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このごろ、ネットワーク中立性という用語を聞くようになっています。G7、G20、OECD、APECといった多国間の枠組みや、TPP等のFTA/EPA(電子商取引章)の枠組み、WTOなどを通じて、グローバルに議論されるようになってきています。
ネットワークの中立性とは、「インターネット接続業者等が、特定のコンテンツやアプリケーション等を差別・区別することなく、インターネット上の全てのデータを平等に扱うことで、全ての者がインターネットを公平に利用できるようにするべきだとする考え方」と定義することができるでしょう。もっとも、ネットワーク中立性の概念は、論者によって、その含む範囲が異なります。また、視点もネットワークを利用する権利という観点からアプローチするものから公平な競争という観点からアプローチするまで種々のものがあります。
また、諸外国で、ネットワーク中立性の概念で論じられている内容の相当部分が、わが国においては、通信の秘密や利用の公平の概念のなかで論じられているという事象も存在しています。
上述のように多国間の枠組み及びWTO等におけるネットワークの中立性の議論のなかでは、我が国の立場を正確に位置づけようとする必要が出てるのかと思います。しかしながら、どうも、専門的な議論のはずが、評論家的な立場からの議論が表に出てくる可能性があるかと思います。
専門的な立場から、単なる表面的な文言のみではなくその背景の法理論・実務と関連づけて深く検討して、客観的に分析する必要があるにもかかわらず、真のシンテリジェンスが提供されないのは、わが国の悲しい現実であるということがいえるでしょう。
また、電気通信市場においては昨今、MVNO や光回線卸などの業態が進展し、複数の通信サービスやその他のサービス・製品とのバンドルによるサービスの多様化が進んでいます。このようなサービスの多様化などのなかで、通信サービスの提供者が、特定のコンテンツやアプリケーション等の通信料を無料とするサービス(ゼロ・レーティング)を提供することをこころみようとしています。
わが国においても、株式会社LINEがLINEモバイルを提供しており、そのゼロ・レーティングである「カウントフリー」機能が大きな特徴となっており、議論を呼んでいます。
このような取扱が、「ネットワーク中立性の概念」に抵触することになるのか、また、それ以外の根拠などから、許容すべきかどうか、という点が議論になってきています。
「ゼロレーティング」はどうすれば実現できるのか――IIJ佐々木氏が語った課題と今後
とか
「ゼロレーティングを支える技術とローカルレギュレーション」
がでています。
これらに対して、既存のサービスの市場力を利用した通信サービスの提供という観点も含めて、冷静かつ客観的な法的な議論を試みたいと考えています。