ネットワーク中立性講義 その4 米国の議論(2014年まで)

2009年民主党オバマ政権に移行してから、FCCは、中立性規制の導入について諮問を開始していました。

この点についての参考文献は、東條吉純「米国連邦通信委員会によるネットワーク中立性規則-差別行為の規範的分類の試み-」になります。

2009年10月22日には、オープンインターネット規則制定案告示(以下,「2009 年NPRM」という)が公表されています。

この制定案では、2005 年政策声明の4原則のルール化に加えて,非差別的取扱い義務と透明性(情報開示)義務の2のルールが追加され,計6のルールが提案されています。

2010年4月のComcast控訴審判決で規制権限に関する判断がなされ、FCCは、そのような権限がないとされました。なお、Comcast控訴審判決については、実積 寿也「オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響
An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order」もご参照ください(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/32/1/32_1/_pdf)。

FCCは、2010年に入り、「第三の道」を提案し、6月17日、当該考え等を提案する「ブロードバンド・インターネット・サービスのための枠組みに関する調査の告示」を公表しています。(オリジナルは、リンク切れ?)

この枠組みは、ブロードバンドインターネットサービスについて(1)タイトル1の付随的権能として情報サービスとして継続して規制(2)タイトル2の電気通信サービスとして規制という従来の議論にくわえて(3)タイトル2の元で、電気通信サービスとして分類した上で、規制を差し控える という手法が提案されています。しかしながら、この提案は、2010年の中間選挙で、オバマ政権が大敗したこともあって、実際に政策されることはありませんでした。

2010年12月21日には、オープンインターネットオーダー(Open Internet Order)が公表されました。命令本文は、こちら。説明用スライドは、こちら

2010年オープンインターネット命令は、とりわけ、電気通信法の第706条に基づいて新たに主張された規制権限にもとづいています。

FCCは、この命令は、以下の原則と合理的なネットワーク管理の原則とあいまって、消費者およびイノベータを保護し、力をあたえるものであると考えています。

原則としいうのは、具体的には

(1)透明性原則
ブロードバンドインターネットアクセスサービスプロバイダは「ブロードバンドインターネットアクセスサービスのネットワーク管理の実践、業績、商業上の条件について正確な情報を公に開示する」義務がある

(2)ブロッキングなしルール
プロバイダは,合理的ネットワーク管理の名の下に、適法なコンテンツ、アプリケーション、サービスの利用、あるいは、ネットワークに障害を及ぼさない端末の接続を拒否してはならない

(3)非合理的差別の禁止ルール
プロバイダは,適法なネットワークトラフィックの伝送について不当な差別を行ってはならないというものである(この場合、合理的ネットワークの管理は不当な差別には該当しない)

になります。

これに対して、Verizon社は、2011年1月に、FCCの「Open Internet Order」は与えられた権限を越えたものであり、企業の権利を侵害しているとして裁判を起こしました。
そして、この裁判で、2014年1月には、連邦控訴裁判所が、上記原則のうち、透明性ルールについては、FCCが、そのような規制をするルールを有しているものの、ブロッキングなしルール、および非合理的差別の禁止ルールについては、規制する権限を有していないという判断をなしています
具体的には、「1996年の電気通信法第706条は、FCCに、ブロードバンドインフラの積極的な配備を促す措置を制定する権限をあたえている。FCCは、706条を合理的に解釈して、ブロードバンドプロバイダーが、インターネットトラフィックを扱いを規定する規則、特定のルールを制定する権限をあたえると解する理由があり、証拠によって支持される。それは、仮にこの分野に一般的な権限を有しているとしても、制定法の義務規定に矛盾する規定を設ける要求を課することはできない。FCCが、ブロードバンドプロバイダをコモンキャリアとしての取扱を排除する以上、通信法は、明確に、FCCに対して、そのようなものとして規制することは認めていない」
としました。
従って、ブロッキングなしルール、および非合理的差別の禁止ルールについては、効力を有しないとしたわけです。

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