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ネットワーク中立性講義 その2 エンド・ツー・エンド原則と議論の契機

エンド・ツー・エンド原則

インターネットにおいて、電気通信に関する一般的な認識として、E2E原則があります。

これは、ISPは、土管であるとして、利用者から利用者に対する通信について、なんらの変更をなすこともなく、そのまま伝えなければならないという考え方です。
その1で紹介した定義におけるネットワーク中立性も、同様の文脈で語られることになります。

もっとも、具体的に、どのような内容がはいってくるか、という点については、厳密な議論があるわけではありません。網羅的な議論をみていく(C.T.Marsden ” Net Neutrality Towards a Co-Regulatory Solution ”)ときには、①コンテンツによる区別的取扱 ②接続サービスと公平な競争 ③サービスの質と超過価格 ④利用者の権利とテイクダウン、責任の問題 ⑤利用と対価の公平性 などの問題が、ネットワーク中立性の概念のもとに議論されているのがわかります。
(ちなみに、Marsden先生は、前にインタビューしたときにサインをいただきました。)

では、これらの事案は、具体的には、どのようなものであり、どのような観点から議論がなされているのでしょうか。わが国においては、電気通信事業法において、通信の秘密(「秘密の保護」)(電気通信事業法4条)、利用の公平(同6条)が準備されており、上の論点については、それらでカバーされる範囲も相当ありそうに思えます。
また、実際に起こりうる問題を考えるときに、他に適用される規定はないのか、ということを考えることも必要でしょう。

そうだとすると、諸外国で議論されている事案にどのようなものがあるのか、というのを洗い出す作業が出来さえすれば、それに対応するわが国の態度が客観的に見えてくることになります。すなわち、諸外国の議論を分析することが、ネットワーク中立性の議論のアルファかつオメガになりうるのです。

歴史的契機

具体的には、1999年などから、ISPによるコンテンツに対する区別は議論されてきました。

ネットワーク中立性という用語のもとに議論されるようになったきっかけは、Tim Wu教授が、2003年の「Network Neutrality, Broadband Discrimination 」という論文で、ネットワーク中立性の概念を提案したことによります。

この論文では、アプリケーション間の中立性、データおよびQoSが要求されるトラフィックに関する中立性を検討し、これらの潜在的課題に対処する立法を提案しています。また、学問的な分析もなされています。

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