シンポジウム 「人工知能が法務を変える?」で高橋郁夫が講演します。

日弁連法務研究財団と第一東京弁護士会IT法研究部会が、共同で開催いたします「人工知能が法務を変える?」で高橋郁夫が講演します。

人工知能についていえば、具体的にどのような技術であるのかを究めないで、漠然としたイメージだけで議論が先行しているところ、具体的な技術を特定し、その技術がどのように発展をしていくのか、さらに、法律実務にどのような影響を与えるのか、という観点からの議論というのは、いままでなかったものといえるでしょう。

それを、Microsoft Azurek Cognitive サービスのデモがみれて、Predictive codingの話がきけて、判例検索等の将来まで、見渡すという企画を、所長の高橋郁夫が、オーガナイズしました。
具体的には、

日 時 2017年11月29日(水)13:00~16:00
場 所 弁護士会館2階 クレオA
アクセス http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/map.html
テーマ 「人工知能が法務を変える?」
プログラム(予定)
1 現在の人工知能技術の到達点
日本マイクロソフト株式会社
プリンシパル ソフトウェア デベロップメント エンジニア  畠山大有
2 AIテクノロジー活用による実務効率化
日本カタリスト合同会社 ビジネスディベロップメント・マネージャー
米国ミシガン州弁護士 グリーンウッド・トレイシー
3 チャットボットによる法律相談支援
弁護士 高橋郁夫
4 人口知能の今後の実務への影響
レクシスネクシス・ジャパン株式会社 ディレクター メテ・ヤズジ
5 人工知能の法律実務の法的問題点
弁護士 斎藤 綾
6 パネル・ディスカッション

となっています。申込は、法務研究財団ホームページから。

(10月13日追記)

なお、格好いいポスターができました。みなさまよろしくお願いします。というか、せっかくなので、フルサイズで、どうぞ。

英ロンドンで恒例行事、伝統の法廷衣装とかつらの裁判官らが集合

「英ロンドンで恒例行事、伝統の法廷衣装とかつらの裁判官らが集合」という記事がでています。

毎年恒例でありますが、儀式用のウイッグをつけて、秋の法廷の開始になるのでしょうか。(現在の英国の法廷の実務は疎くなっているので違ったらごめんなさい)。

この法廷衣装の論考については、自慢ではないですが、日本の第一人者ではないかとおもっています。ただ、問題は、第二人者がいないことですね。

(英国民訴だと、長谷部先生や我妻先生でしょうけど、さすがに、法廷衣装までは、研究はいたっていないでしょうからね)

個人的には、中野香織先生と、法廷衣装について語りあってみたいと思ってはいます。

STEM to STEAM

Hidden Figures (a.k.a ドリーム)の公開については、ITリサーチ・アートのHPでも触れていました (
CyCon2017 travel memo 11) Day4)。

でもって、とある飲み会で、今は、Art のAが加わって、アートと、STEMのコラボというか、お互いのケミストリーを、教育やITに関わる人は意識しないといけないですね、ということで、非常にもりあがりました。(たとえは、彼女とかね)

STEAMの記事は、こんな感じですね。

STEM to STEAM
とか
STEM/STEAMとは何か? AI時代の人生戦略「STEAM」が最強の武器である
でしょうか。

なんといって、私(高橋)の会社は、ITリサーチ・アートですし、本拠地は、アトリエ(駒澤)ですので、アートが、STEMとケミストリーを生み出していくというのは、自分で関わっていきたいし、それから生じるものをアシストしていきたいなあ、とおもっています。

とりあえずは、IT業界のSTEAMな女性たちをもり立てる活動なんてのは、格好いいよねとか、飲み会で盛り上がっていました。KanaさんのオーガナイズするCODE BLUE みんなきてね

来年以降もSTEAMのために、貢献しようかとおもっています。

IT

PS ついでにその飲み会では、「光格子時計」とか「香取量子計測研究室」とかを検索した履歴が残っています。というか、光格子時計ってすごいなあ、と感激。まあ、おそるべし飲み会。

 

サイトの構造を変更しています

駒澤綜合法律事務所のサイトを、通常のkomazawlegal.org の下に、

英語サイト(eng.komazawlegal.org)

家事事件(rikon.komazawlegal.org)

相続事件(souzoku.komazawlegal.org )

民事事件(civil.komazawlegal.org )

IT法(itlaw.komazawlegal.org )

に構成しなおしています。

 

英国 データ保護法改正案の注目点

9月14日に英国で、データ保護法改正案が公表されています。

英国のデータ保護法は、1998年データ保護法で、昔、わが国の基本的な枠組みに対しても、大きな示唆を与えるだろうと紹介したところでした。(論文としては、「英国データ保護法からの個人情報保護法への示唆」「英国データ保護法をめぐる適用除外の議論–情報保護法案は、マスコミ規制法?」です)

それは、さておき、Brexitとは、いえ、まだ、離脱が完成していませんので、英国としては、GDPRに対応して、データ保護法を改正しなければなりません。また、仮に離脱が完了したとしても、十分な保護レベルがあるとして、データのクロスボーダー移転が可能にならないとビジネスとしても回っていかなくなりそうです。その意味で、データ保護法の改正案をきちんとみていく必要があります。

法案は、国会のこちらのページになります。

98年法は6部(75条)と16の附則からなり立っていの附則からなり立っていたのに対して、今回は、7部(194条)と、18の附則(Schedule)からなりたっています。

ここの条文をみて分析していきたいところですが、今回は、注目の点をみていくことにしましょう。この注目の点については、趣旨説明が明らかになった段階でおおよその点は、推測できたということになります。(8月16日のエントリ)が、あらためて条文ともに検討しておくのは、有意義でしょう。

まずは、ファクトシートから。
Karen Bradley大臣は、「データ保護法案は、人々により、データに対するコントロールを増し、データ利用に関して企業をサポートし、英国をブレクジットに備えさせる」「デジタルワールドにおいては、サイバーセキュリティとデータ保護は、ともに手を携えて進むものである。この法案は、鍵になる。」としています。

What​ ​are​ ​we​ ​going​ ​to​ ​do?(何をしているのか)では、上の大臣の3点が強調されています。

How​ ​are​ ​we​ ​going​ ​to​ ​do​ ​it?(どのようにしてするのか)では、(1)データ保護法1998の制裁強化を代表とする全般的/現代的枠組み(2)GDPR準拠の一般データ保護の新しい標準、データに対するコントロール、データの移転および消去に関する新しい権利(3)世界をリードする研究、金融サービス、報道、法的サービスを継続しうるような例外規定の維持(4)刑事司法機関・国家安全組織において、被害者・証人・容疑者の権利を保持しながら、円国が直面する国際的な脅威に対して対抗しうるような枠組み がふれられています。

Background(背景)においては、データ保護法1998は、英国をデータ保護標準の先端においていたが、デジタル経済・社会の進展に適合させるために、データ保護法を現代化するものであるとしています。

そのなかで、法案の主たる要素が個別の項目にわけてふれられています。

一般データ処理(General​ ​data​ ​processing)
すべての一般的なデータ処理に関してGDPR標準を実装します。
●英国文脈においてGDPRで使用される定義を明確にする
●センシティブな健康、社会福祉、教育データが、健康において継続的に機密保持されたままで処理を続けられ、保護の状況を維持することができるように確保すること。
●国家の安全の目的を含み、強力な公共政策の正当性がある場合において、データのアクセスと削除の権利に適切な制限を設けて、現在行われている特定の処理を継続できるようにすること
●オンラインでデータを処理するのに親の同意が必要ない年齢を13歳に設定すること。

法執行機関における処理(Law​ ​enforcement​ ​processing)
.法執行の目的のために、警察、検察、その他の刑事司法機関による個人データの処理のための別個の体制を提供する
●個人データを保護するための保護する手段とともに国際的にデータの流れを妨げないようにする。

国家安全に関する処理(National​ ​Security​ ​processing)
.インテリジェンスサービスによる個人データの処理を規制する法律が、現存する新しく出現する国家安全保障上の脅威にインテリジェンスコミュニティが引き続き取り組むことができる適切な保護手段を含むものとし、最新の国際基準と最新のままであることを確保する。

規則および執行(Regulation​ ​and​ ​enforcement)
.データ保護法を継続して規制し実施する情報コミッショナーの追加権限を定める。
●最も重大なデータ侵害の場合、データ・コントローラおよびプロセッサに対するより高い行政罰金を課し、最も深刻な違反に対して最大17百万ポンド(2,000万ユーロ)または全世界売上高の4%を課す権限をコミッショナーに、許容する。
●データ・コントローラまたはプロセッサが、データ主体のアクセス要求による開示を防止する目的でレコードを変更する犯罪に対して刑事訴訟を提起する権限を権限者に付与する。

株式って何?-古き良き証券市場を例に

「AI時代の証券取引の法律問題」(その1その2その3)をちょっと書いてきました。あと、駒沢大学で、開かれた社会情報学会でもWS03でそのテーマで講演しました。

ただ、昨年の情報ネットワーク法学会でも感じたのですが、どうも聴講者の方々は、株式取引というのに対してのイメージをもっていないのかなあ、とおもいました。そこで、基本的なことですが、ちょっとまとめてみましょう。

株式というのは、創設者が、何か 世の中的に事業を行いたいとおもった時に、社会から、資本を集積しようと考えた際に、法的に取引の主体となりうる立場を作成して、法人とした場合に、その法人(会社)を所有しうる立場を、均等に、分割したもの、ということになります。(均一的に細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位とさなます)

会社を所有している立場なので、その立場によっては、その会社をどうすることもできる立場になります(法的には、株主平等の原則等の侵害をしないことなどの制限があります)。

この株主の権利としては、会社の経営に参加する権利と利益の分配をうける権利(など)があります。

では、この株主の権利を有している人が、第三者にその株主としての地位を譲りたいと考えたときに、どのような価格で譲渡するといいのでしょうか。この価格は、将来にわたって、会社の経営に参加する権利と利益の分配をうける権利(など)によって享受しうる価値を現在への引き戻した価値によって説明がつくと考えることができるでしょう。

もっとも、この「享受しうる価値」というのが、「くせもの」で、単なる配当などを得る期待値というだけではなく、会社の経営によって取得しうる正当/不当な利益の期待値をも含むものになるとおもわれます。(この点は、今日は触れません)

もっとも、社会には、市場という便利なものがあります。自由で公正な市場で取引されれば、この理論的な価格に収斂していくはずになると考えられるでしょう。(これも概念的なのであることは、いうまでもないです)

ところで、いうまでもないのですが、上記の利益の期待値は、実際の会社が、どれだけ資本を効率的に運用するのか、ということで、左右されることになります。業績によって左右されるのです。

この業績に関する情報が、投資家の間で、公平に共有されなければ、市場は、不公正であると考えられて、だんだん、その市場に参加する人が減少していくでしょう。インサイダー取引が、公正な市場を害する重大な犯罪であるというのは、そういうことです。

ところで、株式市場は、実際の株価と、投資家が妥当と考える株価のギャップを取引によって、埋めていく場ということになるでしょう。この株式市場の取引にあたっての戦略的なスタンスとしては、従来から、「ファンダメンタル分析」による取引をなす投資家と、「テクニカル分析」による取引をなす投資家にわけることができます。前者は、需給、収益性評価およびそれらの背景となる経済情勢分析に基づいて行う手法ですし、後者は、将来の取引価格の変化を過去に発生した価格や出来高等の取引実績の時系列パターンから予想・分析しようとする手法です。後者は、チャートなどから、買いのシグナル、売りのシグナルなどを分析して、取引をしていく手法などが代表的なものということができます。「株式投資は、美人投票のようなものだ」(他の人が美人だと思って投票するだろう人に投票する)といわれることがありますが、そのような立場からは、他の人が、このような場合に買いに出るということがわかっているのであれば、その法則を知っていることはきわめて有利に働くということになるでしょう。

上の図で、「古き良き証券取引」といっているのですが、まさに、自由で、公正な市場において、いろいろな手法で、いろいろな思惑を有している多彩な投資家が、投資をしていくというのが、厚みのある理想的な市場と考えられていたのです。

いままでの「AI 時代の証券取引」のエントリ(特に3)でふれたように、このような「厚みのある理想的な市場」というコンセプトは、もはや夢物語になりつつあります。資本市場は、その果たすべき役割をきちんとはたし続けることができるのか、というは、重要な問題であるようにおもわれます。

AI時代の証券取引 (その3)

AI時代の証券取引 (その2)で、具体的な問題に対応するための金融商品取引法の改正について触れました。ここで、具体的な改正の内容について触れる前に、興味深い事件について、紹介しましょう。

それは、北越紀州製紙株式に係る相場操縦事件(平成23年2月16日 決定要旨)になります。

相場操縦は、禁止されている(具体的には、「取引を誘引する目的をもつて」「有価証券の相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をすること」をなすことはできない(同法159条2項1号))のですが、それは、アルゴリズムを用いた取引であっても同様です。

具体的には、証券取引等監視委員会のホームページで検討してもらいたいところですが(勧告)、以下の図のように、見せ玉を見せて、取引を約定させるようにしたわけです。

もっとも、解釈論としては、このような「見せ玉」が日常に行われているのではないか、もし、そうであったならば、「取引を誘引する目的をもつて」という誘因目的の要件を満たすことがなくなるのではないかと議論されてもいるようです。

IOSCOの報告書において、提言5において、「市場当局は、技術発展がもたらし得る市場阻害行為の新たな形態又は種類を監視し、必要に応じて適切な措置を講ずるべき」と提唱されているところでもあり、また、WG報告書に応える形で、法が改正されることになり、国会で可決され、成立しています。

この改正に関する資料は、このページから、アクセスすることができます。法律自体は、高速取引対応のみではなく、①フェア・ディスクロージャー・ルールの導入、②株式等の高速取引(アルゴリズム高速取引、HFT)に関する法制の整備、③金融商品取引所グループの業務範囲の柔軟化などを盛り込んでいます

具体的には、「高速取引を行う者につきましては、株式等の取引を行うことについての判断をプログラムに従って自動的に行っているということを一つの要件といたしまして、あわせまして、コロケーションエリアからの発注など、判断に関する情報の伝達に要する時間を短縮するための方法を用いていることということをもう一つの要件にしておりまして、この二つの要件を満たしたときに今回の法律案の対象となる高速取引と定義」がなされています(同法 改正後の2条41項)。

そして、アルゴリズム高速取引を行う投資家(高速取引行為者、同42項)に対する登録制が導入されています(同法 66条の50)。

具体的には、そして、そのような投資家に対して、(1)体制整備・リスク管理に係る措置(2)当局に対する情報提供等に係る措置(3)その他の規定に従うことを求めています。

(1)体制整備(同66条の55)・リスク管理に係る措置として、
取引システムの適正な管理・運営(同57)、適切な業務運営体制・財産的基礎の確保(同58)、(外国法人の場合)国内における代表者又は代理人の設置、
(2)当局に対する情報提供等に係る措置として、
高速取引を行うこと・取引戦略の届出、取引記録の作成・保存(58)、
当局による報告徴求・検査・業務改善命令等(58、60、67)
(3)その他の規定として、
無登録で高速取引を行う者等から証券会社が取引を受託することの禁止、 高速取引を行う者に対する取引所の調査(85条の5)
が定められています。

「アルゴリズム高速取引のシェアが過半を占める株式市場では、中長期的な企業の収益性(本来の企業価値)に着眼した価格形成が阻害されるのではないか」という批判が、あるということは、WG報告書を紹介したさいに触れました。証券取引においては、ファンダメンタルを重視する方法とテクニカル(価格変動自体)を重視する方法とがあり、それ自体は、AIなり、アルゴリズム取引が盛んになる前から、存在していた問題ということはいえます。

もっとも、将来、証券取引が、限られたAIのプログラムにしたがって行うのが、もっとも合理的ということになり、しかも、プログラム自体が、市場参加者のアルゴリズムを予測し、その予測したアルゴリズムのいわばウラをかく形で、取引を成立させるのがもっとも合理的ということになれば、もはや、自由な市場によって、効率的な資本供給を行うという当初の意図された目的から、市場が質的に違うものに、変容してしまうということはいえるかもしれません。

AI時代の証券取引 (その2)

では、次に具体的なAI技術が、証券取引に応用される場合に、具体的に、どのような法律問題が発生するのか、見ていくことにしましょう。

この図で、具体的な問題点を示してみることにしましょう。

この図は、AI技術が、証券取引に応用される場合

(1)投資家とAI/API提供者との関係(自律性の問題)

(2)その技術自体の問題点

(3)市場との関係の問題、

のそれぞれの観点から分析されることを示しています。

(1) 証券取引システムの自律性

この問題は、自律的な証券取引システムを利用して投資家が証券取引をおこなっている場合に、その取引は、その投資家が、みずからの責任をもって運用をなしているのか、逆に、そのシステムの提供者が運用をしているのか(この場合、システムの提供者は、投資一任業務をおこなっていることになる)、という問題になります。いいかえると、投資判断を投資家がみずからおこなっているのか、ということになります。ロボアドバイザーサービスにおける法的な論点も、この観点から意識されています。

具体的には、金融商品取引法の定める金融商品取引業(同法2条8項、具体的には、投資助言・代理業、投資運用業、第一種金融商品取引業)に該当するのではないか、という問題です。

この解釈上の詳細は、別の機会に譲ることにします。が、この問題については、一般論としては、「不特定多数の者を対象として、不特定多数の者が随時に購入可能な方法により、有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を提供する行為」は、投資家の自主的な判断をアシストするものに過ぎない、すなわち、投資判断は、投資家がみずからおこなっているものと考えられでしょう。ですから、そのような判断をアルゴリズムに基づいてプログラムとして提供していたとしても、その提供者は、投資助言・代理業の登録が必要になることはないといえます。そのプログラムに基づいて取引をおこなったことで投資家に損害が出たとしても、その責任を何人からも追求されることはないと考えられます。

一方、ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報等に係るデータ・その他サポート等の提供を受ける必要がある場合があります。このような場合について、金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(平成28年9月) VII-3 諸手続(投資助言・代理業) 1 登録 によるときは、登録が必要となる場合がありうるでしょう。

さらに、そのようなプログラムを提供している会社が、投資家が、取引に使用する口座のIDおよびパスワードをゆだねられており、その会社がそのシステムを利用して、売買の発注をおこなっている場合には、具体的な発注の権限を委任される状況になっているものと考えられる。この場合には、このプログラム提供会社は、単にプログラムを顧客に提供しているというのみではなく、投資運用業に係る業務を行っている(金融商品取引法第 28 条第4項)ものといえます。ですから、このような場合に、投資運用業に関する登録をなさないといけないということになります。(インベストメントカレッジに対する行政処分 平成27年10月20日 金融庁)

特に、個人投資家について考えた場合に、このようなAIによる投資判断による自律的な判断が、想定を超える著しい損害を及ぼしうる場合には、どのようにして保護すべきかという問題が発生するのではないか、という問題を指摘することができるでしょう。これは、むしろ、そのような技術自体に内在する問題点として考察することにしましょう。

(2)証券取引システム自体の問題

証券取引システム自体の問題というのは、自律的な証券取引システム自体に財産を損なうような問題点が発生した場合には、それを防止する仕組みを準備しておくべきではないかという論点になります。

具体的に、この問題点は、後述の証券取引と市場の関連の問題点とともに、わが国においては、金融審議会市場WGの報告書(金融審議会市場ワーキング・グループ報告~国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について~ )において、「第3章 取引の高速化」の問題のもとで論じられています。

そこで、ここで、その報告書の第3章の「取引の高速化」の記述を見ていくのは、とても、参考になるでしょう。そこでは、「東京証券取引所の全取引に占めるコロケーションエリアからの取引の割合は、約定件数ベースで4~5割程度、注文件数ベースで7割程度に達して」いるとされています。そして、「現状、以下に見るように、アルゴリズム高速取引を行う投資家に対する証券会社の関与が薄まるとともに、当局や取引所も、アルゴリズム高速取引の全体像やその取引戦略等を十分に把握できているとは言えない状況となっている。」とされています。そして、欧米の動向を確認したのち、「アルゴリズム高速取引を行う投資家に対するルール整備」の必要性が高いものとしているのです。

そして、WG報告書では、技術に関するものとしては、

・ 市場でのイベントにアルゴリズム高速取引が加速度的に反応し、マーケットが一方向に動くことで、市場を混乱させるおそれがないか
・ 異常な注文・取引やサイバー攻撃など万が一の場合、その影響が瞬時に市場全体に伝播するおそれや、その他システム面でのトラブルが市場に大きな問題を引き起こすおそれがないか

が指摘されています。

(3)証券取引と市場との関連

これは、自律的な証券取引のアルゴリズムが、証券市場との関係で、規制の対象となるのかどうか、また、その場合の責任はどうなるのか、また、それらが市場において、市場力をもつにいたった場合については、どのように考えるべきかという問題ということがいえるでしょう。

前述のWG報告書においては、
「・ 個人や中長期的な視点に立って投資を行う機関投資家に、アルゴリズム高速取引に太刀打ちできないなどといった不公平感を与え、一般投資家を市場から遠ざけてしまうのではないか
・ アルゴリズム高速取引で用いられる戦略には短期的なものも存在し、アルゴリズム高速取引のシェアが過半を占める株式市場では、中長期的な企業の収益性(本来の企業価値)に着眼した価格形成が阻害されるのではないか
・ 欧米をはじめ我が国においても、アルゴリズムを用いた相場操縦等の不公正取引の事案等が報告されている中、市場の公正性に影響を与えるおそれはないか」

という問題点が提起されています。

これらの議論に基づいて、「金融商品取引法の一部を改正する法律」が提案され、国会で可決され、成立しています。これらの問題に関する実際の事件や、この改正法の内容については、次のエントリで検討していくことにしましょう。

AI時代の証券取引(その1)

「オンライン証券業務の法律問題」などの論考(正協レポート 5(3), 17-31, 2001-08)から、15年、証券取引も、全く、その姿を変えてしまいました。ネットワーク化によって、もっとも変わった分野の一つということができるでしょう。

オンライン取引が一般化して、証券市場は、断片化(多数の市場が開設されるとともに私設取引システムも開設される、また、気配情報を公表しない取引の場であるダークプールが発展)してきています。さらに自律的なアルゴリズム取引が、非常に、市場の過半をしめるように発展してきています。

アルゴリズム取引とは、一般的に、事前に策定していたプログラムに応じて、株式売買のタイミングや数量を決めて注文をなす取引のことをいうものと定義することができます。このなかで、高速・高頻度でなされる取引の全体が高頻度取引(HFT)と呼ばれています。機関投資家等が、このような取引を行うようになっており、現実の証券取引において、きわめて大きな存在感を示すようになってきています。

このような高頻度取引は、価格発見機能の効率化、流動性の提供などのメリットがあるとされています。その一方で、いろいろいな問題点があるのではないか、と指摘されるようなってきています。IOSCOの「技術革新が市場の健全性・効率性に及ぼす影響により生じる規制上の課題」(なお、概要版 日本語) は、市場の効率性のリスク、市場の公正性・堅牢性に対するリスク、市場の弾力性・安定性に対するリスクを述べています。また、これら以外にも、最良執行上の問題、市場参加者の範囲を狭める、プログラムによる市場操作、規制コストの問題などが指摘されています。

ところで、このアルゴリズム取引と、いま流行りの「AIを用いた証券取引」というのを考えてみましょう。

そもそも、AIというのは、あまりにも一般的な名称であり、具体的な技術をひとくくりにしたもので、それ自体が、なにか生産的な結論を導くものとはいえません。友だちの間では、AIというのは、幼名であって、元服すると、自然言語解析とか、画像認識とかの具体的な名称がつく、という、「AI元服理論」を語っているのですが、大学の教授の中でも、意外に支持してくれる人がおおいです。

それは、さておき、AIと証券取引という形で論じると、二つの方向性があるということは考えていていいかと思います。一つは、顧客に対して資産運用のアドバイスを行うために人工知能を用いるものであり、いまひとつは、証券取引のアルゴリズムの動作に関して、人工知能による分析結果を利用しうるものにするということです。

前者については、いわゆるロボアドバイザー・サービスということになり、その法律問題も検討されています(長谷川紘之「証券分野にみるFinTechとその法的課題」NBL1081巻71頁(商事法務、2016))。

後者については、人工知能による分析結果を利用するのに関して、具体的に、どのような人工知能技術(元服した名称)を、どのように利用するのか、ということから、具体的に語ることができます。

ビジネス的に公表されているものとして
株価騰落予測システム
時系列株価データをRNN(リカレントニューラルネットワーク)により解析するシステム
などが公表されています。

また、学術的には、
モメンタム取引戦略への応用
自然言語解析を用いたイベント基盤の株価予測への応用
などのこのAI技術の範疇にはいるでしょう。

では、このようなAI 技術の証券取引の応用について、具体的な法律問題として、どのようなものがあげられるのか、具体的に検討していきましょう。

英語ページを子ドメインにしました

英語ページを子ドメインにしました。 

駒澤綜合法律事務所の英語の情報のページをhttp://eng.komazawalegal.orgから始まるドメインにまとめました。

 コンテンツとしては、まだ、十分ではありませんが、これから充実させていきたいですし、英語自体も上達しないといけません。また、英語のチャットボットを実験することもできます。