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「テータ戦略と法律」(改訂版)を献本いただいたので、内閣官房の「データ戦略」タスクフォースをみた上で「データ戦略」という言葉を考えてみた。

中崎隆弁護士・安藤広人弁護士らの「テータ戦略と法律」(改訂版)を献本いだたきました。ありがとうございます。

「データ戦略」という現代社会で非常に難しい問題に正面から向き合ったチャレンジングなプロジェクトがさらに進化しました、というところです。

なんといっても、「データ戦略」という用語は、非常にキャッチーであり、しかも、非常に広く、また、解釈の仕方で、その解釈者の分析の仕方などが現れるのでこの出版企画自体すばらしいものだと思いますし、また、それをさらに短い期間でアップデートするというのは、本当にすばらしいことだと思います。

 

このテーマが如何にキャッチーかということは、内閣官房に「データ戦略」タスクフォースというのができていることからも明らかだろう思います

ちなみに、内閣官房の「データ戦略の策定について」をみています。その意味で、内閣官房でも取り上げられるにいたった「データ戦略」という用語について、そのベースとなる法的な問題点をとりあげて分析した先駆の書という評価ができるかとおもいます。「データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ 」とかもあわせて読むといいのかもしれません。

本の内容に戻ります。取り扱われているテーマとしては、私(高橋郁夫)が編集代表ともなりました「デジタル法務の実務Q&A」とも、それなりに重複するところがあったりします。

「デジタル法務の実務」が、法律実務家の読者を主として念頭においている(たとえば、不正調査とデータについて充実した記載を置いている)のに比較して、より、ビジネス法務系の読者に重点を置いているようにおもえます。特に、中国系の分析が追加されているのは、興味深いものということができるでしょう。

もっとも、実際の企業活動のなかで、データがどのような場面で、どのよう活用されているか、というのについては、なかなか書籍で把握するのが難しいところです。

「データ戦略」という対象の設定がきわめて先見の明があるところ、チャレンジが、成功しているのかというのは、なかなか難しいところです。内閣官房の上のスライドも、「データを活用するベースラインを構築」することにこだわっているために、そもそも活用するって、どのような分野で活用されているのとか、具体的に、どのようにして活用しているのか、というのは、二の次にされているようにおもえます。

この「データ戦略」の分析対象については、「即実践!!電子契約」でも、チャレンジしてみました。「即実践!!電子契約」では、155ページ以降で「データ活用の意義」として分析しましたし、また、「Q18 電子文書の資産としての活用」は、そのような問題意識で記述されています。しかしながら、そもそものテーマが、電子契約であったこともあり、私たちの分析も十分とはいえなかったようにおもえます。

「データ戦略」という以上、

実際の企業において、ここのデータについて仮説を立てて、それを検証し、それをもとに経営戦略を立てる、そして、経営を実践し、その実践結果をデータでもって検証し、さらに戦略を修正するというプロセス

こそが、分析の対象とされなければならないはずです。

果たして、この本で、「データ戦略」という用語を分析できているのか、ということになるのですが、私としては、中崎先生の次の改訂の課題であると評価しています。

そもそも、読者は、raw dataが、どのような仮説のもとで、どのような形で分析されて、その仮説が検証されていくのか、というのをきちんと理解できていないようにおもえます。たとえば、自動車産業を例にとってみたときに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のような各局面での利用の仕方があるはずです(即実践!!電子契約のQ18から)。ユーザのIDを設定して、データをとっていく、そして、それを統計処理をしていく、このような実務作業を理解してのデータ戦略、そして、それとの法律の関わりのようにおもいます。

実務作業といえば、IT法部会のシンポジウムで「データ戦略の課題と未来」(2019年11月27日) において、(2)「戦略的なデータの利活用:最新トレンドと課題」 工藤卓哉(アクセンチュアデジタル Chief Innovation Officer,ARISE analytics 取締役 Chief Science Officer(CSO))の講演があったわけですが、

マーケッティング自体(スマートパス)も、工場の改善(工場パッケージ)も、データが命だった

のが明らかにされているわけです。

工場パッケージにデータを活用するということになれば、セキュリティと安全、IoTなどが問題になるのでしょう。その一方で、マーケッティングの問題になれば、個人データ保護等の問題が正面にでてくるのでしょう。工藤氏スライドの18頁にKPIツリーが出ていますが、これもデータの活用の関わり方です。また、同7頁で、ビジネスの推進の分野と同サポートの分野にデータを活用しうることも描かれています。

「データ戦略と法律のかかわりを分析しなさい」という課題のコンテンダーだったとしたら、まず、データ戦略の実際を一般的なものとして洗い出して、それぞれのところで法律が関わっていく姿を描くのだろうとおもいます。

総論、積極的なデータの利活用、経営管理等とデータの活用、セキュリティ管理・有事対応、データ戦略と関連する法律

という章立てが、上のような実務における関心と、いまひとつ離れているのではないか、法律家の視点での分類なのではないか、というのは、私の感想です。

結局、私としては、「データ戦略」というのを、法律ごとの論点として取り扱うのではなくて、むしろ、企業活動の側面ごとの活動として捉えることができるのではないか、と考えるようになりました。

たとえば、

  • 製品/サービスのデータ戦略
    • 製品自体
    • サービス自体
    • そのリンクするところ
  • マーケッティングのデータ戦略
    • 広告
    • デザイン
    • 商品の価格
    • etc

などにデータの活躍する部分をわけて考察することができるようにおもえます。「データ戦略」についてのアドバイスを求めているのは、経営者であるので、そうだとすると、経営者の思考パターンに従って、分析・アドバイスがなされないといけないかとおもいます。

ここら辺は、課題のこなし方であり、優劣の問題ではないのですが、次の改訂の際に考えていただけるといいかと思います。

 

 

 

 

 

 

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