ドキュメントレビューと法律事務(practice of law)

ドキュメントレビュー業務が、法律事務に該当するのか、いわゆるディスカバリ・ベンダがレビューアーを雇用して、レビュー業務に従事させるのが、この無許可の法律事務の禁止の規定に該当するのか、というのが、一つの法的な論点になります。

この論点について、わが国の実務においてのほうが、法律事務の禁止の規定との関係で、問題を含んでいるのではないかということもありますが、それは、さておき、米国において、興味深い二つの裁判例を紹介することにします。

契約弁護士(contract attorney、「請負の」というニュアンスも含みますが、翻訳の便宜としてご容赦ください)の超過手当の支払義務に関して、二つの判決がなされており、興味深い判断が示されています。

二つの判決とは、Lola v. Skadden, Arps, Slate, Meaghu & Flom(2015 U.S. App. LEXIS 12755 (2d Cir. July 23, 2015、以下、Lola事件といいます)とHenig v. Quinn Emanuel Urquhart & Sulltvan(2015 U.S. Dist. LEXIS 172823, at *20 (S.D.N.Y. Dec. 30, 2015、Henig事件といいます)事件です。この前提として、米国において、公正労働基準法(Fair Labor Standards Act (“FLSA”))は、週40時間を越える勤務をなした場合に、割増賃金の支払を求めています。これは、我が国におけるものと同様です。

しかしながら、同法は、”専門職(learned professional)” 例外があって、被傭者が、専門的な知識(advanced knowledge)を必要とする仕事に従事すること、専門的な知識は、科学もしくは知識の分野であること、専門的な知識は、知的な指示をうける課程において習得されることであること、を満たした場合には、この規定の適用が除外されるとしています。

Lola事件において、原告は、North Carolinaの資格をもつ契約弁護士で、ベンダを通じて、被告の事務所(以下、Skadden 事務所という)と1時間25ドルでレビューをする契約をなしました。原告によるとその仕事は、予め決まっていた用語を探して、それを見つけるとボタンをクリックするものでした。原告は、週に45-55時間働きましいたが、週40時間を越えた場合に払わないとされる超過手当分についての支払がなされませんでした。そこで、原告は、この仕事は、法律の要素を欠くとして、超過手当分の支払を求めました。

地裁(New York州南部地区裁判所)は、まず、「法律事務」の定義は、主として、州の関心であるとして、原告が、ノースカロライナ州に居住していることからノースカロライナ州が適用されるとしました。そして、そのもとでは、ドキュメントレビューは、法律事務の中心的な業務に該当するのであって、「法律サポートサービス」の一つであるとしました。

が、第2巡回控訴裁判所は、法律事務は、いくらかでも独立した法的判断の行使を少なくても必要とするのであって、この場合のLola弁護士の業務は、定型的な判断をなすものであって、法的な判断をなすものではないとしました。裁判所は、「完全に機械によって遂行可能であるものは、その業務をなすことは、法律事務をなすものとはいえない」として、地裁の判断を覆し、地裁へと差し戻しをなしました。

Henig事件も同様の事件で、Quinn Emanuel 事務所に対して超過時間手当を請求したという事案です。

原告は、法律業務派遣事務所を通じて、1時間35ドルでドキュメントレビューするように雇用されました。原告は、13,000ドキュメントをレビューし、週あたり、57から60 時間働いたが、時間あたりのレートの支払がなされたのみで、(40時間)超過分の手当は、支払われませんでした。

この事件において、New York州南部地区裁判所は、「訴訟においては、数百万とはいわないでも数千のドキュメントをレビューしなくてはならず、関連性と非開示特権の有無を法的判断を用いて分析しなければならない。」として、法的事務であるとして原告の訴えを認めませんでした。(法律事務だとして、専門職の例外の適用を認めた)

判事は、具体的には、「彼の仕事は、指示書による文言に従う心理的活動なしの業務をこえるものである。特に、原告が、考察し、特定のドキュメントに対して「キー」タグを付する行為(注・ドキュメントの重要性のもとで、看過できないものであると注意を喚起するタグ付け)は、非開示特権が認められうるドキュメントに対して、コメントをなしうる行為と同様に、ドキュメントレビュープロジェクトにおける原告の活動は、法律事務における専門家としての判断を含んでいることを明らかにしている」と述べました。判事は、上述のLola事件と区別して、New YorkとNorth Carolinにおいては、法律事務についての定義が異なっており、また、 Lola事件では、弁護士からの指示の厳しい制約のもとで働いていたのに対して、Henig事件においては、いくらかの法的判断をなしていた点で異なっていることが判断の差異をもたらすものとしました。

結局、この問題は、適用される州法の定めと具体的にレビューアーのなす業務との関係で、法律事務が判断されているといえます。

わが国においては、ベンダーによるワンストップサービスとして、法的資格を有しないレビューアーによるレビューが行われているようですが、業務内容によっては、米国で、法律事務に反するという判断を受けかねないということがいえるものと考えられます。非専門家によるレビューについては、法的専門教育を受けていないもの(派遣会社からの従業員)については、非開示特権判断、重要性についてコメントをつける行為(判断行為)を禁止するような行為ガイドラインが必要なように思えます。専門教育を受けているもの(ロースクール生)についても、その判断を詳細に縛るプロトコルの作成がなされていない限り許容されないものとすべきに思えます。そして、いうまでもなく、このようなプロトコルの作成は、資格を有する弁護士の仕事以外の何ものでもないのです。

デジタル証拠関係は、駒澤綜合法律事務所で扱います。

今まで、デジタル証拠関係の論文・研究等については、株式会社ITリサーチ・アートで取り扱っておりましたが、単なる学術的な研究というよりも、実際の事案に基づいて考察/取扱/処理をするということが求められるようになってきました。

私たちが、実際に扱うドキュメントレビュー業務等については、レビュープロトコルの作成/解釈/その洗練などを果たすことも多いのですが、この業務の多くは、弁護士の業務としての法律事務と考えられます。この点は、米国の判決例について考察しています

これらの観点から、デジタル証拠関係の検討は、駒澤綜合法律事務所のコンテンツに移動させることとしました。