定市場の状態を利用して、他の市場における競争に影響を与えたりすると問題が起きるわけです。モバイルの足回りの立場を利用して、ビデオ通信市場を押さえ込もうとしたりすると、具体的に、その競争はどうなるの、と考えなければならないことになることがわかるでしょう。

ゼロレーティングにおいては、賛成は、資源配分効率性の改善とネット利用環境の確保がなされるといいます。反対派は、コンテンツ市場にゆがみが出る、利用者のインテーネェントリテラシにゆがみがでると批判します。

この問題も、「ネットワーク中立性」という項目のもとで議論がなされています。

従来から、ネットワークのE2E原則等との関係で、ブロッキング、帯域制限などが「ネットワーク中立性」という項目のもとで議論されてきています(もともとは、BitTorrentあたりの帯域制限あたりが議論を活発にした契機に思えます)。さらに、このモバイルにおける契約の多様性をも含めるところまで議論が広がってきているということがいえるでしょう。これらの論点をまとめると、

E2E原則について E2E原則について、取り消すことについては、懐疑的にあるべきだ。 ネットワークは、中立ではないし、そうであったことはない。

今日のインターネットのサービスは、ただ単にネットの両端にあるわけではない

垂直統合に関する意見 「ネット中立性は、本当に、本当に重要だ。いまだかって、ネットのシステムのなかであなたのアプリケーション利用を絞られたことはないだろう。」

 

「ネット中立性が禁止している垂直統合の関係性は、実際には、価格を下げ、アウトプットを増やし、品質をあげるというように消費者に利益があるのだ」(FTC)
イノベーション ネット中立性のレギュレーションは、イノベーション等の重要な価値を促進させる ISPの単一料金設定やISPへの無制限のアクセスは、マネジメントのイノベーションを妨げる
言論の自由 言論の自由を守る効果がある

ということになるといえるでしょう。

寺田真一郎「ネット中立性 (net neutrality) - 米国の議論とルール化の様子 -」

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