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前のエントリで、現在、ネットワーク中立性が議論されている市場の関係を図示したところです。
では、この市場の関係が、どのような問題を生みうるのか、ということを考えてみる必要があります。
ところで、市場というのを、どのように画定するのか、というのが一大問題であるのは、「アップル信者の存在の科学的証明?」とか、市場の画定の部分で触れました。
インターネット接続の市場というのが、あるというよりも、固定インターネット接続市場とモバイルインターネット接続市場とにわけて考えられるとおもわれます。理屈的には、需要代替性を優先してみるので、需要者からみて、固定は、速いし、パケット量の制限も考えないで済むけど、一方、モバイル接続も、家の外にスマホをもっていっているときには、スマホでのモバイル接続するよね、ということになるかとおもいます。家の場所でのインターネット接続にモバイルインターネット接続が代替的に利用されているかというと、特に、パケット量の制限がある以上、別個の製品として認識されていると考えられます。
ということで、固定インターネット接続市場を考えていくと、この点については、実績先生のアメリカとの比較のスライドが、わかりやすいかとおもいます。(「日本のインターネット政策と ネット中立性」42頁)
物理的なアクセス回線・ブロードバンドアクセスサービス・インターネット接続サービスについて考えると、いわゆる足回りであるNTT東西自体が、個別・具体的なインターネット接続サービスを提供することができない仕組みになっています。固定に関するISPについては、ブロードバンドアクセスサービスの保有者が、その市場における地位を排除的に濫用するというのが制度的にできないということになっているわけです。
一方、モバイルインターネット接続市場についていえば、現実には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、それぞれ、相当なシェアを有しています。一方、契約数による場合には、MVNOのシェアは、5パーセントとされています。モバイルインターネット市場については、上記電気通信事業者は、ISP機能をみずから所有することができます。
また、モバイルインターネット接続市場の上には、検索・SNS・ショッピング・映像・音楽・ゲーム・地図情報などなどの種々のアプリによって発展する個々のアプリ市場が存在すると認識することができます。
実績先生の「メディアとしてのブロードバンド産業の分析:構造変化とコンテンツ振興政策への含意」によると、ファシリティプロバイダ、サービスプロバイダ、コンテンツディストリビューター、コンテンツプロバイダという各プレーヤーが、今後、次第に垂直的に統合されるようになっていくことが示唆されています(以下の図は、同論文のページより)。
そうだとすると、モバイルブロードバンド接続プロバイダーが、その地位を利用して、他の市場における競争相手を排除しうるのではないか、という論点がでてくることになります。この点については、次のエントリで検討することにしましょう。