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プライバシーと競争の交錯-英国のグーグルサンドボックス事件の終結と同事件のその後の展開

英国の競争市場庁(CMAです)によるグーグルサンドボックスに対する調査事件については、このブログで、

英国・競争市場庁のグーグル・プライバシー・サンドボックスの改善されたコミットメントの評価(2021年11月26日)

イギリス競争市場庁のプライバシーサンドボックスについての見方「グーグルの確約を受容するための意思通知(Notice of intention)」

(プライバシーサンドボックスに関する?)英国・競争市場庁と情報コミッショナーの共同ステートメント(2021年5月19日)

プライバシーサンドボックス、FLoC、FLEDGEとは、何か?

などでふれたところです。

CMAにおける事件のページは、こちらです

1 事件の終結

しかしながら、今年の2月11日に事件としては、グーグルの提案をうけて終結しているので、そのアナウンス、確約に対する評価、受諾の中身をまずは見ていくことにします。

1.1 2月11日報道発表等

2022年2月11日に、 競争市場庁は、プライバシー・サンドボックスに関する競争上の懸念に対処するため、グーグルから法的拘束力のある確約を受諾しました。競争市場庁は、今後、プライバシー・サンドボックスが消費者に利益をもたらす形で開発されるようグーグルを監督する次の段階に移るというプレスリリースが公表されています。

—–プレスリリース—-
CMAの最高責任者であるAndrea Coscelliは、
「この件への介入は、デジタル市場における競争を保護するという我々のコミットメントと、世界をリードするハイテク企業の行動を形成するという我々のグローバルな役割を実証するものです。
-我々がグーグルから得たコミットメントは、競争を促進し、オンラインパブリッシャーが広告を通じて資金を調達する能力を保護し、ユーザのプライバシーを保護するのに役立つものです。
-これは重要なステップですが、私たちの仕事が終わったと錯覚しているわけではありません。私たちは、グーグルがこれらの提案を発展させていくのを注視しながら、新たな段階へと進んでいくことになります。
-私たちは、このプロセスにおいて、すべての市場参加者と関わり、グーグルが提起された懸念や提案を考慮していることを確認するつもりです。 CMAは、グーグルの責任を追及するための一連のメカニズムをコミットメントとして確保しました。 」と述べています。

—–
また、同日、グーグルは、ブログで声明を公表しています。

1.2 公表された事件資料

事件の資料としては、「確約受諾の決定」が公表されていすま。この文書は、付属文書としてグーグル最終確約や修正確約との比較が公表されています。

確約受諾の決定

この確約受諾の決定(Decision to accept commitments offered by Google in relation to its Privacy Sandbox Proposals)は、1 序および概要、2 背景、3 CMAの競争上の懸念、4 確約、5 CMA の確約に対する総合評価、6 確約決定から成り立ちます。

1 序および概要

序および概要においては、本件において、CMAがアルファベット社等からの確約を受諾したこと、クッキーの概念、調査と競争上の懸念、事件の経緯、最終的に競争上の懸念に対して対応がなされたと考えるにいたったことなどが論じられています。

2 背景

背景においては、調査の経緯(2.1-2.16)や当事者や調査対象の行為(2.17-2.31)、その背景について(主として関連市場の特定、2.32-2.58)が論じられており、従前においても検討された事項です。

3 CMAの競争上の懸念

CMAが、調査対象の行為によって生じるおそれがあるだろうと考えている競争への懸念を図示すると以下のようになります。

この分析の特徴は、そのようなアナウンスメントについて二つの部分からなるアプローチをとっていることです。

ひとつは、ア)アナウンスされた行為が、規制・監督がなされない場合に支配的地位の濫用に該当するかということであり、いま一つは、イ)アナウンス自体、現在までに実際に採用されたステップを実行することが、事案の特定の状況において、濫用を構成するか、ということになります。

ア)プライバシー・サンドボックス自体の競争上の懸念

CMAは、グーグルの提案が規制上の精査や監視なしに実施された場合、英国のウェブブラウザ供給市場における支配的地位の濫用になる可能性が高いと懸念しています。具体的には、

  • 懸念1 利用者のトラッキングに関連した機能に対するアクセスの不平等性(3.32-3.69)
  • 懸念2 グーグル自らのアドテクプロバイダーおよび広告在庫における保有・運営への自社優遇(3.70-3.80)、
  •  懸念3 クロームウエブユーザーに対する不公平な条件の賦課(3.81-3.98)
    になります。
    これらの懸念は、具体的には、以下のようになります。

懸念1 利用者のトラッキングに関連した機能に対するアクセスの不平等性

これは、グーグルが様々なソースからのデータを組み合わせることができるため、ライバルに対して大きな優位性を持つことになることを意味します。特に、サードパーティクッキーを撤廃し、プライバシー・サンドボックス案を実施することは、競争相手にとっては、ウェブ上で個人レベルのデータを結合することを妨げられるのにたいして、グーグルのエコシステム内では、これはほとんど変わらないと考えられます。

グーグルは、(a)パブリッシャーが広告主に対して販売する広告在庫の販売する能力に対して実害のあるインパクトを与えること、(b)アドテクプロバイダーに対して、パブリッシャーと広告主へのサービスを販売する能力に対して実害のあるインパクトを与えること、がそれぞれできることになります(3.32)。

従って、競合するパブリッシャーと広告技術プロバイダを、オープンなディスプレイ市場で主に提供できる広告在庫の質を悪化させることによって閉め出すことができることになります。これにより、グーグルは、オープンディスプレイ市場で活動するライバルのパブリッシャーやアドテクプロバイダーに対して、大きな競争上の優位性を獲得することになります(3.33)。
このような懸念は、さらに、プライバシー・サンドボックスが、サードパーティクッキーによって提供されてきた機能の効果的な代替物にならないのではないか、グーグルは、ファーストパーティのユーザーデータにアクセスしうることから、第三者ほど、影響を受けないのではないかという二つの要素から支えられています。

プライバシー・サンドボックスが、サードパーティクッキーによって提供されてきた機能の効果的な代替物にならないのではないかというのは、具体的に提案されているFLoC、TURTLEDOVE・FLEDGE やFenced Frames、Reporting and Measurement APIs、User-Agent Client Hints・プライバシー予算やGnatcatcherなどの代替案が、それぞれ、グーグル以外のサービスのクオリティを低下させてしまうのではないか、ということです。これらについて指摘されている事項については、省略します(3.40-3.49)。
グーグルは、Privacy Sandbox の提案の実施後であっても、自らのサービスから収集したデータを共有し、 広告目的に使用できることにはかわりがありませんので、グーグルのユーザやビジネス向けの製品やサービスが広範囲に及んでいることから、デジタル広告市場の競争を歪めることになりかねません。グーグルは、デジタル広告の目的(ターゲティングと測定を含む)のために、(a) Android を含む グーグル のユーザ向けサービス(グーグル 検索から収集したデータなど) (b) Customer Match を通じてアップロードされたデータ (c) Google Account Web & App Activity と同期した Chrome ブラウジング履歴による第三者のウェブページ (d) 企業向け Google Analytics ツールを介した第三者のウェブページを利用しうる立場にあります(3.54)。これらのデータソースから得られるデータを、自社が所有・運営する広告在庫と、アドテクノロジーサービスを通じて第三者である グーグル 以外の広告在庫で、引き続き利用できる可能性があります(3.56-3.66)。

これらの考察の結果、CMAは、競合するパブリッシャーと広告技術プロバイダを、オープンなディスプレイ市場で広告主に提供できる広告在庫の質を悪化させることによって閉め出す可能性が高いこと、グーグルの 広告在庫と広告主及びパブリッシャーに対するグーグルの広告技術サービスの質には全くあるいは 限定的に影響を与えるにすぎないこと、その結果、グーグルは、オープンディスプレイ市場で活動するライバルのパブリッシャーやアドテクプロバイダーに対して、大きな競争上の優位性を獲得することになること、また、一部の広告主がディスプレイ広告から検索広告に予算を移動させ、英国で90%以上のシェアを持つグーグルが利益を得る可能性もあることを考えました。
グーグルは、社内ポリシとして、自社のウェブユーザー向けサービス及び/又はビジネス向けサービスから収集したデータを、自社及び自社運営、又は第三者の広告在庫に掲載する目的で共有しないと述べていますが、競争市場庁は、これらの社内制約は技術的又は法的障壁に基づくものではないため、グーグルが将来変更する可能性があるため、競争への懸念は、存在するものと理解しました。

懸念2 グーグル自らのアドテクプロバイダーおよび広告在庫における保有・運営への自社優遇

これは、プライバシー・サンドボックス提案は、現在アドテクプロバイダー(DSP、SSP及び/又はパブリッシャー広告サーバ)が行っている機能の一部をChromeに移行させるものであり、規制当局の監視や監督がない場合、これは、グーグルがウェブブラウザの供給市場における支配的な地位を活用し、オープンディスプレイ広告における地位を強化する機会を与えることになるという懸念です(3.70)。グーグルはクロームを所有すると同時に、パブリッシャーやアドテクプロバイダーとしても事業を展開していることから、グーグルは、例えば、Chromeが特定のウェブユーザーに表示する広告を決定する際に、自社の広告在庫やアドテクサービスを自己優遇して、顧客の最善の利益のために行動しないインセンティブを持つ可能性があり、これは利益相反につながる可能性が高いといえます。グーグルがプライバシー・サンドボックス提案に対する代替案があればそれを取り入れ、グーグルが自己参照を行う能力を最小化または排除することに対して、グーグルにインセンティブに働かない利益状況であり、CMAは、グーグルがクロームに対する支配力を利用して、このように関連市場の競争に影響を与えることができてしまいます。
この懸念は、具体的には、グーグルが自らのサービスに対して、技術的な優位性を提供できるような設計ができるのではないか(例、相互運用性を高めて待ち時間を短縮する)、サンドボックスのプロジェクトで開発されるツールが、グーグルのサービスを優遇する可能性もあるのではないか(クロームブラウザが利用者の閲覧履歴を分析することで、その唯一の責任主体として広告を決定しうる地位になる)、などの事項を意味しています(3.71-3.80)。

懸念3 クロームウエブユーザーに対する不公平な条件の賦課

これは、ブラウザが個人データの収集と処理に関して制御とオプションを可能にしていることから、(個人データの収集と処理についての選択肢が)ブラウザ間の競争のパラメータとなる可能性が高いのにもかわらず、それをグーグルが一方的に決定してしまうという懸念です。利用者においては、ブラウザや第三者による個人情報の収集・加工を望まない利用者がいれば、より関連性の高い広告の表示、繰り返しの広告の回避、その他の報酬と引き換えに、こうしたデータ利用に同意する利用者も存在しえますのに、それに対する選択肢が提供されていないのです。Firefox と Safariにおいては、TPC(サードパーティクッキー) がデフォルトでブロックされますが、利用者は TPC ブロックを全般的または特定のサイトに対して無効にできるオプションを持っており、利用者にある程度の制御を提供していることを競争市場庁は、指摘しています。その意味で、消費者に対する不当な条件の押し付けという形で濫用につながる可能性があり、そのような不当な条件は、消費者が自分の好みに合わせてプライバシーとターゲティングのレベルを調整することを妨げることによって、消費者に損害を与える可能性が高いと懸念しているのです。

イ)プライバシー・サンドボックスに対してのアナウンス

グーグルのプライバシー・サンドボックスに対してのアナウンスは、それ自体、事案における特別の状況のもと、連合王国において、ウェブブラウザの市場における支配的地位の濫用になります。この観点から、(a)グーグル と第三者との間の情報の非対称性、(b)プライバシー・サンドボックス提案の開発と実施の意図に関する グーグル の声明に対する第三者の信頼性の欠如に基づくものと認識しています(3.86-3.93)。これらを示す事項は、以下のとおりです。

  •  一部の市場関係者は、W3Cを通じたグーグルのステークホルダーへの関与は限定的であり、非常に技術的な性質のものであるため、第三者によるグーグル提案への参加・検討の可能性が制限されていると主張しています。また、グーグルは、新しい規格が議論され合意される際の通常のプロセスではなく、フィードバックを得るためにその場限りの議論を行ってきたと述べています。
  •  グーグルがプライバシー・サンドボックス提案とその有効性について、TPCと比較して、ほとんど詳細と透明性を提供していないと考えられること。市場参加者によれば、グーグルがどのようにプライバシー・サンドボックス案の有効性をテストしようとしているのか、その有効性を評価する際に使用する基準や、市場参加者からのフィードバックがどのように考慮されるのかなど、透明性が欠けているとされます。
  • プライバシー・サンドボックス案は、クロームにおけるグーグルのアルゴリズムの働きを観察できず、その公平性や有効性をグーグル以外の者が評価・監査できない「ブラックボックス」になっていること
  • 一部の市場参加者は、グーグルが競争の歪みを最小化する意図を全く表明していない、あるいは不十分であると主張していること。

また、同章においては、サンドボックス提案の内容(3.9-3.28)、その影響の評価(3.29-3.101)がなされています。これらの内容も既に触れていますので、そこに譲ります。

4 確約

4 確約においては、Googleが最初に確約を呈示したこと(4.1)、それに基づいて最初の諮問がなされたこと(4.2-4.5)、その後、修正確約に対しての諮問がなされたこと(4.6-4.7)が述べられています。

最終確約については、4.8以降において論じられています。

同確約は、2022年2月に、グーグルが提供したものであり、諮問による懸念に対して対応しています。そこでは、各セクションの概観がなされています。序については、4.12-4.24、定義については、4.25-4.73、確約の目的については、4.74-4.116、透明性および第三者の諮問については4.117-4.154、(テスト・実施試験をも含む)CMAとICOの参加については、4.155-4.192、サードパーティクッキーの除去についての凍結期間については、4.193-4.262、グーグルのデータの利用については、4.263-4.286、非差別性については、4.287-4.329、報告と遵守については、4.330-4.384、有効期間については4.385-4.399、それ以外については4.400以下4.431までで諮問の結果とCMAの評価がなされています。また、確約を認める場合には、中間的な手段を論じないとしたCMAの判断について評価は、4.432- 4.473で論じられています。

5 最終確約における競争上の懸念に対する評価

5 CMA の確約に対する総合評価は、5.1以下です。
CMA は、最終コミットメントによって実施される規制上の精査、監視及び義務が、CMA が特定した競争上の懸念に対処するものであると結論づけました(5.3)が、これは、CMAの手続きガイダンスに準拠するものです(5.7-5.8)。

プライバシー・サンドボックス提案が十分な規制の精査と監視なしに実施された場合に起こりうる影響と6 月の通知の発行に先立つ Google の関連提案と/または実施措置の発表に関するという競争法上の懸念に対して(5.9-5.13)、CMAは、最終確約によって、規制上の監視、監督、義務が導入されることから、競争の懸念に対処しているものと考えました(5.15)。

 懸念1・ユーザートラッキングに関連する機能への不平等なアクセス

ユーザートラッキングに関連する機能への不平等なアクセス(懸念1)にたいして、プライバシー・サンドボックス案の設計、開発、実施、及びテストに関して、CMAとICOによる広範な規制上の関与を定めていること(5.21-5.24)、代替技術のテスト(5.25-5.27)や最終約束の監視と遵守(5.28)に関してCMAの関与を認めていることは、この懸念にたいして対処していると考えられます。また、グーグルは、各種の一般公開や第三者との協議により透明性を向上する一定の措置をとることが求められている(5.29-5.31)し、また、それらのためにCMAの権限が確保されている(5.32-5.34)。CMAは、グーグルはファーストパーティのユーザーデータへのアクセスが有利なため、第三者ほどこの影響を受けないのではないかという懸念を有していました(グーグルのデータの優位性に関する懸念)。しかし、グーグルが自ら、そのファーストパーティーデータを利用しないこと、該当する広告主やパブリッシャー以外のウェブサイトにおけるユーザの活動に関する個人データを利用しないことを約しており、CMAは、上記の懸念に、対応していると考えています(5.35-5.42)。

 懸念2.グーグル独自のアドテクプロバイダーと自社運用の広告在庫の自己優遇の懸念

CMAの他の懸念は、規制当局による十分な監視と検証が行われない場合、プライバシー・サンドボックス案は、主要な機能をクロームに移すことにより、グーグルが自社の広告在庫とアドテクノロジーサービスを自己優先することを可能にし、第三者が監視できない方法で、クロームを通じてデジタル広告市場の結果に影響を与える能力をグーグルに与え、利益相反につながるというものである(懸念2.グーグル独自のアドテクプロバイダーと自社運用の広告在庫の自己参照の懸念)。グーグルは確約の目的に合致し、開発及び実施基準を考慮に入れた方法でプライバシー・サンドボックス提案を設計、開発、実施することを約束し、また、自社の広告製品およびサービスを優先してライバルを差別することにより、競争を歪めることがないようにすることも約束し、CMAの権限を確保する仕組みが含まれていること(5.45-5.48)、また、他の市場参加者の技術を、グーグルが、削除することができないこと(5.49-5.51)、からCMAは、この懸念に対しても対応されているものと考えました。
また、CMAは、最終確約が、(i) 最終約束の明確な目的、及びその目的が達成されたかどうかを評価するための開発・実施基準の定義 (ii) 透明性及び第三者との協議の義務 (iii) 堅牢な解決メカニズム。(iv) 競争に関する懸念が残っているかどうかをCMAが評価し、残っている場合は適切な行動を取ることができる停止期間 (v) 報告と遵守に関する約束 (vii) CMAがプライバシー・サンドボックス提案とその影響をさらに評価できる持続期間を可能にする、最終約束のための十分な持続期間を有していることによって、全体的な有効性を確保しているものと考えた(5.56-5.62)。
CMA は Google が Privacy Sandbox に関する提案と/あるいは実施措置を発表することは、個別にも/あるいは集合的にも、英国における Web ブラウザの供給市場において支配的と見られる地位の乱用に相当する可能性が高いと懸念していましたが、Google の外部コミュニケーションに関する様々な規定があり、また、公表に CMA と ICO が関与するとなっている(5.63-5.66)。その上に監視管理人(モニタリング・トラスティ)が任命されることによって、有効な遵守が確保されるものと考えました(5.68-5.73)。

6 結論

確約決定においては、最終確約が、競争上の懸念に対処しているものと考える旨、そして、受諾することとして調査を終了することが決定されています。

2 終結後の進展

2.1 監視管理人(モニタリング・トラスティ)が任命

その後、2022年3月23日には、 監視管理人(モニタリング・トラスティ)が任命されています。任命の決定は、これです

決定の趣旨は、確約の一部として、Googleは、競争を歪めない方法でPrivacy Sandboxを実施することを約束していること、具体的には

  • 関連するデータを特定の方法で使用しないこと(パラグラフ25から27)、
  • プライバシー・サンドボックスをGoogle自身の広告製品及びサービスに有利となるように設計、開発、実施しないこと(パラグラフ30から31)、
  • 上記の確約を回避しようとしないこと(パラグラフ33)

を約束しており、CMAは本日(2022年3月23日)、約束の第32項(b)に基づき、約束の上記条項の遵守を監視する監視受託者としてING Bank N.V.をGoogleが任命することを承認しまたことが明らかにされています。

監視受託者の任務としては、以下のものです。

  •  グーグルが上記の規定を遵守していることを監視する。
  •  CMAの承認を得て、確約の下でのING Bankの監視責任をサポートするため、適宜、関連する技術専門家を任命すること。
  •  ING Bankが約束の特定の条項を遵守しているかどうかの評価について、四半期ごとに書面による報告書をCMAに提出する。
  •  確約を確実に遵守するためにグーグルが取るべき必要な手段をグーグルに提案すること。
  •  グーグルが確約の一つ以上の条項を故意、無謀、不注意にかかわらず遵守していないとイングバンクが合理的に疑いを持った場合、CMAに書面で速やかに報告すること。

監視管理人は、他の利害関係者が監視管理人が監督する確約の部分の性質や範囲について質問がある場合、その関係者に働きかける役割も担います。

2.2 グーグルの四半期報告書

グーグルは、2022年5月16日に「プライバシーサンドボックス進捗報告」をなしています。この報告は、CMA に対する確約として、Google は、プライバシー サンドボックスの提案の進捗状況、最新の時期予測、Google が第三者による見解をどのように考慮したかに関する実質的な説明、および CMA と Google との間のやりとりの概要(特に CMA による懸念事項やコメントの記録、当該懸念事項やコメントに対する対処方法など)を CMA に定期的に報告することに合意していることから、その確約の第12項、第17項(c)(ii)および第32項(a)に基づいてなされたものです。

2.2.1 フィードバックにおける一般的なテーマ

具体的な項目としては、

  • プライバシーサンドボックス提案の進捗(Progress of Privacy Sandbox Proposals )
  • 時期についてのアップデート(Updated Timing Expectations)
  • 第三者からの意見についての考慮
  • フィードバックからの一般的なテーマ
  • 関連するコンテンツと広告
  • デジタル広告の測定
  • 秘密追跡の制限
  • クロスサイト・プライバシー境界の強化
  • スパム・不正行為対策

にわけて論じられています。

2.2.2 グーグルとCMAとのやりとり

確約の15パラにおいては、グーグルは、CMAと情報共有を行い、懸念を識別し、それらを迅速に解決する努力をなすことが明らかにさています(パラ17)。CMAは、プライバシーサンドボックス提案について十分な情報を提供されている。具体的には、

  • 公表(アナウンスメント)
  • ユーザエージェントストリングの現象
  • 機能的・効果的テスト
  • グーグル・アドによるテスト

の項目ごとにその努力した点が明らかにされている。

また、グーグルとCMAとの会議についてもふれられるとともに、遵守声明も添付されている。

2.3 監視管理人(モニタリング・トラスティ)の四半期報告書

また、CMAは、監視管理人であるING Bankから、グーグルによるデータの使用(パラグラフ25~27)、非差別(パラグラフ30~31)、(これらの条項に関して)権利侵害防止(パラグラフ33)に関する確約の条項についての遵守に関する現在の評価に関する最初の報告書を受け取っている。報告書は、2022年2月11日から2022年5月16日までの期間を対象としており、ING Bankは、CMAに報告すべき懸念事項を確認していません。

 

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