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修理市場における公正?-NY州の「公正な修理法」が上院通過

「ニューヨーク州上院議会が修理する権利法案を可決。米国で可決された最初の例に 最終結論は2022年に持ち越しの様子」という記事がでています。そういえば、ブログラムのリバースエンジニアリングの研究の時に、修理する権利という用語がでてきていたなあということで、上院を通過したにすぎないわけですが、ちょっとみてみましょう。

the digital fair repair act(デジタル公正修理法)が原文になります。

S4104 (ACTIVE) SUMMARY

デジタル電子機器の販売に関するもので、相手先商標製品メーカーに診断・修理情報の提供を義務付ける。

S4104 (ACTIVE) SPONSOR MEMO 法案番号:S4104 SPONSOR:BRESLIN

法案のタイトル:デジタル電子機器の販売と診断・修理情報の提供に関連して、一般事業法を改正する法律 法案の目的または概要:本法案は、OEM(オリジナル機器製造者)メーカーに対し、デジタル電子部品や機器の診断・修理情報がOEM認定の修理業者にも提供されている場合には、独立した修理業者や消費者にも提供することを義務付けるものである。各条文の規定の概要は以下の通りです。

第1条

タイトルは「Digital Fair Repair Act」である。

第2条

General Business Lawの§399-nnを新たに追加する。

1. 定義

2.  オリジナル機器製造者は、診断、メンテナンス、修理のために、独立した修理業者、またはオリジナル機器製造者が製造した、またはオリジナル機器製造者に代わって販売したデジタル電子機器の所有者に対して、情報や組み込みソフトウェアの更新を含む文書、部品、ツールを、公正かつ合理的な条件で提供することを求める。本項のいかなる規定も、オリジナル機器製造者が部品を入手できなくなった場合に、その部品を入手できるようにすることをオリジナル機器製造者に要求するものではありません。 電子的なセキュリティロックまたはその他のセキュリティ関連の機能を含む機器については、オリジナル機器製造者は、機器の診断、保守または修理の過程で無効になったロックまたは機能をリセットするために必要な特別な文書、ツールおよび部品を、公正かつ合理的な条件で、所有者および独立した修理業者に提供しなければならない。このような文書、ツール、および部品は、適切なセキュア・リリース・システムを通じて入手することができます。

3. オリジナル機器製造者は、所有者や独立したサービスプロバイダーに企業秘密を開示する必要はありません。オリジナル機器製造者と認定修理業者との間の取り決めの条件を変更しないこと。医療機器のOEMに対して、連邦法で認められていない条項への準拠を要求しないこと。

4.  自動車メーカー、自動車機器メーカー、自動車ディーラー、医療機器、医療現場で使用されるデジタル電子製品や内蔵ソフトウェアは対象外とする。

5. 司法長官による執行を規定する。民事上の罰則は、1回の違反につき500ドルまでとする。

第3条

適用範囲 本法は、本法の発効日以降に販売または使用される機器に適用される。

第4条

発効日。本法は、法律として成立した後、120日目に発効する。

妥当性

本法案は、デジタル電子機器メーカーの独占的な慣行から消費者を保護する。本法案は、メーカーに対し、非企業秘密の診断・修理情報を第三者の修理業者に販売することを義務付けるものである。メーカーが情報を公開しないこと以外に、第三者の修理業者がデジタル修理を完了する技術的能力を持つことを妨げるものはありません。 多くの場合、デジタル機器の修理はメーカーによって意図的に制限されています。メーカーは、消費者に対して、自社の修理部門またはメーカーが認定した修理業者を通じてのみ修理サービスを受けるように支払いを要求します。このようなメーカーによる行為は、本質的にこれらの修理サービスの独占を生み出します。 このような限定された正規ルートにより、修理価格の高騰、地方でのサービスの低下やサービスの欠如、電子製品の不必要に高い離職率などが発生します。 また、壊れた電子機器を手頃な価格で修理できないことにより、大量の電子機器廃棄物が発生することも懸念されます。デジタル修理業界における競争の欠如は、消費者、企業、政府機関に高いコストをもたらし、中古機器市場を制限し、耐用年数が残っている機器を早期に廃棄する結果となっています。本法案は、デジタル修理市場に競争の機会を与え、消費者、企業、環境にあらゆる恩恵を与えるものである。

条文自体は、こちらです。ここで、条文をみていくと

(e) 部品、工具、文書を入手するための「公正かつ合理的な条件」とは、元の機器製造者が認定修理業者に提供しているものと同等のコストと条件(配送の利便性、使用権を含む)で、認定修理業者が元の機器製造者から同等の部品、工具、文書を入手する際に発生する正味のコストを用いて、実際の正味のコストを算出する際に割引、リベート、その他のインセンティブプログラムを考慮することを意味する。ただし、ドキュメントが物理的に印刷された形で要求された場合には、コピーを作成して送付するための合理的な実費分の料金が含まれる場合があります。

となっています。ちょっと図示してみます。

 

 

 

 

 

 

 

そうすると、消費者にとって、商品A を購入するのか、商品Bを購入するのか、という商品Cの市場があるとします。商品Aは、修理まで考えて、エコシステムを作っていて、認定修理業者のみでの修理、一方、商品Bは、そのようなエコシステムを作らずに一般の修理業者に商品を流しているとします。

この法律は、業者Aのようなやり方を認めないということになります。再販売価格維持についての議論と同様の利害関係が認められるような気がします。

この論点については、当社は、平成26年に経済産業省「消費インテリジェンスと競争法の垂直的制限規制に関する調査研究報告書」に協力したことがあります。(報告書 未公表)

この調査は、米国における再販売価格維持(Retail Price Maintenance)の違法性判断については、従来、当然違法とするドクターマイルズ事件判決が、2007年に合理の原則を適用するというリージン判決によって判例変更がなされたのを契機として、なされたものです。

理屈からいくと、ブランド間競争についてみていけば、このようなエコシステムを築いて、高級品のイメージその他を維持するというのは、そのひとつの戦略なので、そのような戦略を認めないというような法律の定めの合理性はどうなのか、ということになっていきそうです。

要は、この記事は、上院を通過したということについでき記事ですので、今後の議論、州知事の判断などが影響を及ぼしてくることになります。今後の動向がおもしろそうです。

 

 

 

 

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