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英国において、競争市場庁(CMA)が、グーグル・プライバシー・サンドボックスに対して、調査を開始して、グーグルからのコミットメントに対して「意思通知」を公表して、意見を求めたことは、既に「イギリス競争市場庁のプライバシーサンドボックスについての見方「グーグルの確約を受容するための意思通知(Notice of intention)」でふれています。
その後、グーグルが、2021年11月19日に、そのコミットメントを修正して、CMAに提出して、その修正されたコミットメントに対して、CMAが、暫定的な意見を付するとともに、意見を求める手続が、2021年11月26日に開始されました。そのプレスリリースは、こちらです。
修正されたコミットメントへの「意思通知」(Notice of intention to accept modified commitments offered by Google in relation to its Privacy Sandbox Proposals)は、こちら。
前の意思通知は、1 サマリー、2 序、3 CMAの調査、4 背景、5 CMAの競争についての懸念、6 CMAの提案についての評価、7 CMAの意図とコメントの案内、から成り立っていました。
今回の1126の意思通知(修正通知とします)の構成は、
からなりたっています。
序では、これまでの調査の経緯(1.1)、グーグルプライバシーサンドボックスの提案がされたこと(1.2)、CMAとICOの協力(1.3)、その競争への懸念(1.4)、確約手続について(1.5)、諮問手続がなされたこと(1.6)が記載されています。
この通知のサマリーでは、競争への懸念が変わっていないこと(1.7)、修正された確約では、CMAの懸念に対して対する努力をしていること(1.8)、になります
その修正点は、グーグルによると
(a)第三者(出版社、広告主、アドテク・プロバイダーなど)とのエンゲージメントのプロセスを専用のマイクロサイトで公開することを含め、CMAの役割(および進行中のCMAプロセス)をグーグルの主要な公開情報において言及すること、およびグーグルが第三者の意見をいかに考慮したかについてCMAに定期的に報告することを義務付けることによって、グーグルの透明性および第三者との協議に関する義務を追加すること。
(b) Googleがプライバシー・サンドボックス案を開発・テストするプロセスをより透明化し、TPCの代替となるものだけでなく、定量的テストが可能なすべてのプライバシー・サンドボックス案を(CMAの関与のもと)テスト・試行すべきであるという要件を拡張する。
(c) TPC の前に Google が追加の機能や情報を削除することに関する懸念に対処するための約束を追加する。つまり、Google は、TPC を削除する前に Privacy Budget(他の特定の情報へのアクセスを制限するツール)を実施せず、ウェブサイトの詐欺/スパム対策能力を支援する妥当な努力をした後にのみ GNATCATCHER 提案(IP アドレスへのアクセスを制限)を実施するという約束もすることになる。
(d) CMAが、コミットメントの下でCMAとグーグルの間で成立したあらゆる解決策をグーグルが遵守していることを監視する仕組みを設ける。
(e) デジタル広告のターゲティングと測定を目的としてグーグルが利用できるデータの内部制限を明確にし、第三者が利用できるのと同じ方法でプライバシーサンドボックスツールを今後利用するグーグルの意向を確認する。
(f) GoogleがGoogle自身の製品/サービスを自己参照する可能性に関する懸念に対処するアプローチを改善し、代替技術を開発している第三者により確実性を与えることを含む
(g) 報告と遵守に関する規定を改善し、例えばCMA承認の監視受託者を任命する
(h) 約束の期間を長くし、例えばCMAが約束を受け入れる決定から6年設ける。 (太字は、原文)
とされています(1.9)。
修正された確約は、競争上の懸念に対応したものとなるだろうとされています(1.10)。CMAは、修正された確約を受諾する以降を通知するとともに、とともに意見諮問の手続にはいること(1.11)、受託した場合には、指示等はできないことなどの手続の問題が記載されています(1.12-1.15)。
6月の意思通知における競争への懸念が再度、ふれられています(2.1-2.3)。そして、2.4以下では、諮問以降の観点が追加されています。CMAは、今回の発表が、TPC(サードパーティクッキー)が廃止された後に出版社やアドテク・プロバイダーが利用できる具体的な代替ソリューションに関して、市場に不確実性をもたらしていることを懸念しており、(2.4)、 Google と第三者間の情報の非対称性、Google がプライバシー サンドボックス案の開発と実施を意図することに対する第三者側の信頼性の欠如(2.5)があるとしています。
これは、既に「イギリス競争市場庁のプライバシーサンドボックスについての見方「グーグルの確約を受容するための意思通知(Notice of intention)」でふれています。
諮問がなされて、41の回答者から45の書面での意見がなされました。それらは、アドテク・プロバイダー、広告主、パブリッシャー、およびその他のタイプの回答者からでした。
ほとんどの回答は、初期のコミットメントを歓迎しています。しかし、ほぼ全ての回答が、以下に示すように、特定の側面について特定の懸念を提起したり、追加を提案しています。
4.4 諮問への回答は、主要な懸念事項に関するCMAの分析にほぼ同意し、プライバシー・サンドボックス提案が発展する過程でCMAが精査することを強く支持しました。回答者は、コミットメントを強化すべき分野として、以下のような提案をしました。
(a) 第三者や業界団体がプライバシー・サンドボックス提案の開発にどのように関与するかをさらに詳しく説明すること
(b) 停止期間が発生した場合に、グーグルがTPCを削除する前に他の機能やデータを削除しないことを保証する義務を追加すること
(c) グーグルが提案するテスト/実証には、TPCの置き換えだけでなく、すべてのプライバシー・サンドボックス提案が含まれることを保証すること
(d) コミットメントのデータ分離規定が、グーグルの競争上の優位性に関連するすべての可能な懸念に可能な限り対処することを保証すること。
(f) Google 以外の市場関係者によって開発されたプライバシー・サンドボックス・ツールの代替アプロー チをカバーするために確約を拡大すること
(g) 報告とコンプライアンスに関する条項を改善すること
(h) Google が以前に提示したものよりもコミットメントの期間を延長すること。
回答者からはさまざまな問題が提起されましたが、CMA は、回答には、当初のコミットメントが 6 月の通達で指摘された競争上の懸念に対応しているかどうかに直接関連する重要なテーマがあったと考えています(4.5)。 CMA の競争に関する懸念は 6 月の通知で示されたものから変更はありません。しかし、コンサルテーションへの回答を検討した結果、CMA はその競争上の懸念に対処するためにコミットメントを強化する必要があると結論付けました(4.6)。
11月29日には、グーグルから、修正された確約がなされたこと(4.7)、競争法31A条によれば、適切だと考えられる確約であれば、CMAは、受諾することができること(4.8)、適切かどうかは、競争上の懸念が容易にわかり、確約によって対応されること、確約が実行可能であることにかかってきます(4.9)。CMAは、暫定的な見解としては、これらの要件を満たすものと、考えている(4.10)。
4.110-4.118は、パプブリックコメントでの
グーグル以外の技術
についての言及になります。
最初の確約では、これについての言及はありませんでした(4.110)。6つのコメントが、グーグルが平等な競争環境(level playing field)を確かにするように、ということをふれていました(4.111)。また、他のブラウザでも利用可能なようにすべきという意見もありました(4.112)。CMAは、アド・マネージャーなどの提供者としての市場における地位を考えると、グーグルの他の識別手段の利用についてのポリシが、代替手段の開発に影響を与えうると認識しています(4.113)。また、プライバシー・サンドボックス技術は開発中であり、その評価も現在なされている最中であること(4.114)、修正された確約においてグーグルは、アドマネージャのポリシ(非グーグル技術の利用についての新たな制限を導入することはない)を変更しないこと(4..15)、CMAは、暫定的には、これはサードパーティに確実さを提供していると評価していること、そして、プライバシーサンドボックスの評価に関与していくこと(4.116)がふれられています。
また、CMAは、平等な競争環境(level playing field)を確かにするようにという確約について適切であると暫定的に考えており、それは、グーグルがデータ保護標準を遵守することに利益を有していること、グーグル・アド・マネージャーの顧客ポリシーは、サードパーティの代替テクノロジーの利用を制限することになるような制限を導入すべきではないというのを確実にしていることによります(4.117)。
CMAは、特定の状況においては、さらなる行動をとりうることに留意する。競争上の懸念があれば、それをグーグルに通知するし、もし、グーグルが期待に添わなければ、CMAは、調査を継続することになります(4.118)。
(4.119)以下は修正された確約への見解となるので、その前に、グーグルの修正確約を見ることにします。この修正された意思通知の付録1Aは、修正された確約で、1Bが、比較になるので、その比較のところをみていくこととします。(なお、以下、項目番号は、新しい番号)
グーグルの修正確約
A 序について、サードパーティクッキーの部分が削除(もと2)
B 定義について、広告システム、適用されるけるデータ保護立法、Gnatcatcher、グーグルアドマネージャ、グーグル・ファーストパーティ・パーソナルデータ、モニタリングトラスティ、「非グーグル技術」、個人データ、プライバシー予算、「量テスティング」、テーゲッティング測定、W3Cの定義が追加。
C 確約の目的について、「グーグルが、個人データが、利用されるのか、その方法の観点から実質的な選択を否定していないか」という表現が追加されています(7)。
D 透明性および第三者との相談について、
(11)で、「提案の十分な事前通知と重要な情報の公開を含む。Google は、附属書 1 に記載されているプライバシー サンドボックスの提案の起源試験、時期、および重要な変更に関連するブログ投稿およびプライバシー サンドボックス マイクロサイトの更新に、これらの公約への明確な言及と、ICO との協議による CMA の関与と規制監督に関する簡単な説明が含まれるよう最善の努力を払うものとします。」という部分が追加されています。
(12)で、「Google は、プライバシー サンドボックス提案の設計、開発、実施の詳細に関連するステークホルダー エンゲージメントのプロセスを専用のマイクロサイトで公開し、そのプロセスを公的に報告するとともに、以下の 32(a) 項で説明する四半期報告書を通じて CMA に報告します。そのプロセスの一環として、Google は、プライバシー サンドボックス提案の設計、開発、および実装において開発および実装基準をより適切に適用するために、テストを含むプライバシー サンドボックス提案に関連して、W3C またはその他のフォーラムで表明されたものを含む(ただしこれに限定されない)パブリッシャー、広告主、アドテク プロバイダーによって表明された合理的な見解および提案を考慮します。」が追加されています。
また、その他のコミュニティとの情報交換が追加され(13)、Google は、そのスタッフおよび代理人に対し、他の市場参加者に対して、確約に反する主張を行わないよう指示します。Google は、関連するスタッフおよび代理人にトレーニングを提供し、これらの確約の要件を認識させるようにします(14)。
E プライバシー・サンドボックスの提案へのCMAの関与について
17(もと、16)で、テストの部分で、定量的なテストが可能になることがふれられている。また、 サードパーティ Cookie の削除前に、Gnatcatcher を実装する、またはプライバシーバジェットを施行するのに際しては、Google は、スパム対策および詐欺防止への取り組み、ユーザーの粗い地理的位置(国または地域など)に基づくウェブサイトのカスタマイズを行うウェブサイトの能力をサポートする合理的な努力を行うことがふれられています。
G グーグルのデータの使用について
ブラウジングの履歴、アナリティックスのデータ、グーグルによって保有/運営されていないウエブサイトについての広告在庫についての確約が明確化されています。もっとも、代替的な技術を意図していることを明らかにしています(28)。
そのほか、H 差別的取扱の禁止、IからM 報告と遵守、期間、変更または置換、無効の影響、準拠法と管轄についても若干、修正がなされていすま。
興味深いのは、以下の点かと思われます。
概観
概観の概略(4.119)と14のコメントがなされたことが報告されています(4.120)。
一般的なコメント
報告とコンプライアンスについての重要性へのコメントがなされていること(4.121)、グーグルのコンプライアンスのモニタリングが困難であること(4.122)、グーグルと規制者の間の透明性の欠如/情報の非対称性があること(4.123)、などのコメントがなされたことが紹介されています(-4.128)。
修正された確約において、グーグルは、独立された信託者を指名すること、モニタリングの権能をあたり、通知することを提案している(4.129)。CMAは、この提案を歓迎しているとともに、信託者に種々の能力を期待していること(4.130)、がふれられています。
具体的なコメント
具体的なコメントとしては、特定の期間内に適合していくのかを考えないといけない、もしくは、救済がどのようなものかを考えないといけないとしたものがありました(4.131)、修正された確約では、この点について10日間であるとされている、とされたこと(4.132)、CMAは、修正された確約において、モニターのために、情報と書類にアクセスできるようになっており、この懸念に対応していること(4.133)。同様に修正された確約は、モニタリング説明の概略を含んでおり、モニタリングをなす信託者が、いかなるデータセットのアクセス履歴に調査することを定めていること、また、適合の測定を含んでいること(4.135)にふれています。これらとあわせると、暫定的な見解としては、修正された確約が、グーグルは、CMAのモニタリングに応じるようにすべきなどの懸念に対応しているといえるとされています(4.136)。
期間(確約のJ部)
初期の確約においては、有効期間は、(i) TPC の撤去から 2 年間、又は (ii) CMA のコミットメント受諾決定から 5 年間のいずれか早い方であり、CMA が当初の確約を受諾する決定を下すと思われる時期を考えると、少なくとも 2024 年末 まで、遅くとも 2026 年末まで有効であったと考えられるが、複数のコンサルテーション回答から、十分な規制監視、技術開発及び業界の確実性を確保するために、確約のJ部 で定める期間を延長することが望ましいことが示唆されました(4.137)。
そして、結局、この調査において、CMAがコミットメントを受け入れることを決定する時期を考えると、修正された確約は、当初の確約で定められた期間よりも少なくとも1年長く(潜在的には3年強)有効である可能性が高いこと、そして、CMAは、プライバシーサンドボックス提案とその影響をさらに評価できる持続期間がより長くなると暫定的に考えていることなどが述べられており、それらは、適切であると考えられている(4.145)。
CMAは、修正された確約は、競争法上の懸念に対応していると考えている(4.153)。
修正された確約においては、規制精査と監視が向上していると判断され、それは、
によるものです(4.154)。
修正された確約について、CMAは、暫定的に受諾するものと考えており、それは、
を根拠としています(4.155)。
確約された確約が、実装されうる性格であること、抑止効果を損なうものではないこと、コンプライアンスを実現するのが、困難ではないことなどから考えて、確約を受諾することが適切であるという見解に到達したとしています(4.156)。