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2017年1月23日、トランプ米大統領、FCC委員長に規制緩和派のパイ氏を指名した。(記事としては「新FCC委員長はAjit Pai氏?ネット中立性見直しの可能性も」)
パイ委員長は、同4月27日、「インターネットの自由の再構築(Restoring Internet Freedom)」という文書(Notice of Prososed Rulemaking)を公表しました (以下、インターネットの自由NPRMとします)。
この文書は、規則作成についての提案の告知(NPRM)です。
その趣旨は、2015年のFCCのオープン・インターネット・オーダー2015(なお、この文書の元では、タイトルⅡオーダーといっている-ISPをタイトルⅡに位置づけて規制するというアプローチ)によって、イノベーションが危機に瀕しているという判断をもとにしています。
このインターネットの自由NPRMは、具体的には、序、背景、インターネットの公共事業規制の終結、軽いタッチの規制枠組、手続的問題、命令文から成り立っています。
序においては、ISPは、インターネットエコシステムに膨大な投資をしており、それが歓迎されてきていること、2年前にFCCが、その方向性を変更し、基本インフラ型の規制をインターネットに導入し、政府規制型にシフトをしたこと、タイトルⅡオーダーによって、オンラインに対する投資およびイノベーションが危機に瀕したこと、がのべられています。また、プライバシーについてFTCの権限を剥奪しており(タイトルⅡオーダーでFCCが、タイトルⅡにおけるプライバシの適用については、差し控えないとしています)、その意味で、プライバシーを危険にさらしているといえること、もともとの両党派による自由でオープンなインターネットをつくるべきであると考えられていた最初のステップを踏み出すということがのべられています。
背景部分において、
1966年からの基本サービスと拡張サービスの違いが論じられたときから2015年のタイトルⅡオーダーまでの経緯がのべられています。この点については、すでに検討した通りですが、現在にいたるまでの経緯を時系列的にコンパクトにまとめているということができるでしょう。
インターネットの公共事業規制の終結の部分においては、
(1)2015年におけるタイトルⅡ命令の採用までの間に、自由かつオープンなインターネットが栄えたこと、投資額も多かったし、消費者は、高速アクセスを享受していたこと(2)しかしながら、FCCは、ブロードバンド・インターネット・サービスをタイトルⅡのもとで規制される、公共事業規制に従うと判断したこと、という経緯のもと、
これに対して、再度、同サービスを情報サービスに分類し直し、より軽いタッチの規制枠組みで規制されること、を提案しています。この提案は、文言・法の構造、FCCの先例、公共ポリシー(曖昧な規制の撤廃による投資の復活)を根拠とするものです。また、それらに加えて、FCCが、ブロードバンド・インターネット・サービスを情報サービスと分類する法的な権限を有していることについても具体的に論じています。
また、モバイル・インターネット・アクセスサービスは、民間モバイルサービスであるとすることを提案しています。また、タイトルⅡオーダーで明らかにされたFCCの規制の差し控え(forbearance)の適切性、222条規制(FTCからプライバシー規制権限を剥奪したことを改め、権限を戻す)、ライフラインプログラムの提案(ユニバーサルサービスとして、設置、維持、アップグレードについての助力をもらえるようにすること)などについても提案がなされています。
軽いタッチの規制枠組の部分においては、
現存する規則の再評価および体制の執行、ルール採用の権限についての法的権限、コスト・ベネフィット分析の各観点から記述がなされています。
現存する規則の再評価および体制の執行においては、
インターネット行為規範の撤廃、明確な線引きルールと透明性ルールの必要性を決定すること(ブロッキング禁止ルール、帯域制限禁止ルール、優先接続禁止ルール、透明性ルールについてのそれぞれの賛否の意見を求めている)、その余の考察(範囲、モバイルへの適用性、などの意見を求めている)、執行体制が論じられています。これらは、いずれも注目に値するものといっていいと思われます。
ルール採用の権限についての法的権限においては、通信法706条(a)および(b)が、権限を委譲しているというよりも権限を奨励していると解されるとしています。
コスト・ベネフィット分析については、この手続においては、コスト・ベネフィット分析を採用することの是非、また、採用する場合の採用の仕方についての提案を募集すること(Office of Management and Budget, Circular A-4を採用すべきかという点)が議論されています。
手続的問題、命令文については、またの機会にしましょう。
問題は、このインターネットの自由NPRMに対しては、各企業が反対をなしています。特にベンチャー企業が反対をなしています。これは、規制緩和方向への動きであるので、市場(特に接続市場)での実際の力を有しているプレイヤーが、それを有効に行使しうる方向への改正ということを懸念しているからに思われます。
なお、分析としては、「トランプ支持者たちは、自由を望むなら「ネット中立性」を歓迎すべきである」という分析(Wired)もあります。
報道からいうと、「FCCのネット中立性規則見直しに反発 Amazonなどが7月12日に抗議行動」という報道もなされているところです。
米国の動きを、さくっとみておきました。この議論がわが国の議論において、何か参考になることがあるのでしょうか。個人的には、ネットワーク中立性というのが、広範な概念すぎて、米国においては、この概念に、いろいろな問題点を包含しすぎていることの問題点があるように思われます。それらの点については、次の機会に検討してみましょう。