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特別の寄与など

(4) 特別の寄与など

この部分は、厳密にいうと、(ア)相続の効力等に関する見直し (イ)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策 (ウ)その他 に分かれます。

(ア)相続の効力等に関する見直し

これは、今までは、遺言による権利変動で、相続を原因とするものについては、登記等の対抗要件を備えなくても、その権利の取得を第三者に対抗することができるとされていました。

すると被相続人の債権者が、相続財産に属する不動産の差押え・取立を行った場合に、遺言で、別の定めがなされていたような場合には、その差押えは、実は、効力がないとされることになります(法務省の説明の事例

それでは、遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益を害する ・登記制度や強制執行制度の信頼を害するおそれがある、ということになるので、新法では、相続させる旨の遺言についても,法定相続分を超える部分については,登記等の対抗要件を具備しなければ,債務者・第三者に対抗することができない<とされています。

条文としては

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項
の規定を適用する。
となっています。2項は、債権の場合の通知ですね。覚えておきましょう。
(イ)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

 

寄与分の制度というのがあります。これは、条文としては、民法904条の2

  1. 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

になります。これは、条文通り、相続人に対して認められるものです。相続人ではないもの、例えば、相続人の配偶者が、被相続人の身のまわりの世話をはじめとして、被相続人の財産の維持または増加に寄与した場合にも、同様のことが認められてもいいのではないか、ということになります。

そこで、相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで 相続人に対して金銭の支払を請求することができることとするべきであるとされました。

制度としては、特別寄与の制度と呼ばれています。条文としては、1050条です。

第九章 特別の寄与
第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
となります。制度としては、遺産分割の当事者とすることはなく、遺産分割の手続き外で、相続人に対して金銭請求することをみとめたものになります。
 (ウ)その他
家事事件手続法が改正されたり、ということがあります。特段、留意するものは、なさそうです。

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