民事執行法等の改正のひとつの大きなテーマは、債務者の財産状況の調査に関する規定の整備になります。
判決をもらっても、最終的には、執行ができなければ、絵に書いた餅になります。ところが、なぜか我が国では、判決手続までについては、比較法的な検討が進んでいたのですが、執行が効果的になされるか、という点についての興味が比較的(というか、かなりの程度)低かったような感じです。
今回の改正で、かなりの程度が見直しされたということができるかと思います。あとは、実務で実際にどのような運営になるか、ということが注目されるかと思います。
この規定の整備は、1 現行の財産状況の調査に関する規定の整備 と 2 第三者からの情報取得手続の新設にわかれます。
1現行の財産状況の調査に関する規定の整備 は、さらに、(1)実施要件の見直しと(2)手続違背に対する罰則の見直しにわかれます。
(1)は、197条1項において「執行力のある債務名義の正本(債務名義が第二十二条第二号、第三号の二から第四号まで若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない」となっていて、民事執行法22条における
「(債務名義)第二十二条
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)」
となっているところから、これらが除かれていました。
しかし、金銭債権についての強制執行の申立てに必要とされる債務名義であれば、いずれの種類の債務名義についても、財産開示手続の申立てをすることができるようにしました。
(2)は、財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者や、財産開示期日において宣誓した開示義務者であって、正当な理由なく(略)陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたものについての罰則を強化するものです。213条(陳述等拒絶の罪)は、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するとなっています。
2 第三者からの情報取得手続の新設
これは、具体的には、(1)不動産にかかる情報の取得、(2)債務者の給与債権に係る情報の取得 (3)債務者の預貯金債権等に係る情報の取得が、整備されることになりました。
そもそもですが、第四章が、債務者の財産状況の調査となって、財産開示手続に加えて、「第二節 第三者からの情報取得手続」となっています。
(1)については、執行裁判所が、登記所に対して、強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて情報の提供をすべき旨を命じなければならない、とされています(205条)。
(2)については、債務者の給与債権に係る情報の取得として、執行裁判所は、特定の場合に、市町村や、年金機構等に対して、給与債権にかかる情報を提供しなければならないとしています(206条)。
(3)については、債務者の預貯金債権等に係る情報の取得として、執行裁判所は、銀行等に対して、預貯金債権(略)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものに関する情報を提供すべき旨を命じなければならないとしています(207条)。
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