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「民事裁判の手続きIT化に向けた法改正案 衆議院で可決」という記事が出ています(2022年4月21日)が、司法のIT化については、いままで詳細には、フォローしていなかったので、ちょっと見ていくことにしたいと思います。
(もともとは、日弁連にコンピュータ委員会があったときには、シンガポールやシアトルに見学にいったことがあって、それから、10年以上かけてやっと実行に移るという感じです。参考文献だしておきます。-燦然と輝く「廃止」の文字ですね-お墓みたいなものでしょう)
(参考)コンピュータ委員会活動報告(2011年5月31日廃止)
「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案」の項目の枠組としては
となっています。「等」となっていますが、被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度に対応する改正が含まれていたりします。分析の対象として、その点は、とりあえずパスします。
これをみていくと、要綱案の番号だと
あたりが直接に関係する規定となりそうです。
それを念頭に、具体的に
をみていくことにします。
改正法は、「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」になり、その構造をあえて図示すると、
の感じです。
改正の趣旨としては、
主たるものですが、それだけではなく
もともに定められています。
また、改正される法律も、民訴法・民訴費用法のみではありません。
とはいってもメインは、民事訴訟法の改正になります。
第1条は、「第七章 電子情報処理組織による申立て等(第百三十二条の十)」を「第七章 電子情報処理組織による申立て等(第百三十二条の十)第八章 当事者に対する住所、氏名等の秘匿(第百三十三条-第百三十三条の四)」にする改正です
第2条は、いろいろな改正事項がありますが、注目されるものは、
第一款 総則(第九十八条-第百条)
第二款 書類の送達(第百一条-第百八条)
第三款 電磁的記録の送達(第百九条-第百九条の四)
第四款 公示送達(第百十条-第百十三条)」
にする改正とか、
などが興味深いです。(なお、上記以外にも、 第七編 法定審理期間訴訟手続に関する特則の改正部分は、勉強しないといけないとおもいますが、その部分は、今回は省略します)
上の要綱を参考にしながら、司法のIT化に関連する主たる条文をみていきます。
これは、まず、インターネットを用いてする申立て等ということになります。
1.1 申立の方法
第132条の10の見出しが「(電子情報処理組織による申立て等)」となります。そして、
を付し、同条第一項中「をいう。以下」の下に「この章において」を加え、「最高裁判所の定める」を削り、「定めるところにより、」の下に「最高裁判所規則で定める」を加え、「(裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と申立て等をする者又は第三百九十九条第一項の規定による処分の告知を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。第三百九十七条から第四百一条までにおいて同じ。)を用いてする」を「を使用して当該書面等に記載すべき事項をファイルに記録する方法により行う」に改め、同項ただし書を削り、同条第二項中「前項本文の規定」を「前項の方法」に改め、「された申立て等」の下に「(以下この条において「電子情報処理組織を使用する申立て等」という。)」を、「みなして、」の下に「当該法令その他の」を加え、同条第三項中「第一項本文の規定によりされた」を「電子情報処理組織を使用する」に、「同項の裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた」を「当該電子情報処理組織を使用する申立て等に係る事項がファイルに記録された」に改め、同条第四項中「第一項本文」を「第一項」に改め、同条第五項及び第六項を次のように改める。
さらに、5項と6項として
5 電子情報処理組織を使用する申立て等がされたときは、当該電子情報処理組織を使用する申立て等に係る送達は、当該電子情報処理組織を使用する申立て等に係る法令の規定にかかわらず、当該電子情報処理組織を使用する申立て等によりファイルに記録された事項に係る電磁的記録の送達によってする。
6 前項の方法により行われた電子情報処理組織を使用する申立て等に係る送達については、当該電子情報処理組織を使用する申立て等に関する法令の規定に規定する送達の方法により行われたものとみなして、当該送達に関する法令その他の当該電子情報処理組織を使用する申立て等に関する法令の規定を適用する。
となります。
第一編第七章に
(電子情報処理組織による申立て等の特例)
第132条の11 次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める事件の申立て等をするときは、前条第一項の方法により、これを行わなければならない。ただし、口頭ですることができる申立て等について、口頭でするときは、この限りでない。
一 訴訟代理人のうち委任を受けたもの(第五十四条第一項ただし書の許可を得て訴訟代理人となったものを除く。) 当該委任を受けた事件
二 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和二十二年法律第百九十四号)第二条、第五条第一項、第六条第二項、第六条の二第四項若しくは第五項、第六条の三第四項若しくは第五項又は第七条第三項の規定による指定を受けた者 当該指定の対象となった事件
三 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十三条第一項の規定による委任を受けた職員 当該委任を受けた事件
2 前項各号に掲げる者は、第百九条の二第一項ただし書の届出をしなければならない。
3 第一項の規定は、同項各号に掲げる者が裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができない場合には、適用しない。
(書面等による申立て等)
第132条の12 申立て等が書面等により行われたとき(前条第一項の規定に違反して行われたときを除く。)は、裁判所書記官は、当該書面等に記載された事項(次の各号に掲げる場合における当該各号に定める事項を除く。)をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
一 当該申立て等に係る書面等について、当該申立て等とともに第九十二条第一項の申立て(同項第二号に掲げる事由があることを理由とするものに限る。)がされた場合において、当該書面等に記載された営業秘密がその訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため裁判所が特に必要があると認めるとき(当該同項の申立てが却下されたとき又は当該同項の申立てに係る決定を取り消す裁判が確定したときを除く。) 当該書面等に記載された営業秘密
二 書面等により第百三十三条第二項の規定による届出があった場合 当該書面等に記載された事項
三 当該申立て等に係る書面等について、当該申立て等とともに第百三十三条の二第二項の申立てがされた場合において、裁判所が必要があると認めるとき(当該同項の申立てが却下されたとき又は当該同項の申立てに係る決定を取り消す裁判が確定したときを除く。) 当該書面等に記載された同項に規定する秘匿事項記載部分
2 前項の規定によりその記載された事項がファイルに記録された書面等による申立て等に係る送達は、当該申立て等に係る法令の規定にかかわらず、同項の規定によりファイルに記録された事項に係る電磁的記録の送達をもって代えることができる。
3 前項の方法により行われた申立て等に係る送達については、当該申立て等に関する法令の規定に規定する送達の方法により行われたものとみなして、当該送達に関する法令その他の当該申立て等に関する法令の規定を適用する。
(書面等に記録された事項のファイルへの記録等)
第132条の13 裁判所書記官は、前条第一項に規定する申立て等に係る書面等のほか、民事訴訟に関する手続においてこの法律その他の法令の規定に基づき裁判所に提出された書面等又は電磁的記録を記録した記録媒体に記載され、又は記録されている事項(次の各号に掲げる場合における当該各号に定める事項を除く。)をファイルに記録しなければならない。ただし、当該事項をファイルに記録することにつき困難な事情があるときは、この限りでない。
一 当該書面等又は当該記録媒体について、これらの提出とともに第九十二条第一項の申立て(同項第二号に掲げる事由があることを理由とするものに限る。)がされた場合において、当該書面等若しくは当該記録媒体に記載され、若しくは記録された営業秘密がその訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため裁判所が特に必要があると認めるとき(当該申立てが却下されたとき又は当該申立てに係る決定を取り消す裁判が確定したときを除く。) 当該書面等又は当該記録媒体に記載され、又は記録された営業秘密
二 当該記録媒体を提出する方法により次条第二項の規定による届出があった場合 当該記録媒体に記録された事項
三 当該書面等又は当該記録媒体について、これらの提出とともに第百三十三条の二第二項の申立てがされた場合において、裁判所が必要があると認めるとき(当該申立てが却下されたとき又は当該申立てに係る決定を取り消す裁判が確定したときを除く。) 当該書面等又は当該記録媒体に記載され、又は記録された同項に規定する秘匿事項記載部分
四 第百三十三条の三第一項の規定による決定があった場合において、裁判所が必要があると認めるとき(当該決定を取り消す裁判が確定したときを除く。) 当該決定に係る書面等及び電磁的記録を記録した記録媒体に記載され、又は記録された事項
第九十七条第一項中「当事者が」の下に「裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他」を加える。
となるので、
当事者が裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後1週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、2月とする。
となります。
これは、届出をしてもらった上で、送達を受けるべき者に対し、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用して当該措置がとられた旨の通知を発する方法によるということです。
トラストサービスの調査をしてわかったのは、イタリア・スペイン・フランスともに専門職は、eデリバリーによるドキュメントの送付が義務づけられているわけですが、それと一致しているところだなあと思われます。また、効力発生時期も法律でさだめられているわけで、この点もeデリバリーの議論に参考になるものであったりします(109条の3)。
(電子情報処理組織による送達)
第109条の2 電磁的記録の送達は、前条の規定にかかわらず、最高裁判所規則で定めるところにより、送達すべき電磁的記録に記録されている事項につき次条第一項第一号の閲覧又は同項第二号の記録をすることができる措置をとるとともに、送達を受けるべき者に対し、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用して当該措置がとられた旨の通知を発する方法によりすることができる。ただし、当該送達を受けるべき者が当該方法により送達を受ける旨の最高裁判所規則で定める方式による届出をしている場合に限る。
2 前項ただし書の届出をする場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、同項本文の通知を受ける連絡先を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。
3 第一項本文の通知は、前項の規定により届け出られた連絡先に宛てて発するものとする。
(電子情報処理組織による送達の効力発生の時期)
第109条の3 前条第一項の規定による送達は、次に掲げる時のいずれか早い時に、その効力を生ずる。
一 送達を受けるべき者が送達すべき電磁的記録に記録されている事項を最高裁判所規則で定める方法により表示をしたものの閲覧をした時
二 送達を受けるべき者が送達すべき電磁的記録に記録されている事項についてその使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録をした時
三 前条第一項本文の通知が発せられた日から一週間を経過した時
2 送達を受けるべき者がその責めに帰することができない事由によって前項第一号の閲覧又は同項第二号の記録をすることができない期間は、同項第三号の期間に算入しない。
(電子情報処理組織による送達を受ける旨の届出をしなければならない者に関する特例)
第109条の4 第109条の2第1項ただし書の規定にかかわらず、第132条の11第1項各号に掲げる者に対する第109条の2第1項の規定による送達は、その者が同項ただし書の届出をしていない場合であってもすることができる。この場合においては、同項本文の通知を発することを要しない。
2 前項の規定により送達をする場合における前条の規定の適用については、同条第一項第三号中「通知が発せられた」とあるのは、「措置がとられた」とする
ここでの注目は、第三款 電磁的記録の送達になるかと思います。
第109条を次のように改める。
(電磁的記録に記録された事項を出力した書面による送達)
第109条 電磁的記録の送達は、特別の定めがある場合を除き、前款の定めるところにより、この法律その他の法令の規定によりファイルに記録された送達すべき電磁的記録(以下この節において単に「送達すべき電磁的記録」という。)に記録されている事項を出力することにより作成した書面によってする。
第109条の次に次の3条及び款名を加える。
これは、111条によります。
(公示送達の方法)
第111条 公示送達は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める事項を最高裁判所規則で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、当該事項が記載された書面を裁判所の掲示場に掲示し、又は当該事項を裁判所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによってする。
一 書類の公示送達 裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべきこと。
二 電磁的記録の公示送達 裁判所書記官が、送達すべき電磁的記録に記録された事項につき、いつでも送達を受けるべき者に第百九条の書面を交付し、又は第百九条の二第一項本文の規定による措置をとるとともに、同項本文の通知を発すべきこと。
これは、3.1 映像と音声の送受信による通話の方法(ウェブ会議等)による口頭弁論 と3.2 電磁的記録についての書証に準ずる証拠調べ とにわけて分析できるでしょう。
「映像と音声の送受信による通話の方法による口頭弁論等」として87条の2が追加されます。これは、Teamsでの弁論を意味しているということになります(今は、準備手続ですね)
(映像と音声の送受信による通話の方法による口頭弁論等)
第87条の2 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、口頭弁論の期日における手続を行うことができる。
2 裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、審尋の期日における手続を行うことができる。
3 前二項の期日に出頭しないでその手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
3.2 電磁的記録についての書証に準ずる証拠調べ
これは、「第五節の二 電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ」として追加されます。具体的には、
(電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出)
第231条の2 電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの申出は、当該電磁的記録を提出し、又は当該電磁的記録を利用する権限を有する者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
2 前項の規定による電磁的記録の提出は、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的記録を記録した記録媒体を提出する方法又は最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用する方法により行う。
(書証の規定の準用等)
第231条の3 第二百二十条から第二百二十八条まで(同条第四項を除く。)及び第二百三十条の規定は、前条第一項の証拠調べについて準用する。この場合において、第二百二十条、第二百二十一条第一項第三号、第二百二十二条、第二百二十三条第一項及び第四項から第六項まで並びに第二百二十六条中「文書の所持者」とあるのは「電磁的記録を利用する権限を有する者」と、第二百二十条第一号中「文書を自ら所持する」とあるのは「電磁的記録を利用する権限を自ら有する」と、同条第二号中「引渡し」とあるのは「提供」と、同条第四号ニ中「所持する文書」とあるのは「利用する権限を有する電磁的記録」と、同号ホ中「書類」とあるのは「電磁的記録」と、「文書」とあるのは「記録媒体に記録された電磁的記録」と、第二百二十一条(見出しを含む。)、第二百二十二条、第二百二十三条の見出し、同条第一項、第三項、第六項及び第七項、第二百二十四条の見出し及び同条第一項並びに第二百二十五条の見出し及び同条第一項中「文書提出命令」とあるのは「電磁的記録提出命令」と、第二百二十四条第一項及び第三項中「文書の記載」とあるのは「電磁的記録に記録された情報の内容」と、第二百二十六条中「第二百十九条」とあるのは「第二百三十一条の二第一項」と、同条ただし書中「文書の正本又は謄本の交付」とあるのは「電磁的記録に記録された情報の内容の全部を証明した書面の交付又は当該情報の内容の全部を証明した電磁的記録の提供」と、第二百二十七条中「文書」とあるのは「電磁的記録を記録した記録媒体」と、第二百二十八条第二項中「公文書」とあるのは「もの」と、同条第三項中「公文書」とあるのは「公務所又は公務員が作成すべき電磁的記録」と読み替えるものとする。
2 前項において準用する第二百二十三条第一項の命令に係る電磁的記録の提出及び前項において準用する第二百二十六条の嘱託に係る電磁的記録の送付は、最高裁判所規則で定めるところにより、当該電磁的記録を記録した記録媒体を提出し、若しくは送付し、又は最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用する方法により行う。
「デジタル証拠の法律実務Q&A」(好評発売中です)では、その質問22では、新種証拠に関する学説として、論じましたが、書証の規定が準用されるということで、立法的に銘菓になったという位置づけになるかと思います。
そして、証拠調べの申出と電磁的記録提出命令及び電磁的記録送付の嘱託等が定められています。一般理論からいうと、関連性のあるデータについては、提出命令の対象になるということで、ディスカバリー的な思想と本当は、基礎が同一になるわけです。が、「闇討ちガンマン」によって真実が明らかになるという理屈を刷り込まれた人が多かったこともあり、運用は、一般的な考え方とは別の従来の考えでなされているところです。
映像等の送受信による通話の方法による尋問(第277条の2 )が追加されます。
(映像等の送受信による通話の方法による尋問)
第二百七十七条の二 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人又は当事者本人の尋問をすることができる。
なお、関連規定として204条の改正があります。
第204条中「には」を「であって、相当と認めるときは」に改め、同条第一号中「が遠隔の地に居住するとき。」を「の住所、年齢又は心身の状態その他の事情により、証人が受訴裁判所に出頭することが困難であると認める場合」に改め、同条第二号中「であって、相当と認めるとき。」を削り、同条に次の一号を加える。
三 当事者に異議がない場合
法第170条第3項が、
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。
とされます。
また、審尋に関しては、「第187条に次の二項を加える」として
3 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、参考人を審尋することができる。この場合において、当事者双方に異議がないときは、裁判所及び当事者双方と参考人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、参考人を審尋することができる。
4 前項の規定は、当事者本人を審尋する場合について準用する。
同様の規定が定められます。
第二百十五条第二項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 前項の鑑定人は、同項の規定により書面で意見を述べることに代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、当該書面に記載すべき事項を最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してファイルに記録する方法又は当該書面に記載すべき事項に係る電磁的記録を記録した記録媒体を提出する方法により意見を述べることができる。この場合において、鑑定人は、同項の規定により書面で意見を述べたものとみなす。
(映像等の送受信による方法による検証)
第232条の2 裁判所は、当事者に異議がない場合であって、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により検証の目的の状態を認識することができる方法によって、検証をすることができる。
第百八十五条に次の一項を加える。として
3 裁判所(第一項の規定により職務を行う受命裁判官及び前二項に規定する嘱託により職務を行う受託裁判官を含む。)は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、第一項の規定による証拠調べの手続を行うことができる。
判決書は、電子判決書に変わります。条文としては、第252条及び第253条になります。
(電子判決書)
第252条 裁判所は、判決の言渡しをするときは、最高裁判所規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記録した電磁的記録(以下「電子判決書」という。)を作成しなければならない。
一 主文
二 事実
三 理由
四 口頭弁論の終結の日
五 当事者及び法定代理人
六 裁判所
2 前項の規定による事実の記録においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
当然言渡しもファイルへの記録が伴います。
(言渡しの方式)
第253条 判決の言渡しは、前条第一項の規定により作成された電子判決書に基づいてする。
2 裁判所は、前項の規定により判決の言渡しをした場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、言渡しに係る電子判決書をファイルに記録しなければならない。
第二百五十四条第一項中「第二百五十二条」を「前条」に、「判決書の原本」を「電子判決書」に改め、同条第二項中「前項」を「裁判所は、前項」に、「裁判所は、判決書」を「電子判決書」に、「調書に記載させなければ」を「電子調書に記録させなければ」に改める。
4.2 電子判決書の送達
(電子判決書等の送達)
第255条 電子判決書(第二百五十三条第二項の規定によりファイルに記録されたものに限る。次項、第二百八十五条、第三百五十五条第二項、第三百五十七条、第三百七十八条第一項及び第三百八十一条の七第一項において同じ。)又は前条第二項の規定により当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨が記録された電子調書(第百六十条第二項の規定によりファイルに記録されたものに限る。次項、第二百六十一条第五項、第二百八十五条、第三百五十七条及び第三百七十八条第一項において同じ。)は、当事者に送達しなければならない。
2 前項に規定する送達は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
一 電子判決書又は電子調書に記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が当該電子判決書又は当該電子調書に記録されている事項と同一であることを証明したものの送達
二 第百九条の二の規定による送達
その他 司法のIT化に関連するものとしては、電磁的訴訟記録の閲覧等、電子調書があります。
実務的には、結構気になったのは、手数料の電子納付への一本化 、郵便費用の手数料への一本化があります。
特に、訴訟の提起に関する費用ですが、
別表第二(第三条、第四条関係)
項 |
上 欄 |
下 欄 |
一 |
訴え(反訴を除く。)の提起 |
イ及びロに掲げる額の合算額 イ 訴訟の目的の価額に応じて、次に定めるところにより算出して得た額 (一) 訴訟の目的の価額が百万円までの部分 その価額十万円までごとに 千円 (二) 訴訟の目的の価額が百万円を超え五百万円までの部分 その価額二十万円までごとに 千円 (三) 訴訟の目的の価額が五百万円を超え千万円までの部分 その価額五十万円までごとに 二千円 (四) 訴訟の目的の価額が千万円を超え十億円までの部分 その価額百万円までごとに 三千円 (五) 訴訟の目的の価額が十億円を超え五十億円までの部分 その価額五百万円までごとに 一万円 (六) 訴訟の目的の価額が五十億円を超える部分 その価額千万円までごとに 一万円 ロ 二千五百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、千四百円)。ただし、被告の数が二以上の場合にあつては、被告の数から一を減じた数に二千円を乗じて得た額を加算した額 |
二 |
控訴の提起(四の項に掲げるものを除く。) |
イ及びロに掲げる額の合算額 イ 一の項イにより算出して得た額の一・五倍の額 ロ 千九百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、八百円) |
三 |
上告の提起又は上告受理の申立て(四の項に掲げるものを除く。) |
イ及びロに掲げる額の合算額 イ 一の項イにより算出して得た額の二倍の額 ロ 二千七百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、千百円) |
四 |
請求について判断をしなかつた判決に対する控訴の提起又は上告の提起若しくは上告受理の申立て |
イ及びロに掲げる額の合算額 イ 二の項イ又は三の項イにより算出して得た額の二分の一の額 ロ 二の項ロ又は三の項ロに掲げる額 |
五 |
請求の変更 |
変更後の請求につき一の項イ(請求について判断した判決に係る控訴審における請求の変更にあつては、二の項イ)により算出して得た額から変更前の請求につき一の項イ(請求について判断した判決に係る控訴審における請求の変更にあつては、二の項イ)により算出して得た額を控除した額 |
六 |
反訴の提起 |
一の項イ(請求について判断した判決に係る控訴審における反訴の提起にあつては、二の項イ)により算出して得た額。ただし、本訴とその目的を同じくする反訴については、この額から本訴に係る訴訟の目的の価額について一の項イ(請求について判断した判決に係る控訴審における反訴の提起にあつては、二の項イ)により算出して得た額を控除した額 |
七 |
民事訴訟法第四十七条第一項若しくは第五十二条第一項又は民事再生法第百三十八条第一項若しくは第二項の規定による参加の申出 |
一の項イ(請求について判断した判決に係る控訴審又は上告審における参加にあつては二の項イ又は三の項イ、第一審において請求について判断し、第二審において請求について判断しなかつた判決に係る上告審における参加にあつては二の項イ)により算出して得た額 |
八 |
簡易裁判所に対する再審の訴えの提起 |
三千二百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、二千百円) |
九 |
簡易裁判所以外の裁判所に対する再審の訴えの提起 |
五千二百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、四千百円) |
一〇 |
和解の申立て |
二千七百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、二千四百円) |
一一 |
支払督促の申立て |
イ及びロに掲げる額の合算額 イ 請求の目的の価額に応じ、一の項イにより算出して得た額の二分の一の額 ロ 二千七百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、二千五百円) |
一二 |
行政事件訴訟法の規定による執行停止の申立て又は仮の義務付け若しくは仮の差止めの申立て |
二千円 |
一三 |
イ 民事訴訟法の規定による特別代理人の選任の申立て、弁護士でない者を訴訟代理人に選任することの許可を求める申立て、忌避の申立て、訴訟引受けの申立て、秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を当事者に限る決定を求める申立て、その決定の取消しの申立て、秘匿決定を求める申立て、秘匿事項記載部分の閲覧等の請求をすることができる者を秘匿決定に係る秘匿対象者に限る決定を求める申立て、秘匿決定等の取消しの申立て、秘匿決定等により閲覧等が制限される部分につき閲覧等をすることの許可を求める申立て、裁判所書記官の処分に対する異議の申立て、訴えの提起前における証拠収集の処分の申立て、訴えの提起前における証拠保全の申立て、受命裁判官若しくは受託裁判官の裁判に対する異議の申立て、手形訴訟若しくは小切手訴訟の終局判決に対する異議の申立て、少額訴訟の終局判決に対する異議の申立て又は同法の規定による強制執行の停止、開始若しくは続行を命じ、若しくは執行処分の取消しを命ずる裁判を求める申立て ロ 参加(七の項に掲げる参加を除く。)の申出又は申立て ハ 行政事件訴訟法の規定による執行停止決定の取消しの申立て若しくは仮の義務付け若しくは仮の差止めの決定の取消しの申立て、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二十七条の二十の規定による申立て、特許法第百五条の二の三第一項、第百五条の四第一項若しくは第百五条の五第一項の規定による申立て、著作権法第百十四条の六第一項若しくは第百十四条の七第一項の規定による申立て、不正競争防止法第十条第一項若しくは第十一条第一項の規定による申立て、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第八十一条第一項若しくは第八十二条第一項の規定による申立て、種苗法第四十条第一項若しくは第四十一条第一項の規定による申立て又は家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律第十一条第一項若しくは第十二条第一項の規定による申立て ニ 最高裁判所の規則の定めによる申立てのうちイに掲げる申立てに類似するものとして最高裁判所が定めるもの |
五百円 |
一四 |
行政事件訴訟法の規定による執行停止の申立て又は仮の義務付け若しくは仮の差止めの申立てについての裁判(抗告裁判所の裁判を含む。)に対する抗告の提起又は民事訴訟法第三百三十七条第二項の規定による抗告の許可の申立て |
五千円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、三千九百円) |
一五 |
一四の項に規定する裁判以外の裁判に対する抗告の提起又は民事訴訟法第三百三十七条第二項の規定による抗告の許可の申立て |
三千円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、千九百円) |
一六 |
民事訴訟法第三百四十九条第一項の規定による再審の申立て |
二千七百円(電子情報処理組織を使用する方法による申立てをする場合にあつては、千六百円) |
この表の各項の上欄に掲げる申立てには、当該申立てについての規定を準用し、又はその例によるものとする規定による申立てを含むものとする。 |
というように、電子的に申し立てる場合には、減額がされています。当然なのですが、これかきちんと法律となるところは、やっと日本でも他の国より20年遅れですが、軌道に乗ろうとしているのだろうと思います。