お電話での問い合わせは03-6805-2586
第一東京弁護士会(一弁)の会報の中で、IT法部会を特集して取り上げていただけるそうです。そこで、いままでのIT法部会のシンポジウムを振り返って置くことにします。
日弁連のコンピュータ委員会のシンポジウム
まずは日弁連のコンピュータ委員会のシンポジウムについて、ふれないといけないかと思います。かつて日弁連には、IT法を研究を主としたテーマとしたコンピュータ委員会というのがありました。コンピュータ委員会では、2002年から、コンピュータシンポジウムを開催してきました。(2002年は、コンピュータデモンストレーション’020)。この歴史は、別のエントリでまとめますが、IT法に関係するものの間では、非常に良く知られたシンポジウムであったということができます。
しかしながら、日弁連の執行部(当時の会長は、宇都宮氏)は、ITに関する法律問題について、専門的に研究する母体としては、情報問題研究会などがあるので、コンピュータ委員会は、不要だとして、2011年に、コンピュータ委員会を廃止します。廃止の際の町村先生のブログとしては、「日弁連コンピュータ委員会の終焉?」があります。町村先生からは
地道な努力を積み重ねてきた友人達の仕事が評価されないでリストラされてしまうという成り行きには、残念な思いを禁じ得ないのだ。
というコメントもいただいたものです。
廃止の後も、実際の社会では、2010年代には、すべての法律問題が、ネットワークのもとでどのように変容するかということ変わっていきました。裁判のIT化も軌道にのってきています。本当であれば、裁判のIT化などに関しても、各弁護士会の情報の集約先になるべき委員会であったし、その能力・機能は、十分であったとおもえるのですが、このコンピュータ委員会の廃止というエピソードは、日弁連の執行部というのが、どれだけ時代をみれないか、ということを如実に語っているかと思います。
業務改革6部会という部会がありまして、高橋もそのメンバーだったのですが、そこでは、弥生会計で弁護士の税務申告を容易にしましょうという活動をしていて、その活動も弁護士画も事務所て、コンピュータを使って種々の業務を行うということが一般化してきてさすがに、当初の目的は達成されつつあるねということになりました。そこで、そもそも、コンピュータ委員会でも2011年に検討のテーマとしていた「デジタル証拠」について、「新マニュアル:デジタル証拠QA事典」という名前で本を出版するのはどうだろうかという話になりました。2013年8月には、夏合宿を開いて、原稿を検討しました。
とはいうもの、なかなか原稿が集まらないところで、(日弁連コンピュータ委員の委員でもあった)梶谷先生が、弁護士の業務改革というテーマよりも、むしろ、より広範なIT法自体の研究というテーマのもとに法務総合研究所のもとにIT法部会をし設立したらいいのではないでしょうかということで、いろいろと準備をしてもらってIT法部会が成立したという経緯になります。
IT法部会は、2014年の5月くらいから、活動を開始しました。その目的は、まずは、デジタル証拠の本を完成・出版することであり、また、法律実務の世界に「デジタル証拠」という概念を広めることでした。デジタル証拠の本は、日本加除出版さんとの調整が、2014年5月くらいから始まり、原稿の督促・編集委員会によるハードな会議を経て、2015年9月に出版されました。
ということで、2014年の活動でもシンポジウムを開催しようということになりました。時期も、コンピュータ委員会のシンポジウムの時期にならって12月ということになりました。(ただし、コンピュータ委員会のシンポは、途中から2月くらいに変更になりました)でもったて第1回のシンポジウムです。
現代社会におけるあらゆる事象はITと密接不可分に結合しています。この状況は、訴訟を初めとする法律実務の場面においても全く変わらず、今や、文書や電子メール、電子的な画像・録音・録画データ等のデジタルデータが、訴訟を含む法律事務全般において、証拠として重要な意味を有するようこなっています。そして、このようなデジタルデータによる証拠(デジタル証拠)を法律実務において適切かつ適確に扱うためには、弁護士白身が、デジタルデータの仕組みとその意味、役割を理解することが必要不可欠です。こうした問題意識の下、総法研IT法研究部会は本年5月に活動を開始し、本年度は「デジタル証拠と法律事務」をテーマに研究を行っています。
今般、IT法研究部会では、これまでの研究成果を踏まえ、eディスカバリ等において世界的にサービスを提供しているエピックシステムズ東京オフィス代表スコット・ウォーレン氏、国内においてフォレンジックやデータ復元等の製品・サービスに実績のあるAOSテクノロジーズの佐々木社長を招き、セミナーを開催いたします。本セミナーは、専門家による最先端の技術の紹介を交え、「デジタル証拠の現在と未来」を掘り下げて検討するという大変貴重な機会ですので、ご案内申し上げます。奮ってご参加下さい。
というのが、企画の趣旨でした。プログラムですが、
平成26年12月11囗(本)午後1時30分から午後5時(受付開始:午後1時) 弁護士会館12階 第一東京弁護土会講堂
講演①「近時の話題の事件とデジタル証拠」(岡徹哉弁護士:IT法研究部会部会員)
講演②「デジタルデータとデータ復元」(佐々木隆仁氏:AOSテクノロジーズ社長)
講演③「民事訴訟法とデジタル証拠」 (島崎政虎弁護士:IT法研究部会部会員)
講演④「デジタル証拠と未来」(スコット・ウォーレン氏:エピックシステムズ
東京オフィス代表・カルフォルニア州弁護士)(英語・同時通訳あり)
パネルディスカッション 「デジタル証拠時代の新法律実務」
司会:高橋郁夫(IT法研究部会部会長) パネリスト:上記の各講師
ということで、第一回から、英語でのプレゼン付 しかもその通訳が、米山委員(後の新潟県知事)という最初からぶっ飛んだものでした。
ということで、我が国では、日本年金機構に対する組織的な攻撃が、話題になった年です。そこで、この年は、「情報セキュリティ事件の近時の動向~政策・マネジメント・法的分析~」というタイトルで、シンポジウムを組んでみました。
なお、2015年からは、鈴木誠先生の尽力もありまして、日弁連法務研究財団 & 第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会 共催セミナーという形になります。
IT法のもつ重要性に鑑みた場合に、理想としては、各弁護士会にiT法の研究部会が設立されて、連合会のなかで、IT法部会が構築されるべき(要は、コンピュータ委員会の再結成)かと思っておるのですが、まずは、日弁連法務研究財団と一緒に活動しましょうということになりました。鈴木先生、法務研究財団さん、本当にありがとうございます。(なお、最初は、2016年からとしていたのですか、2015年からとのことです。吉峯先生ご指摘ありがとうございます。)
平成27年6月に公になった日本年金機構の情報漏えい事件は、今年の大きなニュースとして大変に注目を浴び、マイナンバー制度や個人情報保護法制等の動向にも大きな影響を与えています。また、近時、情報セキュリティに関連する事件として、大手通信教育会社情報漏えい事件、米国映画会社への大規模攻撃事件などが、社会的な大きな注目を浴びています。インターネットの普及した社会の中で、実務者、法曹にとって、情報漏えい対策についての知識は、不可欠です。
本シンポジウムは,公益財団法人日弁連法務研究財団と第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会との共催により,こうした近時の情報セキュリティ事件の要点を整理するとともに、「情報セキュリティ事件の近時の動向」というテーマで、官庁、情報セキュリティのコンサルタント、法律家の観点から、わかりやすく解説していただくものです。
奮ってご参加いただきたく,よろしくお願い申し上げます。
というものでした。
プログラムは、
1 日 時 平成27年12月14日(月) 午後1時30分~午後5時(開場 午後1時00分)
2.場 所 弁護士会館 クレオA
3.構 成
(1) 近時の情報セキュリティ事件のケーススタディ
・大手通信教育会社情報漏えい事件:小野章子(総法研IT法研究部会 部会員)
・米国映画会社への大規模攻撃事件:安藤広人( 〃 )
・日本年金機構の情報漏えい事件 :米山隆一( 〃 )
(2) 法的見地からみた近時の情報セキュリティ事件
高橋郁夫(総法研IT法研究部会 部会長)
(3) 「標的型攻撃を想定した対策のあり方」
佐藤 慶浩氏(日本HP株式会社チーフ・プライバシー・オフィサー)
(4) 「年金機構情報流出事案を踏まえたサイバーセキュリティ政策について」
内閣官房 内閣サイバーセキュリティセンター 内閣参事官 三角育生4. パネルディスカッション
司会 吉峯耕平(総法研IT法研究部会 部会長)
でもって、2016年のテーマは、デジタル証拠の最前線 不祥事調査/Apple v. FBI/パナマ文書(2016)です。
情報が高度にデジタル化された今日の社会では、企業はデジタルデータを日常的に入手・処理・保管しており、有事には、膨大なデジタル証拠を目の前にすることになります。適切に事実を把握するためには、デジタル証拠の処理・選別を効率的に行うことが必須であり、多大な費用がかかるだけでなく、その巧拙が企業の死活をも決することもあります。
「デジタルデータの濁流」を目の前にして、弁護士はどのように振る舞うべきでしょうか。
法律家だけではなく、公認会計士、技術者等の専門家にも登壇いただき、最新の動向を紹介しながら、法律・制度・技術が交錯する「デジタル証拠法の応用領域」を探ります
というのが、企画の趣旨になります。コーディネイターは、吉峯弁護士です。プログラムは、
①近時のサイバー判例解説 町村泰貴/北海道大学大学院法学研究科教授
②携帯データ復元の最前線とパナマ文書の解析 重政孝/弁護士・AOSリーガルテック
③Apple v. FBIの法律問題と日本法への示唆 鈴木誠/弁護士・日弁連法務研究財団
④第三者委員会報告書にみるフォレンジック調査 原田學植/弁護士・IT法部会部会員
⑤第三者委員会からみたフォレンジック調査の勘所 中野竹司/弁護士・公認会計士
⑥パネルディスカッション
②~⑤講師 ⊕ 荒張健/新日本有限責任監査法人 FIDS(不正対策・係争サポート)シニアパートナー
コーディネーター 吉峯耕平/弁護士・IT法研究部会副部会長
です。ちなみにチラシは、こんな感じです。
人工知能が法務を変える?(2017)
世の中が、シンギュラリティが将来到来するのかどうかというのにかまびすしかったことろ、IT法部会のシンポジウムは、人工知能技術が法務に与える影響を見ることにしました。
シンギュラリティ(人工知能の集積が人類の知能を凌駕し、加速度的に増加する状態)が、近い将来に到来するのではないかといわれています。
このような状況の下、法律実務がどのように将来変化していくのかという予測をすることは、今後のあるべき弁護士の姿を考えるにあたって
きわめて重要なものと考えられます。
本シンポジウムにおいては、人工知能技術の現在の到達点、現在における法律実務への応用例、今起こりつつある変化、今後の姿などを総合的に検討しようとするものです。
プログラムは、
現在の人工知能技術の到達点 (畠山 大有日本マイクロソフト株式会社プリンシパル・ソフトウェア・デベロップメント・エンジニア)
AIテクノロジー活用による実務効率化 (グリーンウッド・トレイシー日本カタリスト合同会社 ビジネスディベロップメント・マネージャー米国ミシガン州弁護士)
チャットボットによる法律相談支援 (高橋郁夫弁護士 )
人工知能の今後の実務への影響 (メテ・ヤズジ レクシスネクシス・ジャパン株式会社テクノロジー&コンテンツ・ソリューション部ダイレクター)
人工知能の法律実務の法的問題点 (斎藤 綾弁護士)
パネル・ディスカッション
です。リーガルテックが流行するはるか前から、その最先端の問題を取り扱っていたということになるようにおもえます。
2018年のテーマは、仮想通貨でした。
趣旨は、
ブロックチェーン技術をベースにしたビットコインをはじめとして、決済や金融が、急速に様変わりをしています。ビットコインは、国境を越えた決済を可能にするとともに、金融商品としても、その変動率の高さから一般からの注目をも引きつけています。また、キャッシュレス決済の発展は、新しい信用評価の仕組みとも相まって、社会の仕組みまでを変えるインパクトをもっています。その一方で、ダークウエブでは、ビットコインを悪用した資金洗浄や犯罪支援などがなされています。仮想通貨交換業者に対するセキュリティ侵害事件、詐欺的なICO(イニシャルコイン・オファリング)、交換業者の破綻事件では、民事再生申立が認可され、仮想通貨に対する差押の困難性などが、新聞を賑わしていますわが国における第一人者の招待講演とIT法部会のメンバによる研究発表を提供することにより。これらの話題を総合的に検討することが本シンポジウムの趣旨です。
ということで、プログラムは、
日時 12月3日 午後1時30分から5時まで
プログラム
(1) キャッシュレス決済の今と将来-ブロックチェーン(岡田仁志)1335―1415
(2)ダークウエブで何が行われているか(松本隆)1415-1500
(3)仮想通貨まわりの法律問題 1515-
資金決済法・犯罪収益移転防止法の仮想通貨に関する規制概要とICO(中崎) 1515-1540
コインチェック事件の法律問題(星) 1540-1600
Mt.Gox事件の総合的考察 (西山) 1600-1630
仮想通貨の執行法上の問題/ハードフォークの問題 (高井)1630-1700
でした。
データ戦略の課題と未来(2019)
2019念は、中崎先生のコーディネイトで、「データ戦略の課題と未来」でした。
データを活用する際には、法令等のルールや、自社の契約等に基づく利用制限等の把握も重要です。金 融庁も強調しているように、事業戦略と、コンプライアンス戦略等は、表裏一体です。また、グループ会 社横断、部門横断での取組みが重要となり、海外法等も重要となります。欧米のトップ企業では、1000 人近くの社内弁護士を抱え、法務・コンプライアンスだけでなく、事業戦略、営業、システム等の分野で も、法務的な知見を活用して、一体の事業戦略を推進していると聞きます。
第一東京弁護士会・総合法律研究所・IT法研究部会では、様々な専門家の方にヒアリングする等して、 「データ戦略と法律」について研究してきました(その成果は、中崎隆ほか編『データ戦略と法律』(日 経BP社、2018)に反映されています。)。今回は、テーマを広げ、法務分野以外の分野も含め、最先 端で活躍なさる専門家の方々をお招きし、「データ戦略の課題と未来」について、探求いたします。
プログラムは、
Introduction
「データ戦略と法務・コンプライアンス戦略の一体性/体制強化策」 中崎隆IT法部会会員/中崎・佐藤法律事務所代表弁護士
①「戦略的なデータの利活用:最新トレンドと課題」工藤卓哉アクセンチュアデジタルChiefInnovationOfficer ARISE analytics 取締役Chief Science Officer(CSO)
②「データ戦略と仕組み作り」別所直哉紀尾井町戦略研究所株式会社理事長 ヤフー株式会社シニアアドバイザー
③「データ戦略のためのITシステム -IoTとはデータ戦略である―」松本泰セコム株式会社IS研究所マネージャー
④「データ戦略と法務における取組み」舟山聡日本マイクロソフト政策渉外・法務副本部長弁護士
⑤パネルディスカッション
でした。チラシのイメージは、こちら。
Covid-19で従来のシンポジウム形式は、2020年には、オンラインセミナーという形式に移行せざるをえませんでした。2020年には、「電子契約の過去・現在・未来-書面・押印・対面の見直しのための技術と法」と題して
新型コロナウイルス対応を契機として「書面規制、押印、対面規制」について、見直しに向けた考え方の議論が本格化するに至り、政府と経済4団体による「「書面、押印、対面」を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言~デシタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~」が発表されています。
ビジネス様式をデジタルベースに再構築するためには、なりすまし・改竄が容易であるというデジタルの性格に対応した技術的対応が必要になります。本シンポジウムでは、そのための技術として電子契約プラットフォームに注目することとして、現在提供されている電子契約プラットフォームのサービスとその性質を正確に把握することを前提とします。そして、電子署名法の制定過程、押印の法的意義と電子契約、今後における電子署名法の動向などの観点をも総合的に踏まえることにより電子契約の将来を見つめようというのが本シンポジウムの目標です。
というのが企画の趣旨でした。
プログラムは、
プログラム(予定)
①電子契約サービスの現状とそれを支えるトラスト基盤について
山内 徹(一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)常務理事)
②電子契約プラットフォームの導入の導入検討のポイント
丸山修平弁護士(東京海上日動火災保険株式会社IT企画部・IT法部会)
③押印の法的意義と電子契約
伊藤蔵人弁護士(ベリーベスト法律事務所・IT法部会)
④「書面、押印、対面」の見直しと電子署名
永田 充弁護士(野中・瓦林法律事務所・IT法部会)
⑤電子署名法の課題と未来 ―Society5.0時代を支えるトラスト技術と電子署名法
松本 泰(セコム(株)IS研究所)
⑥パネルディスカッション
司会 高橋郁夫弁護士(駒澤綜合法律事務所・IT法部会)
というものでした。
2021年は、今のところハイブリッドで開催する方向で議論しています。テーマは、種々の興味深い事件をおさらいするという予定です。お楽しみに。
あと、司会は、内田朱美アナにお願いしておりました。また、オンサイトでご一緒したいですね。