TV SuitsとチャットボットThe Donna

米国弁護士もののお気に入りのSuits シーズン6で、お話に、The Donnaというスーパー秘書のAIスピーカーが登場します。

ドナ・ポールセンの言い回しと能力を備えたAIスピーカー(?)という設定ですが、昨年来のAIスピーカーブームをうかがわせますね。

自分としては、音声認識と相談アルゴリズムを組み合わせるというのは、興味深いので、そういうのからも面白がっていました。もっとも、ネットでの評判は、ストーリーからはずれているのでは、という声も多いみたいですが。

 

テナント弁護士募集中です

所属事務所の決まっていない修習生の方々

駒澤綜合法律事務所では、テナント弁護士を募集中です。(何年かの経験のある弁護士さんも歓迎します)

俗に、いわゆるノキ弁というスタイルになるかと思います。条件については、事務所の法律相談のページからお問い合わせください。

所長 高橋郁夫

弁護士ドットコムの取材を受けました

弁護士ドットコムさんの取材を受けたのが記事になりました。「無線機で他人の「家庭用コードレス電話機」の会話が聴ける…これって法的に問題なし?」という記事です。

電波法の「通信の秘密」というのは、電気通信事業法の通信の秘密とちょっと違うのに気がついてもらいたいですね。

ちなみに、「無線通信を愛好する法律家協会(JQ1ZOR)」という団体がありまして、その監事を務めさせていただいています。

相続・離婚から、IT関係まで、幅広く対応しております。(刑事は、事務所の他の弁護士さんが対応してます)

お気軽にご相談ください。

高橋郁夫

英国におけるGDPR対応の状況-情報コミッショナーの対応

英国の情報コミッショナーにおける対応

(1)概要

情報コミッショナー(ICO)は、GDPRの適用について、「データ保護改革(Data protection reform)」として、専門に解説をなしています。

また、情報コミッショナーは、2017年5月25日に、企業に対して、30年来でもっとも大きなデータ保護法の変革であるとして、準備に遅れることは許されないと(ブログで)発言しています

情報コミッショナーは、GDPRの適用までの準備については、三つのフェーズで準備されるということを明らかにしています(Guidance: what to expect and when
具体的には、
フェーズ1  精通し基礎を固めること(Familiarisation and key building blocks)
フェーズ2 ガイダンス構築およびマッピング、過程の検討および関連ツールの発展( Guidance structure and mapping, process review and initial development of associated tools)
フェーズ3 大量のガイダンスの最新か/提出および検討(Bulk guidance refresh/production and review)
ということになります。

現時点においては、英国は、第1段階から、第2段階に移行する途上であると認識されています。

現時点までに、情報コミッショナーは、
GDPRに備える、現在なすべき12のステップ(Preparing for the GDPR: 12 steps to take now)」
GDPRの概要(Overview of the General Data Protection Regulation (GDPR))」
プライバシー通知、透明性およびコントロール(Privacy notices, transparency and control)」(プライバシー通知実務規範)
同意ガイドライン・パブリックコメント案
プロファイリング・パブリックコメント案
ビッグデータ分析(バージョン2)
を公表しています。

(2)「GDPRに備える、現在なすべき12のステップ(Preparing for the GDPR: 12 steps to take now)」

「GDPRに備える、現在なすべき12のステップ」は、まさにGDPRに備えるために気をつけるべき12のステップを明らかにするものです。
具体的には、
(1)意識(2)保持している情報(3)プライバシー通知(4)個人の権利(5)主体のアクセス要求(6)個人データ処理のための法的根拠(7)同意(8)児童(9)データ侵害(10)データ保護バイ・デザイン、データ保護インパクト評価(11)データ保護責任者(オフィサー)(12)国際関係
にわけて、GDPRに対応するためにとるべき行為をまとめています。

(3)「GDPRの概要(Overview of the General Data Protection Regulation (GDPR))」

GDPRの概要は、組織において、GDPRの重要なテーマを明らかにして、新しい法的枠組を理解するのに一助としようというものです。

具体的に、原則、考慮すべき重要なエリア、個人の権利、説明責任およびガバナンス、データ侵害通知、データ移転、国における適用免除から成り立っています。

原則については、個人の権利/個人データの移転禁止が原則としては記載されていないこと、アカウンタビリティの原則が追加されていることが触れられています。

考慮すべき重要なエリアについては、適法な処理、同意、児童の個人データがあげられています。

個人の権利については、情報を提供されるべき権利、アクセス権、訂正権、消去権、処理制限権、データポータビリティの権利、異議権、自動化された意思決定およびプロファイリングに関する権利について説明がなされています。

説明責任およびガバナンスにおいては、その原則の意義、処理の記録、データ保護バイ・デザイン、データ保護インパクト評価、データ保護責任者(オフィサー)の選任時期、行動規範と認証メカニズムが議論されています。

データ侵害通知においては、その概念、監督機関への通知義務の発生、個人への通知の要否、通知方法、準備について触れられています。

データ移転においては、データ移転が許容されるのが、十分性決定に基づく移転の場合と、適切な保護措置に従った移転があるのか説明されています。

国における適用免除については、GDPR23条が、制限規定を有していること、同9章が、適用除外・例外を定めていることが論じられています。

(4)プライバシー通知、透明性およびコントロール

これは、個人データの取得に際して明らかにされるプライバシー通知(告知されるプライバシーの取扱等に関する情報)に関して、良き実務についてガイダンスを与えようとする行動規範ということになります。

内容としては、効果的なプライバシー情報を提供する理由、プライバシー通知に含まれるべきもの、個人に告知される場所、告知されるべき時機、記載される方式、テストおよび調査、チェックリスト、実際、GDPRとの関係にわけて検討されています。

(5)同意ガイドライン・パブリックコメント案

(6)プロファイリング・パブリックコメント案

これらについては、またの機会ということにしましょう。

英国におけるGDPR対応の状況-政府の対応

GDPRについて、英国政府は、2017年4月17日には、「GDPR除外規定に関するコメント募集(Call for views on the General Data Protection Regulation derogations)」を公開しています。英国政府は、事業に対して、不必要な負担を課さないように、交渉を行った旨の見解を明らかにしています、また、GDPRは、(それ自体が、規則であって、柔軟性に乏しいとはいうものの)特定の規定が適用される場合について各国が国内法で、除外規定を定めることについて、英国がやはり裁量を行使しうることになります。

このパブリックコメントは、回答方法・背景のあとに諮問項目が掲載されています。

もっとも、この諮問項目自体は、テーマ1 監督機関 テーマ2 制裁 テーマ3 コンプライアンスの顕示 テーマ4 データ保護オフィサー テーマ5 保管および調査 テーマ6 第三国移転  テーマ7 機微個人データおよび例外 テーマ8 刑事制裁 テーマ9 権利および救済 テーマ10 オンラインサービスについての子供の個人データ テーマ11 メディアにおける表現の自由 テーマ12 データ処理 テーマ13 制約 テーマ14 教会および信仰集団に関するルール に大きくわけて、関連する条文のみが記載されているにすぎません。
このパブリックコメント募集に対しては、324の応募があり、これらの意見は、公開されています 。

また、2017年5月には、「GDPRのもとで、個人データ権の定量化の調査および分析(Research and analysis to quantify the benefits arising from personal data rights under the GDPR)」という報告が公開されています。

この報告は、GDPRの改正によって充実する情報主体の権利について、消費者は、それらが、採用されることについて、5-10パーセントの価格に匹敵するものと考えていること、また、高額な罰金の存在が非常に高く評価されていることを述べている。

8月7日には、データ保護法案の趣旨説明(statement of intent)が明らかにされています。
この趣旨説明は、デジタル担当大臣からの序に続いて、1 デジタルエコノミー 2 私たちのデータ保護改革 3 改革の実装 4 前向指向 という構成になっています。

2 私たちのデータ保護改革は、概観、個人の保護(プライバシー、データアクセスの改善、データポータビリティ、忘れられる権利、プロファイリング)、組織の保護(アカウンタビリティ、データ保護侵害のリスク低減支援、簡単なルール)、タフな規制当局(調査権限、民事制裁、刑事制裁、ジャーナリスト・内部告発社の保護)、法執行目標のためのあつらえ対応枠組から成り立っており、それらについて、それぞれ詳細な叙述があります。

3 改革の実装は、国内のデータ保護法を位置づけることは、重要であるとして、GDPR、データ保護法執行指令、欧州評議会個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約との一貫性がとられていなければならないとするものです。

この章において、GDPRは、新たな権利とデータコントローラとプロセッサーに対する義務を導入していると説明しています。

そこでの新たな権利は、アクセスの権利、データポータビリティ、忘れられる権利、法的救済である。
また、新たな義務としては、データ侵害通知義務、通知通告の廃止、データ保護インパクト評価、データ保護オフィサー、行政的制裁があげられています。
そして、データ保護法については、GDPRにおける適用免除の行使、一般的データについてのデータ保護標準の適用、データ保護法1998の廃止が述べられています。そして、パブリックコメントの結果が報告されています。
また、適用除外の議論として、児童をオンラインで保護するための同意の問題、刑事判決・犯罪データの処理、自動的個人判断生成の問題、メディアにおける表現の自由の問題、調査の問題が議論されています。

4 前向指向 においては、サイバーセキュリティとデータ保護、データ・貿易・ヨーロッパ共同体が議論されています。

ネットワーク中立性講義 その15 ゼロレーティングと利害状況(2)

(2)利用の公平の問題

電気通信事業法6条は、(利用の公平)として「電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としています。

この規定の趣旨は、電気通信役務の提供契約の締結にあたり、また、その提供にあたって、特定の利用者を正当な理由なく差別して有利にまたは不利に取り扱ってはならないという意味であるとされています(2008逐条解説 43頁)。

「不当な差別的取扱い」とは、「国籍、人種、性別、年齢、社会的身分、門地、職業、財産などによって、特定の利用者に差別的待遇を行うことである」と解されています。では、インターネットでのAアプリを使うものだけ、データ量がカウントされないというのは、どうでしょうか。この利用者は、Bアプリを普段使っていても、Aアプリを使えば、データ量がカウントされないので、「特定の利用者」という概念には、当てはまらないようにもおもえます。(この概念自体が、例示も含めて、個人属性によって特定される利用者というのを前提としているようにおもえます)

(3)通信の秘密の保護

電気通信事業法4条は、(秘密の保護)として
「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2  電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。(略)」
としています。

ところで、実際にゼロレーティングを利用するのにあたっては、技術的にDPI技術を利用しなくてはならず、上記の通信の秘密の侵害になるのではないか、という解釈論も出てくるのです。そうは、いっても、利用者は、いつも悩んでいたデータ使用料を気にしなくていいのだから、どう考えたって、同意があるでしょう、ということになるのですが、そうは、いかず、「通信の秘密(通信内容にとどまらず、通信当事者の住所、氏名、発信場所、通信年月日等の通信構成要素及び通信回数等の通信の存在の事実の有無を含む。)に該当する個人情報の取扱いについては、通信の秘密の保護の観点から、原則として通信当事者の個別具体的かつ明確な同意が必要となり、通信当事者の具体的な委任によらない代理人等の同意によることはできない。」とされています(電気通信事業における 個人情報保護に関するガイドライン(平成 2 9 年総務省告示第 152 号 )の解説)31頁。

特定のサービスを特定の利用者Aがいつ利用したのか、いつ利用を終了したのかというのは、上記の「通信の秘密に該当する個人情報」に該当するように思えます。すると、「個別具体的なかつ明確な同意」が必要となると解されます。
「個別具体的」というのは、「利用するその時点」において、「どのような同意をするか、相当程度詳細に情報が提供されて」と解さざる上ないと思われます。すると、ゼロレーティングは、この解釈を厳格に採用する限りにおいて、実際、不可能ではないかと考えられます。もっとも、通信の秘密をめぐる解釈は、金科玉条たる解釈論と、個別に対する解釈論が、遊離している状態(緊急避難の緊急性が非常に緩かったりしますし)ともいえるので、むしろ、利用者にとって、有利になる場合には、「個別具体的」は、「利用する時点」でなくてもいいという解釈が採用されるという日も来ているかもしれません。

個人的には、「窃用」を「自己または他人の利益のために」利用することという枕言葉を復活させるとか、同意の有効性は、文脈によって判断されるとか、通信の秘密は、もっと、大胆に見直すところがあるように思えているのですが、肥大化の解釈をみなおさないでパッチを当てているところで居心地が悪くなっているような気がします。

ネットワーク中立性講義 その14 ゼロレーティングと利害状況(1)

従量制の通信サービスの課金対象から、特定のサービス・アプリケーションを除外するという「ゼロレーティング」は、果たして、法的に、どのような状況にあるのか、というのを考えていくことにしましょう。

ここで、法的にどのような状況にあるのか、というのは、基本的には、(1)適正な競争状態の維持 (2)利用の公平の問題 (3)通信の秘密の保護 の観点から考えることができるということがいえます。

(1)適正な競争状態の維持

そして、さらに、、(1)適正な競争状態の維持というのは、法的にみて、一定の要件に該当した場合に当然に違法と考えられる場合(電気通信事業法の非対称規制に違反する場合)と個別具体的な市場の競争状態・具体的な行為の内容に応じて違法性を検討しなければならない場合(独占禁止法の具体的な私的独占等の違反を考える場合)とに分けられます。

ここで、接続市場とコンテンツサービス市場を考えてみます。

A) まずは、二つの市場を考えて接続市場における一定の市場力を濫用する場合を考えることにしましょう。

電気通信事業法の非対称規制に違反するばあいには、当然に違法と考えられることになります。(非対称規制が、一定の市場力をもとにした定型的な規制ということもできそうです。-あまり、そういう表現を用いる人はいませんが)

具体的には、NTTドコモについて、禁止行為規制が適用されており(事業法30条1項)、情報の目的外流用の禁止、不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止、他の事業者等に対する不当な規律・干渉の禁止が適用されることになります。(ちなみに、以下の指針においても、電気通信事業法違反かどうかについては、上記の禁止行為規制を検討している)。

これらの行為に該当しない場合でも、個別・具体的な行為については、何度も触れている「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の考え方で、独占禁止法に触れるかどうかの判断がなされることになります。この指針は、コンテンツの提供に関連する分野について、具体的には、メニューリストの掲載についての例にあげて、独占禁止法違反を論じています。前のエントリでも触れましたが、ちょっと、現代的ではないように思えます(単に、私が、SIMフリーで、キャリアのサービスと無縁だからかもしれませんが)。(もっとも、細かく見ていくと、指針43頁における「自己の電気通信役務と併せて他の商品・サービスの提供を受けると電気通信役務の料金又は当該他の商品・サービスの料金と電気通信役務の料金を合算した料金が割安となる方法でセット提供する場合」と利益状況は、同一であるということもできるでしょう)

そうは、いっても仕方がないので、ここで、その具体的な例を、ゼロレーティングに置き換えて考えてみましょう。

55頁(2)は、システム運用事業者が、コンテンツプロバイダーと他のシステム運用事業者との取引を制限する条件を付けて当該コンテンツプロバイダーと取引したり、メニューリストへのコンテンツの掲載に際して、自己又は自己の関係事業者と比べて、他のコンテンツプロバイダーを不利に取り扱ったりすること等を問題にしています。これをすこし、ゼロレーティング風にアレンジできないか、考えてみましょう。

a) 独占禁止法上問題となる行為
 市場において、相対的に高いシェアを有するシステム運用事業者が、行う以下の行為は、独占禁止法上問題となる。

①自己のデータ課金システムにおいて、既に、他のコンテンツに比して(ゼロレーティング等の)有利な取扱がなされている、または、有利な取扱を求めようとするコンテンツプロバイダーに対して、競争事業者に対して他のコンテンツに比して有利な取扱を求めることを禁止すること、競争事業者においてそのコンテンツプロバイダーが、他のコンテンツに比して有利な取扱を求める場合には、既になしている有利な取扱を中止すること等を条件とすることにより、競争事業者の電気通信役務市場への新規参入を阻止し、又はその事業活動を困難にさせること(私的独占、排他条件付取引等)

② コンテンツを有利な取扱をさせる条件として、コンテンツプロバイダーと顧客との間におけるコンテンツ提供に係る料金その他の提供条件等の設定に関与することにより、当該コンテンツプロバイダーの事業活動を困難にさせ、又はコンテンツ提供市場における競争を阻害するおそれを生じさせること(私的独占、拘束条件付取引等)。

③ システム運用事業者がコンテンツプロバイダーに有利な取扱する場合に、その取扱の条件について、コンテンツを提供する自己又は自己の関係事業者に比べて、他のコンテンツプロバイダーを不利に取り扱うことにより、当該コンテンツプロバイダーの新規参入を阻止し、又はその事業活動を困難にさせること(私的独占、差別取扱い等)

ということは、いえるでしょう。

b)電気通信事業法上問題となる行為
 指針57頁は、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が、コンテンツプロバイダーの業務について不当に規律し、又は干渉すると認められる場合の問題となります。その意味では、移動体通信市場を考えている限り、具体的に、電気通信事業法の非対称規制が問題となることは、考えにくいことになるようにおもえます。

B)二つの市場のうち、逆に、コンテンツサービス市場の市場力を濫用する場合を考えることにしましょう。

もっとも、ここでは、おおざっぱにコンテンツサービス市場という表現をしましたが、このように、携帯端末で、コンテンツを楽しむという行為に関して、どのような市場が形成されているとみることができるのか、というのは、きわめて困難におもえます。

そもそも、コンテンツを楽しむ市場というのは、携帯端末と自宅での固定での楽しむ行為とで、市場が分かれているのでしょうか。
また、SNS市場ということを考えることができるのでしょうか。LINEは、SNSなのか、チャットツールなのか、という問題も起きそうです。チャットツールとした場合に、(通常のインターネット)メールの代替品なのでしょうか。メッセージング自体は、無料をというビジネスモデルの場合にSSNIPテストの有効性は、どのようにかんがえるべきなのでしょうか。まだ、未解決の問題が山積ししているということがいえるでしょう。

この市場画定によって、市場力の判断も左右されることになります。

もし、市場が画定されれば、それにもとづいて市場力を判断することができます。その市場において、支配的地位を有すると判断される場合には、具体的な市場力の濫用の可能性がでてきます。もっとも、コンテンツサービス市場における市場力を利用して、接続市場における競争を優位に進めるとしても、接続市場自体は、巨大であり、競争相手に対して、競争が成り立たないレベルまで追い込んで、そのあとに価格を上昇させるという戦略がなりたつともおもえないので、実際に濫用の規制が働くことはきわめて低いようにおもえます。

C) 同一の会社が、二つの市場をまたぐ場合も上の判断と同様になります。

ネットワーク中立性講義 その13 競争から考える(5)

その12で「非対称規制」について触れました。

固定通信市場と移動体通信市場にわけて考えてみましょう。

(1)固定通信市場

ここで、固定系の市場というのは、実際の利用の場所(家庭なり、事業所なり)から、インターネットへの接続が固定線で行われている場合をいうことになります。

市場の構造としては、NTT東西が、サービスベースで、70%、設備ベースで、78パーセントになります。(データについては、「電気通信事業分野における市場の動向」による)

競争事業者としては、CATV(例、近鉄ケーブルネットワーク)が、光シェアで、3.4%、電力系事業者(例、ケイ・オプティコム)(同 8.9%)、KDDIが12.8%になります。

でもって、この接続サービスの上に、さまざまなサービスが乗っかって(?-Over The Topと呼ばれることもあります)、提供されるということになります。

代表的なものとして、動画配信サービスがあります。この市場規模は、2016年において、1636億円になり、シェアは、上位から、「dTV」、「Hulu」、「U-NEXT」となるとされています(動画配信(VOD)市場に関する調査結果)。

非対称規制の関係からいうと、接続市場と動画配信市場を考慮することができるわけです。ここで、NTT東西は、第一種指定電気通信設備ということになるので、情報の目的外流用の禁止、不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止、他の事業者等に対する不当な規律・干渉の禁止が適用されます。その意味で、接続市場の支配的地位を濫用することができなくなっています。

「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」があって、そこでは、独占禁止法上、電気通信事業法上問題となる行為が明らかにされています。具体的には、54頁以下において、第四 コンテンツの提供に関連する分野で議論されています。

もっとも、ここであげられている具体的な問題は、移動体電気通信市場において議論されるものが多いので、議論としては、そちらですることにしましょう。

(2)移動体通信市場

移動通信市場は、携帯電話・スマートフォーンなどで通信をする市場ということになります。(もっとも、細かくみていくと、通話とインターネット接続とが、どのような関係になっているのか、というのを問題とすることはできそうですが、一般には、考えていないようです)。

市場シェアでみていくと、NTTドコモは、携帯電話等シェア 43.3%、KDDIグループ(UQを含む)は、28.9%、ソフトバンクグループは、27.8%となっているとのことです。

それぞれの設備が、第二種指定電気通信設備として指定されていること、また、NTTドコモが禁止行為規制適用(事業法30条1項)事業者となっていることになります。

ここで、現在は、移動体端末上において、ゲーム、音楽、動画、電子書籍等の各種サービス(コンテンツ)を利用することが可能になっています。上記の「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」においては、このコンテンツ利用について、種々の行為が議論されています。

指針においては、端末の操作によってアクセスすることができるメニューリストの掲載について議論がなされています(詳細は、55頁以下です)。

もっとも、私のように、SIMフリーで家族のパケット代節約こそが、移動体の使いこなしの肝と考えている人間には、このような問題の設定は、若干?だったりします。(報告書が、平成28年5月なので仕方がないといえば、仕方がないのですが)現在は、パケットの所定データ量の上限に達した場合に、通信速度が制限されるので、その所定データ量の算定に、特定のコンテンツを利用している場合に、データ量として算定しないということが許されるのか、という問題のほうが、重要なようにおもえます。

この問題は、「ゼロレーティング」の問題と呼ばれています(やっと、この問題に戻ってきました)。従量制の通信サービスの課金対象から、特定のサービス・アプリケーションを除外するものと定義することができるでしょう。

ゼロレーティングの問題は、競争に及ぼす影響を主に、その余の問題についても、広く考えていくということになります。エントリを変えて考えることにしましょう。

ネットワーク中立性講義 その12 競争から考える(4)

米国で議論になっている中立性の議論をわが国に置き換えると、NTT東西の関係会社が、ビデオ配信を行いたいと考えたとして、NTT東西が、そのビデオ配信会社の講読料を、パック料金のような形で、極端に割引するということが許容されるのか、というのが、そのもっとも大きな問題の一つということになるかとおもわれます。また、モバイル通信のシェアを有している携帯電話会社が、関連するビデオ配信会社に通信するパケット量を、その料金で算定するパケット量に算定しないというのは、どのように位置づけられるのか、という問題にもなります。

その11で、通信市場と競争の関係について、固定系の市場と移動系の市場とにわけて、みてみたわけですが、わが国で、そのような市場における競争上の地位を濫用する行為に対して、どのような法的な準備がなされているのか、ということについて触れる必要があります。

この点では、まず、電気通信事業法における「非対称規制」についてふれる必要があります。非対称規制というのは、「電気通信事業が国民生活及び社会経済活動の基盤として高い公共性を有することにかんがみ、従前のボトルネック設備に着目した規制に加え、一定の市場において市場支配力の濫用を継続的に防止、除去するための必要最小限のルールを導入することを目的としたもので、」市場支配力に着目して「市場支配的な電気通信事業者をあらかじめ特定して一定の行為規制を通常の電気通信事業者とは非対称的に課すこととするという制度をいいます。その規制についての基本的な考え方は、市場支配的でない事業者に対する規制を大幅に緩和するとともに、市場支配的な事業者にたいして現行規制をベースとしつつ、料金サービス面を含め極力緩和するというものです。

非対称規制の全体像については、また、別の機会ということにして、この非対称規制のための概念として、電気通信事業法は、第一種指定電気通信設備と第二種指定電気通信設備という概念の定義を準備しています。

前者の第一種指定電気通信設備は、法33条2項において、「他の電気通信事業者の電気通信設備との接続が利用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に欠くことのできない電気通信設備」として定義されています。この通信設備は、「その一端が利用者の電気通信設備(移動端末設備を除く。)と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備の電気通信回線の数の、当該区域内に設置される全ての同種の伝送路設備の電気通信回線の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該区域において当該電気通信事業者がこれと一体として設置する電気通信設備」で総務省令で定めるものの総体として、「総務省令で定める」とされています。

実際としては、この「第一種指定電気通信設備」として、NTT東西の設置する電気通信設備が、指定されています。

この通信設備を設置する事業者は、同法30条4項により、

(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)

(2)不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止(2号)

(3)他の電気通信事業者または電気通信設備製造業者・販売業者に対する不当な規律・干渉の禁止(3号)

の各義務が課されることになります。

また、移動体通信市場については、第二種指定電気通信設備の規定が問題となります。

第二種指定電気通信設備は、特定移動端末設備によって公正される市場において、他の電気通信事業者の電気通信設備との適正かつ円滑な接続を確保すべき電気通信設備として指定される設備として定義されます。

これは、その一端が特定移動端末設備と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数の、その伝送路設備を用いる電気通信役務に係る業務区域と同一の区域内に設置されている全ての同種の伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該電気通信事業者が当該電気通信役務を提供するために設置する電気通信設備であつて総務省令で定めるものの総体なのですが、その中で、最近一年間における収益の額の当該市場における収益のシェアが総務省令で定める割合を超える場合においては、他の電気通信事業者との間の適正な競争関係を確保するため必要があると認めるときは、同法30条3項の

(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)

(2)不当な優先的取扱・利益供与の禁止(2号)

の義務を負う事業者として指定されることになっています。

実際としては、この「第 二種指定電気通信設備」として、業務区域内で端末シェア10%超を有する携帯電話事業者(NTTドコモ、 KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクモバイル)指定されています(電気通信設備の接続に関する現状と課題

「非対称規制」についての説明が長くなりました。エントリを変えて、説明を続けましょう。

見えてきた現実、ロボットにも法的責任 (AIと世界)

「見えてきた現実、ロボットにも法的責任 (AIと世界)」という記事がでています。いくつかおもしろい点にふれているのでコメントしてみましょう。

まずは、欧州議会での決議( RESOLUTION )ですが、原文(Civil Law Rules on Robotics European Parliament resolution of 16 February 2017 with recommendations to the Commission on Civil Law Rules on Robotics (2015/2103(INL))
) は、ここになります。

詳細に検討する余裕はないので、タイトルだけみていくと

一般原則
民事責任
ロボットと人工知能の民事利用における責任の一般原則
研究とイノベーション
倫理的原則
欧州機関
知的財産およびデータの流れ
標準化、安全、セキュリティ
自律的移動手段
ケアロボット
医療ロボット
教育および雇用
環境インパクト
民事責任
国際的側面
最終局面
となっています。

理屈としては、これに基づいてロボットの民事責任における指令を作成するように推奨がなされている、ということになりそうです。

自律型のロボットについては、問題がどの程度具体的なのか、という問題がありそうです。自律型致死性兵器は、現実的な問題かもしれませんが、ここで念頭におかれている自動車、ケアロボット等で、どの程度、自律性のあるものが、現実的になるのか、というのは、もう少し具体的な問題が見えてから議論したほうが、議論がズレないでいいような気もしています。

あと、最初に紹介した記事で、個人的に興味深いのは、アルゴリズム取引の問題でしょうか。
「FinTech時代における証券取引の法律問題」については、2016年の情報ネットワーク法学会の研究会で発表したテーマでした。

「AIによる機械的行為を想定していない法律では取り締まりが難しい。」とありますが、それでも、アルゴリズム取引に対する法的対応が模索されているのは、念頭に置かれていいことかと思います。

アルゴリズム取引についていえば、北越紀州製紙株式に係る相場操縦事件が参考になるかと思います。少なくても、アルゴリズムが、金融商品取引法に反した取引を前提としていれば、法執行も可能になるわけです。
(事件については、証券取引等監視委員会「北越紀州製紙株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について(アルゴリズム取引の特性を利用することを意図した相場操縦)」決定要旨

ただ、AIによる機会的行為というものとして、現代の技術をもとにすると、
株価騰落予測システム
時系列株価データをRNN(リカレントニューラルネットワーク)により解析するシステム

学術的に
モメンタム取引戦略への応用
自然言語解析を用いたイベント基盤の株価予測への応用

などがAI技術の応用とされています。いつものことですが、NLP(自然言語処理)だって、AIといっていいので、これもAI技術になるので、AIによる証券取引という分析枠組み自体が、あまり意味がなかったりということもあります。

ここで、(学術的な裏付けを離れて->要は、占いレベル)将来、どのようになるのかというのを推測してみることはおもしろいかと思います。何だかんだいっても、証券市場に関するデータをすべて把握して(証券取引をやる人には当たり前ですが、テクニカル派とファンダメンタル派があるわけですが、それらの人たちが、使うデータを全部のみこませてみましょう。それを特徴量を勝手に探して、株価を理由付けする。それができれば、将来の予測もできる)それから株価を分析するような方向に移ってくることになると思われます。

そうはいっても、そのような分析のできる仕組みを多数の業者ができるとはおもえないです。そうだとすると、もはや、株式市場は、限られた投資システムによる寡占市場になるわけです。プレイヤーは、どのようなプレイヤーが、どの会社の仕組みにもとづいて取引を出すのかを分析することができれば(板の分析ですね)、ほとんど勝ち続けることができるでしょう(証券取引所のコンピュータに近くて注文が出せればの話ですが)。この場合、証券市場をもとにした資本主義社会が生き残り続けることができるのか、思考実験をするのには、あまりにもおもしろいテーマなような気がします。