ネットワーク中立性講義 その9 競争から考える(1)

ゼロレーティングを電気通信市場における競争という観点から考えてみましょう。

この問題については、総務省と公正取引委員会の「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針 」(以下、電気通信ガイドラインといいます)というガイドラインがあります。
(なお、公正取引委員会は、「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書も公表しています。が、これは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の新規参入の促進の観点からのもので、ゼロレーティングに直接コメントしているものではありません)。

まず、電気通信事業分野について、競争環境を考えるのは、なぜかというのが、最初の問題になります。
この点については、電気通信ガイドラインの1ページめに① 不可欠性及び非代替性によるボトルネック独占の可能性 ②ネットワーク効果 ③ 市場の変化や技術革新の速度が大変速いことといった事情があげられています。(もっとも、この3点の指摘は、きわめて重要です。IBM、マイクロソフト、グーグルまで、独占と、その弊害が問われているのは、これらの事情とも関係します)

まさに、電気通信事業分野(インターネット分野まで広げた)ときに、市場の健全な競争がきわめて重大な意味をもってくるのは、これらの事情によるものです。
市場における健全な競争が、きわめて重要なのは、いうまでもないのですが、細かく考えていくと、「市場」って何、健全な競争って何という問題が起こります。そのような大きな観点は、とりあえずさて置くとして、具体的な問題について考えていきましょう。

ちなみに、競争の問題というと、まずは、独占禁止法が思い浮かびます。

独占禁止法がどのような観点から、市場の健全な競争を維持するために規制を準備しているか(違反要件)というと(1) 私的独占(2)不当な取引制限(3)不公正な取引方法の3つの観点から規制を準備しています。これらの具体的な趣旨については、公正取引委員会の「独占禁止法の規制内容」が参考になるでしょう。

(2)不当な取引制限は、カルテル等なので、理解しやすいかと思います。

が、(1)「私的独占」というのは、独占状態自体を規制しているわけではなく、「競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為」(排除型私的独占の場合)のように、具体的な行為を問題にしているということは留意しておくことが必要になります。独占的状態は、それ自体として、公取委が競争回復措置を命じることができますが、実際には、適用されていませんし、そのような状態に到達すると、イノベーションの手を抜くのが、合理的な競争行動になるので、規制としても合理的なものとはなかなかいえないというのが、一般的な理解に思えます。

(3)「不公正な取引方法」は、独占禁止法2条9項で、具体的な行為を定め、さらに、そのうちの6号については、公取委の指定がなされています(平成21年改正によって変わっています)。電気通信事業については、一般指定の適用が問題とされるので、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、ぎまん的顧客誘引、不当廉売などが問題となります。
でもって、一般指定が、どのような趣旨から、どのような行為を規定しているのか、特に、電気通信事業ではどうか、ということを考えることになります。

「不公正な取引方法」に定められている行為は
第1は、自由な競争が制限されるおそれがあるような行為で、取引拒絶、差別価格、不当廉売、再販売価格拘束などです。
第2は、競争手段そのものが公正とはいえないもので、ぎまん的な方法や不当な利益による顧客誘引などです。
第3は、自由な競争の基盤を侵害するおそれがあるような行為で、大企業がその優越した地位を利用して、取引の相手方に無理な要求を押し付ける行為がこれに当たります。
に分けられるとされています。

このなかで、公正な競争という観点からみるときに、上の「優越的地位の利用」というのは、すこし、毛色が違っています。基本的に、公正な競争というのは、多くの競争者が存在する、資源の可動性に対する制約が少ない、主体の情報量が豊富で、情報の取得に対する制約がすくない、市場において、取引参加者が、自由な意思決定のもとに取引を行うことをいうと考えることができます。(この公正な競争のところは、来生新「経済活動と法」-市場における自由の確保と法規制-110頁を参照しました)(判決例的には、東宝新東宝東京高裁判決。自由な意思決定というのは、人と意思を通わせることなくということで、自由市場の前提です。労働組合は、古典的な市場モデルでは、それ自体違法で、その違法性を阻却したのがタフト・ハートレー法だったはず)

そのように考えると、この「優越的地位の利用」というのは、この市場の3要素との関係では、関係が薄いということがいえるでしょう。そうはいっても、実際の競争状態は、上のような公正な競争状態とは、異なっています。その場合に、取引が合理的ではないとしても、新たな取引先・新たな取引市場をもとめて、機動的に活動せよ、というのは、合理的ではない(種々のコストがかかりますね。その意味で市場の合理性は、常に限定的なものです)でしょう。そのような状態を認識して、それにいわば「つけ込む行為」を規制することは、広い意味での「公正」な競争という概念に合致するものと考えられます。(労働基準法が、一定の規律を定めてエンフォースするがごときですね)

ここで、もう一度、ゼロレーティングの関係図をみてみましょう。

消費者から見たときに、スマートフォンを利用して、映像のストリーミングを楽しむ、音楽を楽しむ、SNSを楽しむ、というのが、市場や競争の概念との関係で、どのような意味をもつのか、また、エントリを新たにして、考えていくことにしましょう。

ネットワーク中立性講義 その8 日本における通信法との関係

米国の議論を例にして、広くみたときには、ネットワーク中立性の問題は、①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題)②利用者の利用行動の了知の問題題③利用と対価の公平性の問題 ④サービスの質と超過価格⑤契約における透明性の問コンテンツによる区別的取扱⑥ 接続サービスと公平な競争 ⑦その他の問題  が議論されていることになります。

①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題
これは、違法有害トラフィック (わいせつ、チャイルドポルノ、その他の違法有害情報)、著作権侵害トラフィック(Winny・ビットトレントその他)に関して、帯域制限、遮断などをすることができるかという論点です

  ②利用者の利用行動の了知の問題

   これは、DPI技術を利用して、インターネットにアクセスしている利用者の行動履歴を収集し、それを分析し、広告に利用することが許容されるのか、という論点で、わが国においても、議論されていましたが、米国でも、特に2000年代後半に議論されています。

③利用と対価の公平性の問題

これは、少数のヘビーユーザのために、多数の一般ユーザが、多額の利用費を支払っているのではないか、それは、非効率的ではないか、という問題です。米国の議論においては、特に明確に議論されることはないかと思いますが、帯域制限などとは、裏表の関係にあるので、ひとつの論点として議論することが可能かと思います。

(平成29年7月5日追加)ということを書いていたら、総務省は、「携帯契約プラン払いすぎ解消へ 総務省、改善策を検討 」という記事がでています。これについても、具体的に利用者の「ひじをおす」という政策をとることになりそうです。ここまでいくと、ネットワーク中立性の概念でしょうか、という気もします。

④サービスの質と超過価格

 これは、米国において、有料優先サービスの問題として議論されている問題です。料金を払うことで、速度の速いインターネットサービスが提供されるということでいいのか、ということになります。

⑤契約における透明性の問題

 これは、インターネット通信における契約条項が明確になっていないのではないか、消費者が理解するのに困難な条項になっているのではないかという問題点です。特に、2014年以降、透明性原則等の名目のもとで、オーダーでの議論対象となっているということは、ふれたところです。

⑥コンテンツによる区別的取扱

 これは、例えば、ゼロレーティングにするなどの問題です。ネットワークに接続する市場において、市場力をもっている業者が自らの関係する会社を利用する場合に、パケット量を計算しないなどの取扱は、違法になるか、という問題です。また、日本においては、チャットツール市場において、LINEは、非常に力があるので、その市場を利用して、接続市場での競争を有利にすることは許されるのか、という問題になります。

⑦ その他の論点

 米国においては、その他の論点として、プライバシーについての監督権限のあり方、インターネットとユニバーサルサービスの関係、などがあり、これらの論点も、具体的な問題としてわが国で検討しなければならないでしょう。

 これらの問題は、きわめて現代的な問題であり、米国や、その他の世界において重大な問題を惹起しているのは、ある意味、当然ということができます。しかしながら、わが国においては、あまり、注目を浴びていないともいえます。(もっとも、今年になって、この議論が再燃しているとしている論文として 立石聡明「Network Neutrality 再燃」があります)

上の論点のほとんどが、日本においても議論されています。そして、それらについて、一定の枠組みが提案されていて、問題としては、いわば、解決済みとなっているということができます。それらを具体的にみていきましょう。

①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題

 この問題についていえば、我が国においては、電気通信事業法4条の「秘密の保護」の条文との関係で議論が整理されてきました。電気通信事業法4条の詳細な解釈については、個々では、省きますが、それらも念頭に、違法有害トラフィック (わいせつ、チャイルドポルノ、その他の違法有害情報)については、「インターネット上の違法・有害情報に関する総務省の取組について」が、具体的な対応がまとめられています。

米国においてタイトルⅡオーダーでも議論されている帯域制御・ブロッキングの問題というのは、わが国では、すでに電気通信事業法4条の解釈論のなかで、整理されていて、「中立性原則」という形で議論する意味はないということがいえます

②利用者の利用行動の了知の問題

これも、具体的な利用者の行動を了知して、広告等に利用するという問題については、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会・第二次提言」(2010年5月)」において、同意の問題として整理されています。

③利用と対価の公平性の問題

この問題は、いわば、優良なユーザが割を食っているということになるわけですが、それらは、契約の条項が、具体的な利用量等におうじて対応すればいいわけです。そうだとすると、電気通信事業法6条の「電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取扱いをしてはならない。」という文言の解釈になるということかと思います。解釈論としては、「国籍、人種、性別、年齢、社会的身分、門地、職業、財産などによって、特定の利用者に差別的待遇を行う」ことが禁止されるということになります。逆に言うと、「合理的な根拠に基づいて取扱に差を設けることまで禁止されるものではない」ことになります。特別の区分に基づく契約条件を設けるというのであれば、別ですが、むしろ、通信にかかる量に比例するような料金体系をとるべきだということはできないでしょう。その意味で、すでに、この「利用の公平」の規定に反するものではないということで決着がついているように思えます。

④サービスの質と超過価格

 これも法的には、③の問題と同様でしょう。

⑤契約における透明性の問題

 電気通信事業法は、26条で提供条件の説明として、「総務省令で定めるところにより、当該電気通信役務に関する料金その他の提供条件の概要について、その者に説明しなければならない。」と定めています。この部分については、電気通信事業分野における消費者保護施策、「電気通信事業法の消費者保護ルール に関するガイドライン」でも詳しく述べられています。

⑥コンテンツによる区別的取扱

 これは、なかなか、困難な問題です。解釈論としては、上記電気通信事業法6条に解釈論と独占禁止法上の解釈論の問題がでてきます。また、ともに重ねて適用されうるのか、両法の関係は、どうか、という問題もでてきます。(FTCとFCCの関係は、どうなの?という米国とも、似ているのかもしれませんが)

 幸い、この問題点については、総務省と公正取引委員会がともに「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針 」を公表しています。非常に、興味深い指針であるということができるので、また、別のエントリで検討してみることにしましょう。

⑦ その他の論点

 プライバシについての監督権限のあり方、インターネットとユニバーサルサービスの関係、あと、ネットワーク産業に対する投資を増加させるための通信政策のあり方とか、むしろ、このネットワーク中立性の議論でわが国の観点から興味深いのは、この「その他の論点」のように思えます。

 米国において、プライバシ(通信の秘密)が、情報セキュリティの確保や産業としての投資促進との関係では、トレードオフの側面があるという認識があるように思えます。この理屈はわが国においても、そのとおりなはずですが、プライバシといったとたんに、トレードオフについての思考が停止しているように思えます。ネットワーク中立性の議論のなかで、そのような観点まで議論が発展していくとわが国でも注目されるべき視点になりそうな気がします。

いま一つは、インターネットに接続することのできる地位は、ユニバーサルサービスを受けうる地位なのではないか、という指摘です。そのためには、積極的に公共の支援が正当化されるのではないかということです。ただ、この点は、現在では、固定による接続とモバイルによる接続では、性質も違うでしょうし、そもそも、ユニバーサルサービスといえるものなのか、という点についても、まだ、そこまではいえないようにも思えます。電話がないと生きていけないでしょうというのは、そのとおりの感じなのですが、インターネットがなくても生きていけそうです。(そのほうが、ゆったりと過ごせるとか)。

もっとも、公共の支援が正当化されるのではないかという分野があるのは、そのとおりに思えます。ネットワークの管理を行う作業とか、セキュリティを守る作業、公共機関からの要請に応える作業などを考えることはできるでしょう。ここまでいくと、それらを考えるときに、ネットワーク中立性ということが妥当か、という定義の問題に帰着していくように思えます。

 

 

 

 

 

 

ネットワーク中立性講義 その7 米国の議論(トランプ政権の動き)

2017年1月23日、トランプ米大統領、FCC委員長に規制緩和派のパイ氏を指名した。(記事としては「新FCC委員長はAjit Pai氏?ネット中立性見直しの可能性も」)

パイ委員長は、同4月27日、「インターネットの自由の再構築(Restoring Internet Freedom)」という文書(Notice of Prososed Rulemaking)を公表しました (以下、インターネットの自由NPRMとします)。

この文書は、規則作成についての提案の告知(NPRM)です。

その趣旨は、2015年のFCCのオープン・インターネット・オーダー2015(なお、この文書の元では、タイトルⅡオーダーといっている-ISPをタイトルⅡに位置づけて規制するというアプローチ)によって、イノベーションが危機に瀕しているという判断をもとにしています。

このインターネットの自由NPRMは、具体的には、序、背景、インターネットの公共事業規制の終結、軽いタッチの規制枠組、手続的問題、命令文から成り立っています。

序においては、ISPは、インターネットエコシステムに膨大な投資をしており、それが歓迎されてきていること、2年前にFCCが、その方向性を変更し、基本インフラ型の規制をインターネットに導入し、政府規制型にシフトをしたこと、タイトルⅡオーダーによって、オンラインに対する投資およびイノベーションが危機に瀕したこと、がのべられています。また、プライバシーについてFTCの権限を剥奪しており(タイトルⅡオーダーでFCCが、タイトルⅡにおけるプライバシの適用については、差し控えないとしています)、その意味で、プライバシーを危険にさらしているといえること、もともとの両党派による自由でオープンなインターネットをつくるべきであると考えられていた最初のステップを踏み出すということがのべられています。

背景部分において、

1966年からの基本サービスと拡張サービスの違いが論じられたときから2015年のタイトルⅡオーダーまでの経緯がのべられています。この点については、すでに検討した通りですが、現在にいたるまでの経緯を時系列的にコンパクトにまとめているということができるでしょう。

インターネットの公共事業規制の終結の部分においては、

(1)2015年におけるタイトルⅡ命令の採用までの間に、自由かつオープンなインターネットが栄えたこと、投資額も多かったし、消費者は、高速アクセスを享受していたこと(2)しかしながら、FCCは、ブロードバンド・インターネット・サービスをタイトルⅡのもとで規制される、公共事業規制に従うと判断したこと、という経緯のもと、

これに対して、再度、同サービスを情報サービスに分類し直し、より軽いタッチの規制枠組みで規制されること、を提案しています。この提案は、文言・法の構造、FCCの先例、公共ポリシー(曖昧な規制の撤廃による投資の復活)を根拠とするものです。また、それらに加えて、FCCが、ブロードバンド・インターネット・サービスを情報サービスと分類する法的な権限を有していることについても具体的に論じています。

また、モバイル・インターネット・アクセスサービスは、民間モバイルサービスであるとすることを提案しています。また、タイトルⅡオーダーで明らかにされたFCCの規制の差し控え(forbearance)の適切性、222条規制(FTCからプライバシー規制権限を剥奪したことを改め、権限を戻す)、ライフラインプログラムの提案(ユニバーサルサービスとして、設置、維持、アップグレードについての助力をもらえるようにすること)などについても提案がなされています。

軽いタッチの規制枠組の部分においては、

現存する規則の再評価および体制の執行、ルール採用の権限についての法的権限、コスト・ベネフィット分析の各観点から記述がなされています。

現存する規則の再評価および体制の執行においては、

インターネット行為規範の撤廃、明確な線引きルールと透明性ルールの必要性を決定すること(ブロッキング禁止ルール、帯域制限禁止ルール、優先接続禁止ルール、透明性ルールについてのそれぞれの賛否の意見を求めている)、その余の考察(範囲、モバイルへの適用性、などの意見を求めている)、執行体制が論じられています。これらは、いずれも注目に値するものといっていいと思われます。

ルール採用の権限についての法的権限においては、通信法706条(a)および(b)が、権限を委譲しているというよりも権限を奨励していると解されるとしています。

コスト・ベネフィット分析については、この手続においては、コスト・ベネフィット分析を採用することの是非、また、採用する場合の採用の仕方についての提案を募集すること(Office of Management and Budget, Circular A-4を採用すべきかという点)が議論されています。

手続的問題、命令文については、またの機会にしましょう。

問題は、このインターネットの自由NPRMに対しては、各企業が反対をなしています。特にベンチャー企業が反対をなしています。これは、規制緩和方向への動きであるので、市場(特に接続市場)での実際の力を有しているプレイヤーが、それを有効に行使しうる方向への改正ということを懸念しているからに思われます。

なお、分析としては、「トランプ支持者たちは、自由を望むなら「ネット中立性」を歓迎すべきである」という分析(Wired)もあります。

報道からいうと、「FCCのネット中立性規則見直しに反発 Amazonなどが7月12日に抗議行動」という報道もなされているところです。

米国の動きを、さくっとみておきました。この議論がわが国の議論において、何か参考になることがあるのでしょうか。個人的には、ネットワーク中立性というのが、広範な概念すぎて、米国においては、この概念に、いろいろな問題点を包含しすぎていることの問題点があるように思われます。それらの点については、次の機会に検討してみましょう。

ネットワーク中立性講義 その6 米国の議論(トランプ政権前)

FCCは、2014年5月に、Notice of Proposed Rulemakingで、「インターネットをオープンなままでいることを確かにするために正しい政策は何か」という基本的な質問をなしています。また、ブライト・ライン・ルール(ブロッキングなしルール、帯域制限なし、透明性の増加、および有料優先の禁止を含)を提案して、これを採用すべきか、また、それ以外の標準を用いるべきか、タイトル2が適用されるべきかも含めて諮問をなしています。

2014年11月には、オバマ大統領がインターネットの中立性の保護を訴える声明(Statement on Net Neutrality (Nov. 10, 2014)を発表しました。このステイトメントは「私たちは、インターネット・サーース・プロバイダが、ベスト・アクセスを制限するとき、勝者と敗者を選択することを認めることは許さない。」としています。裁判所のオープン・インターネット・オーダーの一部を無効とした判断については、FCCが、誤った法的アプローチをとっていたからよるとしました。そして、FCCは、ネット中立性を保護するルールのセットを作成すべきであり、ケーブル会社であろうと、電話会社であろうと、ゲートキーパーとして振る舞うことができないように確かにするべきであるとしています。

このステートメントでは、明確な線引きルール(ブライト・ライン・ルール)を提案しています。そして、ステートメントは、これらのルールは、ISPに対してなんら負担を増すものではなく、明確で、合理的なネットーワ―ク管理や、特別のサービスのための例外である、とも述べています。

また、これらのルールは、過去の教訓をもとに構築されなければならないとしました。つまり、もともと、世界に接続する会社は、特別の義務を負っていたとして、独占を貪ることは許されなかったとして、他の重要なサービスと同様の義務を課すべきであり、タイトル2(コモンキャリア)に再分類されるべきであるとしました。

このような経緯のもと、FCCは、2015年2月には、後にタイトルⅡオーダーと呼ばれる新たな規制ルール(REPORT AND ORDER ON REMAND, DECLARATORY RULING, AND ORDER)を公表しました。このタイトルⅡオーダーは、強固なルール、現在のタイトル2における投資の促進、維持しうるオープンインターネットルール、広範囲な規制差し控え(forbearance)を内容としています。

特に、そのうちでもっとも、注目される「強固なルール」は、ブロッキング、帯域制限、有料の優先接続をそれぞれ禁止すること(クリア・ブライトライン・ルール)を特徴としています。これらの規制を正当化するために、インターネットサービスプロバイダをタイトル2で取り扱うように定め直しています。その一方で、FCCは、タイトルにおける30の制定法の規定等の適用を差し控えるものとしました(広範囲な規制差し控え)。なお、プライバシー規定、障害者のアクセス、インフラアクセスの確保などの規定については、適用の差し控えはなされません。

このタイトルⅡオーダーは、2015年6月から効力を有していますが、これに対しても規制権限に関する裁判が提起されました。具体的には、ブロードバントサービスをタイトル2に再指定する権限を有するものではないし、また、仮にその権限があったとしても、その決定は、恣意的であり、また、タイトル2の規定は、憲法の第1修正に違反するというものでした。

ワシントンDC控訴裁判所は、この規制ルールが、FCCに与えられた権限を超過するものとはいえないという判断を下しています(2016年6月14日)。具体的には、実際のブロードバンドの利用は、第三者のコンテンツに対する通信という実質をもつものであって、電気通信サービスであるといえるとしました。

その後、トランプ政権において、これらの議論をめぐる動向は、一変することになります。

(2015年月のオーダーの名称をタイトルⅡオーダーとしました)

ネットワーク中立性講義 その5 米国の議論 (ゼロレーティングの包摂)

この頃から、モバイルネットワークにおいて、いろいろいな契約の態様が生まれてきました。

モバイル通信サービスにおいては、データ通信量の制限を定める料金プランのもとで通信契約をなすのが一般です。これは、わが国でも同様です。しかしながら、特定のアプリケーションを利用する場合には、その通信量にカウントしないという内容になってきていました。。これは、ゼロレーティングといいます。T-Mobileは、音楽のストリーミングのプログラムにこの仕組みを導入し(2014年)、現在は、ビデオストリーミングまで拡張しています(2015年)。また、ベライゾン・ワイヤレスも、FreeBee Dataという名称で、音楽・ビデオ・アプリケーションダウンロードなどをデータ量にカウントしないサービスを開始しています(2016年)。

このゼロレーティングは、反競争的な行為なのではないか、特に特定の通信トラフィックの優先を禁止するFCCの規則に違反しているのではないか、という議論がなされるようになってきているのです。

モバイルの入り口の市場を考えてみれば、そこが寡占化されているのは、よくわかります。その寡占化されている市場における力を利用して、そのプラットフォームの上で提供される特定のサービスを有利に取り扱うことになれば、その特定のサービスの市場における健全な競争が阻害されるのではないか、ということです。このあたりを図にしてみると以下のようになります。

 

競争法(独占禁止法)の考え方ですが、基本的には、独占状態自体が悪いわけではないです。特定市場の状態を利用して、他の市場における競争に影響を与えたりすると問題が起きるわけです。モバイルの足回りの立場を利用して、ビデオ通信市場を押さえ込もうとしたりすると、具体的に、その競争はどうなるの、と考えなければならないことになることがわかるでしょう。

ゼロレーティングにおいては、賛成は、資源配分効率性の改善とネット利用環境の確保がなされるといいます。反対派は、コンテンツ市場にゆがみが出る、利用者のインテーネェントリテラシにゆがみがでると批判します。

この問題も、「ネットワーク中立性」という項目のもとで議論がなされています。

従来から、ネットワークのE2E原則等との関係で、ブロッキング、帯域制限などが「ネットワーク中立性」という項目のもとで議論されてきています(もともとは、BitTorrentあたりの帯域制限あたりが議論を活発にした契機に思えます)。さらに、このモバイルにおける契約の多様性をも含めるところまで議論が広がってきているということがいえるでしょう。これらの論点をまとめると、

E2E原則について E2E原則について、取り消すことについては、懐疑的にあるべきだ。 ネットワークは、中立ではないし、そうであったことはない。

今日のインターネットのサービスは、ただ単にネットの両端にあるわけではない

垂直統合に関する意見 「ネット中立性は、本当に、本当に重要だ。いまだかって、ネットのシステムのなかであなたのアプリケーション利用を絞られたことはないだろう。」

 

「ネット中立性が禁止している垂直統合の関係性は、実際には、価格を下げ、アウトプットを増やし、品質をあげるというように消費者に利益があるのだ」(FTC)
イノベーション ネット中立性のレギュレーションは、イノベーション等の重要な価値を促進させる ISPの単一料金設定やISPへの無制限のアクセスは、マネジメントのイノベーションを妨げる
言論の自由 言論の自由を守る効果がある

ということになるといえるでしょう。

寺田真一郎「ネット中立性 (net neutrality) - 米国の議論とルール化の様子 -」

ネットワーク中立性講義 その4 米国の議論(2014年まで)

2009年民主党オバマ政権に移行してから、FCCは、中立性規制の導入について諮問を開始していました。

この点についての参考文献は、東條吉純「米国連邦通信委員会によるネットワーク中立性規則-差別行為の規範的分類の試み-」になります。

2009年10月22日には、オープンインターネット規則制定案告示(以下,「2009 年NPRM」という)が公表されています。

この制定案では、2005 年政策声明の4原則のルール化に加えて,非差別的取扱い義務と透明性(情報開示)義務の2のルールが追加され,計6のルールが提案されています。

2010年4月のComcast控訴審判決で規制権限に関する判断がなされ、FCCは、そのような権限がないとされました。なお、Comcast控訴審判決については、実積 寿也「オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響
An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order」もご参照ください(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicr/32/1/32_1/_pdf)。

FCCは、2010年に入り、「第三の道」を提案し、6月17日、当該考え等を提案する「ブロードバンド・インターネット・サービスのための枠組みに関する調査の告示」を公表しています。(オリジナルは、リンク切れ?)

この枠組みは、ブロードバンドインターネットサービスについて(1)タイトル1の付随的権能として情報サービスとして継続して規制(2)タイトル2の電気通信サービスとして規制という従来の議論にくわえて(3)タイトル2の元で、電気通信サービスとして分類した上で、規制を差し控える という手法が提案されています。しかしながら、この提案は、2010年の中間選挙で、オバマ政権が大敗したこともあって、実際に政策されることはありませんでした。

2010年12月21日には、オープンインターネットオーダー(Open Internet Order)が公表されました。命令本文は、こちら。説明用スライドは、こちら

2010年オープンインターネット命令は、とりわけ、電気通信法の第706条に基づいて新たに主張された規制権限にもとづいています。

FCCは、この命令は、以下の原則と合理的なネットワーク管理の原則とあいまって、消費者およびイノベータを保護し、力をあたえるものであると考えています。

原則としいうのは、具体的には

(1)透明性原則
ブロードバンドインターネットアクセスサービスプロバイダは「ブロードバンドインターネットアクセスサービスのネットワーク管理の実践、業績、商業上の条件について正確な情報を公に開示する」義務がある

(2)ブロッキングなしルール
プロバイダは,合理的ネットワーク管理の名の下に、適法なコンテンツ、アプリケーション、サービスの利用、あるいは、ネットワークに障害を及ぼさない端末の接続を拒否してはならない

(3)非合理的差別の禁止ルール
プロバイダは,適法なネットワークトラフィックの伝送について不当な差別を行ってはならないというものである(この場合、合理的ネットワークの管理は不当な差別には該当しない)

になります。

これに対して、Verizon社は、2011年1月に、FCCの「Open Internet Order」は与えられた権限を越えたものであり、企業の権利を侵害しているとして裁判を起こしました。
そして、この裁判で、2014年1月には、連邦控訴裁判所が、上記原則のうち、透明性ルールについては、FCCが、そのような規制をするルールを有しているものの、ブロッキングなしルール、および非合理的差別の禁止ルールについては、規制する権限を有していないという判断をなしています
具体的には、「1996年の電気通信法第706条は、FCCに、ブロードバンドインフラの積極的な配備を促す措置を制定する権限をあたえている。FCCは、706条を合理的に解釈して、ブロードバンドプロバイダーが、インターネットトラフィックを扱いを規定する規則、特定のルールを制定する権限をあたえると解する理由があり、証拠によって支持される。それは、仮にこの分野に一般的な権限を有しているとしても、制定法の義務規定に矛盾する規定を設ける要求を課することはできない。FCCが、ブロードバンドプロバイダをコモンキャリアとしての取扱を排除する以上、通信法は、明確に、FCCに対して、そのようなものとして規制することは認めていない」
としました。
従って、ブロッキングなしルール、および非合理的差別の禁止ルールについては、効力を有しないとしたわけです。

ネットワーク中立性講義 その3 米国の議論(2008年まで)

Wu教授の概念が、どのように発展していったかについては、アメリカにおける議論の発展を参照するのが、有意義です。その前に、米国において、電気通信サービスに対してどのような規制体系が採用されているのかを確認しましょう。

米国の連邦法は、高度に規制がなされているコモンキャリアサービスとより規制のゆるやかなサービスに線がひかれています。

さかのぼること、1966年ですが、FCCは、「コンピュータと通信サービスの相互依存によって提起される規制と政策の問題(Regulatory and Policy Problems Presented by the Interdependence of Computer and Communication Services, Notice of Inquiry, 7 FCC 2d 11 (1966))」を公表しています。これは、基本サービスと高度サービス(enhanced service)の峻別を前提としています。

基本サービスというのは、「顧客が提供する情報との相互作用に関して実質的に透過的な通信経路上において純粋な伝送機能」を提供するものです。これは、「通信法」第II編の下で規制されています。

これに対して高度サービスは、基本的な伝送サービス以上の通信ネットワークで提供されるものです。たとえば、「コンピュータ処理アプリケーションであって、コンテンツ、コード、プロトコル、および加入者情報の他の側面に基づいて動作するものである」と定義されています。

この枠組みをさらに明確にしたのは、1934年通信法(Communication Act of 1934)に対する改正としての1996年通信法になります。

同法は、「インターネットと他のインタラクティブなコンピュータサービスは、政府規制が最低限であったことから、すべてのアメリカ人にとって利益となり栄えた」と評価し、「活気に満ちた競争的な自由市場を保護する」のが、米国の政策であると規定しています。

わが国でも、非常に注目された法改正であり、通信法の翻訳の書籍などが出ています。(とりあえずは、「米国通信市場における規制改革-規制産業から競争産業への転換-」をリンクしておきます)

同法は、わいせつ通信についての規制部分があり、その部分が違憲であるとして無効判決を受けたので有名であるということもいえるでしょう(その際に、ウエブページの背景が真っ黒にして、ネットユーザは、抗議の意図を明らかにしようとしたということもありました)。

同法は、通信分野の規制という観点からは、重い規制が適用される「電気通信サービス」とより規制のゆるやかな「情報サービス」の二分論を進めるという方向性を明確にしています。このあたりの参考としては、「インターネットを経由するコンテンツ配信サービスの発展が既存の情報通信 制度に与える影響に関する研究」を引いておきます。

その後、1996年法から2012年に至るまで、FCCは、二分論のアプローチを採用してきています。

1998年には、Steven Report(Report to Congress)(Universal Service Reportともいう)が公表されています。

ここでは、従来のユニバーサルサービスの議論が、急激に変化していく電気通信ネットワークのあり方として、どのように提供されるべきか、という点についての検討がなされています。そこでは、それまでの経緯についての分析がなされるとともに、「インターネットアクセスプロバイダーは、コンピュータ処理、情報提供、およびその他のコンピュータ仲介サービスとデータ転送を組み合わせており、純粋な伝送路を提供していない。」として、インターネットアクセスプロバイダーには伝統的な規制枠組が適用されていないのは、適切なことであるとされています。

2002年には、いわゆるCable Modem Orderが公表されています。

これは、ケーブルテレビによるインターネット接続に対する規制の枠組みをふれたものです。もともと1998年から、ケーブルテレビのオペレーターの合併等によるライセンスの移転に関して、どのような規制枠組みが適用されるのかというのが議論されていましたが、その点についての考えを明らかにしたものということができます。FCCは、「ブロードバントサービスは、最小限の規制環境として、投資とイノベーョシンを競争市場において実現すべきである」と判断して、ケーブルによるインターネットアクセスを「情報サービス」として、規制の緩い枠組を適用することを明らかにしました。この判断は、2005年に最高裁判所で維持されています。

2004年2月に、パウエルアメリカ連邦通信委員会 (FCC) 議長は、シンポジウムにおいて、米国は、ハイスピードのより利用可能なプラットフォームのチャンピオンであり続け、それを活用していくであると述べました。そして、人民に力を、公開性の維持、水平線の障害となりうるものの除去、「インターネット自由」の消費者の権利の付与、インターネット自由の保持の主たる恩恵などを謳っています。特に、インターネット自由として、コンテンツにアクセスする自由、アプリケーションを利用する自由、個人デバイスを接続する自由、サービスプラン情報を取得する自由があげられているのは注目にあたいするでしょう。

「インターネット自由」を強調する立場は、2005年のインターネット政策綱領 に引き継がれています。

このステートメントは、序において、通信法230条(b)のインターネットに存する 競争的な市場を維持し、インターネットの継続的な発展を促進するのがポリシであるとしています。そして、議論において、「インターネットブロードバンドにおけるコンテンツ、アプリケーション、サービスその他の創造、採用、利用を促し、競争からもたらされるイノベーションによる恩恵を消費者に確かにすることを目的とする」ものであるとしています。

また、Appropriate Framework for Broadband Access to the Internet over Wireline Facilities  

また、2005年には、Wireline Broadband Classification Order が公表されており、有線設備を用いたブロードバンドインターネットは、情報サービスであると分類されています。この命令では、有線設備を用いたブロードバンドインターネットは、FCCの従前の議会への報告、最高裁判所の意見とあわせてインターネット情報サービスであると分類されることを確認しています。

同命令は、コンピュータ諮問体制、コンピュータ諮問要件の排除、その要件がもはや適切ではないこと、有線ブロードバンドの市場が出現して急速に変貌していること、技術のイノベーションが進んでいること、新規のサービスが生まれていること、などを上記の分類の根拠としてあげています。もっとも、この分類になるとしても、連邦のユニバーサル・サービスの義務が継続され、法執行・国家安全・緊急準備への対応などの義務が課されることになっています。

同年には、Madison Riverというローカルネットワーク事業者がライバルであるVoIPサービスの接続を拒絶しようとしたことに対して、FCCがこれを防止しようとした事案があります。同意審決は、こちら。Madison Riverが、制裁金を支払うことと、VoIPアプリのブロッキングをしないことを同意しています。

2007年には、Wireless Broadband Internet Access Orderが明らかにされ、ワイヤレスによるブロードバンド接続が、より規制のゆるやかな情報サービスとして認識されること、ワイヤヤレスの通信コンポーネントが通信であること、通信送信コンポーネントは、通信サービスではないこと、が明らかにされました。ブロードバンド接続が情報サービスとにして認識されることによって、「「無線ブロードバンド・インターネット・アクセス・サービスは、エンド・ユーザーへの単一の統合サービス、インターネット・アクセスを提供し、データの伝送をコンピュータ処理と密接に結合する 、情報提供、コンピュータインタラクティビティなど、エンドユーザがさまざまなアプリケーションを実行できるようにする」ことができるようになるとされています。

その後、同年には、FCCは、AT&TとBellSouthの合併に際して、他の会社が利用者に提供するアプリケーションをブロックしないようにと命じた(ただし、テレビについては、適用しない選択あり)。

さらに、2008年には、ケーブル・ブロードバンドのISPであるComcastが、P2PネットワークであるBitTorrentに対して帯域制限をかけたのに際して、FCCは、これを反競争的行為であるとしました。この帯域制限の実際が、差別的で、恣意的で、ネットワークマネジメントとはいえないとしたのです。この命令は、Comcast-BitTorrent Orderといわれますが、これは、こちら

もっとも、この判断に対して、ComCastは、FCC には、このような命令をなす権限がないのではないか、という訴訟を提起します。そして、この事件において、2010年4月には、ComCast控訴審判決がなされました。この判決は、付随的管轄権を発動できるための法的権限をFCCに与えた具体的条項が十分に論証されていないとしたものです。この点については、実積 寿也「オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響」が詳しく述べています。

(ちなみに、実積先生からは、訳語等についてアドバイスをいただき、直している部分があります。ありがとうございます。)

英国情報コミッショナーにおけるGDPR同意ガイダンス

英国の情報コミッショナーにおいて、「GDPR同意ガイダンス」についての諮問がなされました。

内容については、詳細に検討する必要があるのですが、5 頁の要約(In brief)では

(1)GDPRは同意のための高い基準を定めているが、一番の変化は同意メカニズムへの及ぼすものと考えられる
(2)GDPRでは、同意の表示はより明確で、より積極的な行為をなさなくてはならないということがより明らかになっている。
(3)同意は、(契約に関する)他の条項や条件とは別にする必要がある。また、契約の提供をうける(サインアップ)の前提条件とすることはできない
(4)GDPRは特に事前にチェック済みのオプトインの同意ボックスを禁止している
(5)GDPRは、明確な処理の作業についての明細な(granular )同意を必要としている
(6)同意を明らかにするために明確な記録を保持しないといけない
(7)GDPRは、同意を撤回する特別の権利がある。利用者にたいして、その権利があることを周知し(tell)、容易な方策を提供しないといけない。
(8)官公庁、雇用者および権限を有する(in a position of power)その他の組織は、有効な同意を得るのに、より困難を伴うことを理解するだろう
(9)GDPRの標準に適合するのを確認するために、現依存する同意および同意メカニズムを確認する必要がある。そうすれば、新たに同意をとる必要は存在しない。

ということが記載されています。

これは、GDPR4条(11)において
「データ主体の「同意」とは、強制を受けず、、特定的に、情報提供を受けたうえでかつ曖昧でないデータ主体の意思表示であることを意味する。その意思は、当該データ主体
が、宣言又は明らかな積極的行為によって、自己に係る個人データの取扱いに合意(agreement)して表すものとする。」
とされていること、また、同7条において
「1. 管理者は、データの対象者が自身の個人データが定められた目的のために処理されるということに同意していることを明らかにすることができるべきである
2.データの対象者の同意が別の案件を含む書面において与えられる場合には、その同意の要件がその別の案件と区別できる方法によって明示されなければならない。
3.データの対象者本人は、いつでも同意を取り下げる権利があるものとする。また、同意の取り下げは、取り下げる前の同意に基づく処理の合法性になんら影響を与えない。
4. データの対象者の立場と管理者のそれとの間に大きな不均衡がある場合には、同意は処理のための法的根拠にはならない。」
とされているのに関するものです。

(なお、翻訳については、一般財団法人日本情報経済社会推進協会によりました)

でもって、この点については、29条委員会は、以前「Opinion 15/2011 on the definition of consent」(WP187)を出しており、それとGDPRとの関係も検討しなければならないことになります。このガイダンスによるとWP187とグッドプラクティスを法典化したものということになるそうです。

この変更は、ICOによると「組織的、継続的、積極的な管理された選択(an organic, ongoing and actively managed choice)としての同意という思想をダイナミックに表しているもの 」と評価されることです。
従来も、たとえば、英国においての同意は、電気通信分野においては「付加価値サービスを提供するのに際して、その事前の同意を取得しなければならない。同意を取得する以前に、通信プロバイダは、利用者・加入者に対して、⑴処理される位置情報のタイプ、⑵データの処理目的及びその期間、⑶付加価値が提供されるのに際して、データが第三者に送信されるか、どうかという情報を与えなければならない。」とされていましたし、また、「データがどのように利用され、その利用について同意する結果がどうなるのかについて広範囲に理解ができるような明確な情報が与えられるべきである。」とされていました。

この実務から、どのように変化していくのか、今後の動向が注目されるところです。

個人的には、同意といっても、安全のため、損害を防止するためからコマーシャルのためまでいろいろとあるわけで、それを一律のルールというのは、あまり賛成できないなあという感じです。あと、同意は、実は、経済的な価値があるので、アンバンドルするというのは、その価格の評価をどうするのか、という論点も出てきそうです。行き過ぎだよね、という感じは、しますけど、おもしろい論点を提供してくれます。

デジタル証拠WS 参加ありがとうございます。

第一東京弁護士会のデジタル証拠セミナーに参加いただきました方々ありがとうございます。

私もパネルディスカッションの司会の大任を果たさせていただきました。

特にプライバシと内部調査とのバランスの論点は、うまく説明できたかと思います。

企業秩序違反の合理的疑いがあるかどうか、それがない場合ですと、事前に周知が必要ですが、公平なモニタリングが許容されることになります(「労働者の個人情報の保護に関する行動指針」労働省(当時)参照)。

ある場合だとさらに詳細な調査が可能であり、また、望まれるということかと思います。これについては、東京地裁の二つの判決例(F社事件-平成13年12月3日労働判例826号76頁、N社事件-平成14年2月26日判決・労働判例825号50頁)があります。