ネットワーク中立性講義 その15 ゼロレーティングと利害状況(2)

(2)利用の公平の問題

電気通信事業法6条は、(利用の公平)として「電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としています。

この規定の趣旨は、電気通信役務の提供契約の締結にあたり、また、その提供にあたって、特定の利用者を正当な理由なく差別して有利にまたは不利に取り扱ってはならないという意味であるとされています(2008逐条解説 43頁)。

「不当な差別的取扱い」とは、「国籍、人種、性別、年齢、社会的身分、門地、職業、財産などによって、特定の利用者に差別的待遇を行うことである」と解されています。では、インターネットでのAアプリを使うものだけ、データ量がカウントされないというのは、どうでしょうか。この利用者は、Bアプリを普段使っていても、Aアプリを使えば、データ量がカウントされないので、「特定の利用者」という概念には、当てはまらないようにもおもえます。(この概念自体が、例示も含めて、個人属性によって特定される利用者というのを前提としているようにおもえます)

(3)通信の秘密の保護

電気通信事業法4条は、(秘密の保護)として
「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2  電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。(略)」
としています。

ところで、実際にゼロレーティングを利用するのにあたっては、技術的にDPI技術を利用しなくてはならず、上記の通信の秘密の侵害になるのではないか、という解釈論も出てくるのです。そうは、いっても、利用者は、いつも悩んでいたデータ使用料を気にしなくていいのだから、どう考えたって、同意があるでしょう、ということになるのですが、そうは、いかず、「通信の秘密(通信内容にとどまらず、通信当事者の住所、氏名、発信場所、通信年月日等の通信構成要素及び通信回数等の通信の存在の事実の有無を含む。)に該当する個人情報の取扱いについては、通信の秘密の保護の観点から、原則として通信当事者の個別具体的かつ明確な同意が必要となり、通信当事者の具体的な委任によらない代理人等の同意によることはできない。」とされています(電気通信事業における 個人情報保護に関するガイドライン(平成 2 9 年総務省告示第 152 号 )の解説)31頁。

特定のサービスを特定の利用者Aがいつ利用したのか、いつ利用を終了したのかというのは、上記の「通信の秘密に該当する個人情報」に該当するように思えます。すると、「個別具体的なかつ明確な同意」が必要となると解されます。
「個別具体的」というのは、「利用するその時点」において、「どのような同意をするか、相当程度詳細に情報が提供されて」と解さざる上ないと思われます。すると、ゼロレーティングは、この解釈を厳格に採用する限りにおいて、実際、不可能ではないかと考えられます。もっとも、通信の秘密をめぐる解釈は、金科玉条たる解釈論と、個別に対する解釈論が、遊離している状態(緊急避難の緊急性が非常に緩かったりしますし)ともいえるので、むしろ、利用者にとって、有利になる場合には、「個別具体的」は、「利用する時点」でなくてもいいという解釈が採用されるという日も来ているかもしれません。

個人的には、「窃用」を「自己または他人の利益のために」利用することという枕言葉を復活させるとか、同意の有効性は、文脈によって判断されるとか、通信の秘密は、もっと、大胆に見直すところがあるように思えているのですが、肥大化の解釈をみなおさないでパッチを当てているところで居心地が悪くなっているような気がします。

ネットワーク中立性講義 その14 ゼロレーティングと利害状況(1)

従量制の通信サービスの課金対象から、特定のサービス・アプリケーションを除外するという「ゼロレーティング」は、果たして、法的に、どのような状況にあるのか、というのを考えていくことにしましょう。

ここで、法的にどのような状況にあるのか、というのは、基本的には、(1)適正な競争状態の維持 (2)利用の公平の問題 (3)通信の秘密の保護 の観点から考えることができるということがいえます。

(1)適正な競争状態の維持

そして、さらに、、(1)適正な競争状態の維持というのは、法的にみて、一定の要件に該当した場合に当然に違法と考えられる場合(電気通信事業法の非対称規制に違反する場合)と個別具体的な市場の競争状態・具体的な行為の内容に応じて違法性を検討しなければならない場合(独占禁止法の具体的な私的独占等の違反を考える場合)とに分けられます。

ここで、接続市場とコンテンツサービス市場を考えてみます。

A) まずは、二つの市場を考えて接続市場における一定の市場力を濫用する場合を考えることにしましょう。

電気通信事業法の非対称規制に違反するばあいには、当然に違法と考えられることになります。(非対称規制が、一定の市場力をもとにした定型的な規制ということもできそうです。-あまり、そういう表現を用いる人はいませんが)

具体的には、NTTドコモについて、禁止行為規制が適用されており(事業法30条1項)、情報の目的外流用の禁止、不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止、他の事業者等に対する不当な規律・干渉の禁止が適用されることになります。(ちなみに、以下の指針においても、電気通信事業法違反かどうかについては、上記の禁止行為規制を検討している)。

これらの行為に該当しない場合でも、個別・具体的な行為については、何度も触れている「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」の考え方で、独占禁止法に触れるかどうかの判断がなされることになります。この指針は、コンテンツの提供に関連する分野について、具体的には、メニューリストの掲載についての例にあげて、独占禁止法違反を論じています。前のエントリでも触れましたが、ちょっと、現代的ではないように思えます(単に、私が、SIMフリーで、キャリアのサービスと無縁だからかもしれませんが)。(もっとも、細かく見ていくと、指針43頁における「自己の電気通信役務と併せて他の商品・サービスの提供を受けると電気通信役務の料金又は当該他の商品・サービスの料金と電気通信役務の料金を合算した料金が割安となる方法でセット提供する場合」と利益状況は、同一であるということもできるでしょう)

そうは、いっても仕方がないので、ここで、その具体的な例を、ゼロレーティングに置き換えて考えてみましょう。

55頁(2)は、システム運用事業者が、コンテンツプロバイダーと他のシステム運用事業者との取引を制限する条件を付けて当該コンテンツプロバイダーと取引したり、メニューリストへのコンテンツの掲載に際して、自己又は自己の関係事業者と比べて、他のコンテンツプロバイダーを不利に取り扱ったりすること等を問題にしています。これをすこし、ゼロレーティング風にアレンジできないか、考えてみましょう。

a) 独占禁止法上問題となる行為
 市場において、相対的に高いシェアを有するシステム運用事業者が、行う以下の行為は、独占禁止法上問題となる。

①自己のデータ課金システムにおいて、既に、他のコンテンツに比して(ゼロレーティング等の)有利な取扱がなされている、または、有利な取扱を求めようとするコンテンツプロバイダーに対して、競争事業者に対して他のコンテンツに比して有利な取扱を求めることを禁止すること、競争事業者においてそのコンテンツプロバイダーが、他のコンテンツに比して有利な取扱を求める場合には、既になしている有利な取扱を中止すること等を条件とすることにより、競争事業者の電気通信役務市場への新規参入を阻止し、又はその事業活動を困難にさせること(私的独占、排他条件付取引等)

② コンテンツを有利な取扱をさせる条件として、コンテンツプロバイダーと顧客との間におけるコンテンツ提供に係る料金その他の提供条件等の設定に関与することにより、当該コンテンツプロバイダーの事業活動を困難にさせ、又はコンテンツ提供市場における競争を阻害するおそれを生じさせること(私的独占、拘束条件付取引等)。

③ システム運用事業者がコンテンツプロバイダーに有利な取扱する場合に、その取扱の条件について、コンテンツを提供する自己又は自己の関係事業者に比べて、他のコンテンツプロバイダーを不利に取り扱うことにより、当該コンテンツプロバイダーの新規参入を阻止し、又はその事業活動を困難にさせること(私的独占、差別取扱い等)

ということは、いえるでしょう。

b)電気通信事業法上問題となる行為
 指針57頁は、第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が、コンテンツプロバイダーの業務について不当に規律し、又は干渉すると認められる場合の問題となります。その意味では、移動体通信市場を考えている限り、具体的に、電気通信事業法の非対称規制が問題となることは、考えにくいことになるようにおもえます。

B)二つの市場のうち、逆に、コンテンツサービス市場の市場力を濫用する場合を考えることにしましょう。

もっとも、ここでは、おおざっぱにコンテンツサービス市場という表現をしましたが、このように、携帯端末で、コンテンツを楽しむという行為に関して、どのような市場が形成されているとみることができるのか、というのは、きわめて困難におもえます。

そもそも、コンテンツを楽しむ市場というのは、携帯端末と自宅での固定での楽しむ行為とで、市場が分かれているのでしょうか。
また、SNS市場ということを考えることができるのでしょうか。LINEは、SNSなのか、チャットツールなのか、という問題も起きそうです。チャットツールとした場合に、(通常のインターネット)メールの代替品なのでしょうか。メッセージング自体は、無料をというビジネスモデルの場合にSSNIPテストの有効性は、どのようにかんがえるべきなのでしょうか。まだ、未解決の問題が山積ししているということがいえるでしょう。

この市場画定によって、市場力の判断も左右されることになります。

もし、市場が画定されれば、それにもとづいて市場力を判断することができます。その市場において、支配的地位を有すると判断される場合には、具体的な市場力の濫用の可能性がでてきます。もっとも、コンテンツサービス市場における市場力を利用して、接続市場における競争を優位に進めるとしても、接続市場自体は、巨大であり、競争相手に対して、競争が成り立たないレベルまで追い込んで、そのあとに価格を上昇させるという戦略がなりたつともおもえないので、実際に濫用の規制が働くことはきわめて低いようにおもえます。

C) 同一の会社が、二つの市場をまたぐ場合も上の判断と同様になります。

ネットワーク中立性講義 その13 競争から考える(5)

その12で「非対称規制」について触れました。

固定通信市場と移動体通信市場にわけて考えてみましょう。

(1)固定通信市場

ここで、固定系の市場というのは、実際の利用の場所(家庭なり、事業所なり)から、インターネットへの接続が固定線で行われている場合をいうことになります。

市場の構造としては、NTT東西が、サービスベースで、70%、設備ベースで、78パーセントになります。(データについては、「電気通信事業分野における市場の動向」による)

競争事業者としては、CATV(例、近鉄ケーブルネットワーク)が、光シェアで、3.4%、電力系事業者(例、ケイ・オプティコム)(同 8.9%)、KDDIが12.8%になります。

でもって、この接続サービスの上に、さまざまなサービスが乗っかって(?-Over The Topと呼ばれることもあります)、提供されるということになります。

代表的なものとして、動画配信サービスがあります。この市場規模は、2016年において、1636億円になり、シェアは、上位から、「dTV」、「Hulu」、「U-NEXT」となるとされています(動画配信(VOD)市場に関する調査結果)。

非対称規制の関係からいうと、接続市場と動画配信市場を考慮することができるわけです。ここで、NTT東西は、第一種指定電気通信設備ということになるので、情報の目的外流用の禁止、不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止、他の事業者等に対する不当な規律・干渉の禁止が適用されます。その意味で、接続市場の支配的地位を濫用することができなくなっています。

「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」があって、そこでは、独占禁止法上、電気通信事業法上問題となる行為が明らかにされています。具体的には、54頁以下において、第四 コンテンツの提供に関連する分野で議論されています。

もっとも、ここであげられている具体的な問題は、移動体電気通信市場において議論されるものが多いので、議論としては、そちらですることにしましょう。

(2)移動体通信市場

移動通信市場は、携帯電話・スマートフォーンなどで通信をする市場ということになります。(もっとも、細かくみていくと、通話とインターネット接続とが、どのような関係になっているのか、というのを問題とすることはできそうですが、一般には、考えていないようです)。

市場シェアでみていくと、NTTドコモは、携帯電話等シェア 43.3%、KDDIグループ(UQを含む)は、28.9%、ソフトバンクグループは、27.8%となっているとのことです。

それぞれの設備が、第二種指定電気通信設備として指定されていること、また、NTTドコモが禁止行為規制適用(事業法30条1項)事業者となっていることになります。

ここで、現在は、移動体端末上において、ゲーム、音楽、動画、電子書籍等の各種サービス(コンテンツ)を利用することが可能になっています。上記の「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」においては、このコンテンツ利用について、種々の行為が議論されています。

指針においては、端末の操作によってアクセスすることができるメニューリストの掲載について議論がなされています(詳細は、55頁以下です)。

もっとも、私のように、SIMフリーで家族のパケット代節約こそが、移動体の使いこなしの肝と考えている人間には、このような問題の設定は、若干?だったりします。(報告書が、平成28年5月なので仕方がないといえば、仕方がないのですが)現在は、パケットの所定データ量の上限に達した場合に、通信速度が制限されるので、その所定データ量の算定に、特定のコンテンツを利用している場合に、データ量として算定しないということが許されるのか、という問題のほうが、重要なようにおもえます。

この問題は、「ゼロレーティング」の問題と呼ばれています(やっと、この問題に戻ってきました)。従量制の通信サービスの課金対象から、特定のサービス・アプリケーションを除外するものと定義することができるでしょう。

ゼロレーティングの問題は、競争に及ぼす影響を主に、その余の問題についても、広く考えていくということになります。エントリを変えて考えることにしましょう。

ネットワーク中立性講義 その12 競争から考える(4)

米国で議論になっている中立性の議論をわが国に置き換えると、NTT東西の関係会社が、ビデオ配信を行いたいと考えたとして、NTT東西が、そのビデオ配信会社の講読料を、パック料金のような形で、極端に割引するということが許容されるのか、というのが、そのもっとも大きな問題の一つということになるかとおもわれます。また、モバイル通信のシェアを有している携帯電話会社が、関連するビデオ配信会社に通信するパケット量を、その料金で算定するパケット量に算定しないというのは、どのように位置づけられるのか、という問題にもなります。

その11で、通信市場と競争の関係について、固定系の市場と移動系の市場とにわけて、みてみたわけですが、わが国で、そのような市場における競争上の地位を濫用する行為に対して、どのような法的な準備がなされているのか、ということについて触れる必要があります。

この点では、まず、電気通信事業法における「非対称規制」についてふれる必要があります。非対称規制というのは、「電気通信事業が国民生活及び社会経済活動の基盤として高い公共性を有することにかんがみ、従前のボトルネック設備に着目した規制に加え、一定の市場において市場支配力の濫用を継続的に防止、除去するための必要最小限のルールを導入することを目的としたもので、」市場支配力に着目して「市場支配的な電気通信事業者をあらかじめ特定して一定の行為規制を通常の電気通信事業者とは非対称的に課すこととするという制度をいいます。その規制についての基本的な考え方は、市場支配的でない事業者に対する規制を大幅に緩和するとともに、市場支配的な事業者にたいして現行規制をベースとしつつ、料金サービス面を含め極力緩和するというものです。

非対称規制の全体像については、また、別の機会ということにして、この非対称規制のための概念として、電気通信事業法は、第一種指定電気通信設備と第二種指定電気通信設備という概念の定義を準備しています。

前者の第一種指定電気通信設備は、法33条2項において、「他の電気通信事業者の電気通信設備との接続が利用者の利便の向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に欠くことのできない電気通信設備」として定義されています。この通信設備は、「その一端が利用者の電気通信設備(移動端末設備を除く。)と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備の電気通信回線の数の、当該区域内に設置される全ての同種の伝送路設備の電気通信回線の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該区域において当該電気通信事業者がこれと一体として設置する電気通信設備」で総務省令で定めるものの総体として、「総務省令で定める」とされています。

実際としては、この「第一種指定電気通信設備」として、NTT東西の設置する電気通信設備が、指定されています。

この通信設備を設置する事業者は、同法30条4項により、

(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)

(2)不当な優先的取扱・利益供与・不利な取扱・不利益供与の禁止(2号)

(3)他の電気通信事業者または電気通信設備製造業者・販売業者に対する不当な規律・干渉の禁止(3号)

の各義務が課されることになります。

また、移動体通信市場については、第二種指定電気通信設備の規定が問題となります。

第二種指定電気通信設備は、特定移動端末設備によって公正される市場において、他の電気通信事業者の電気通信設備との適正かつ円滑な接続を確保すべき電気通信設備として指定される設備として定義されます。

これは、その一端が特定移動端末設備と接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであつて、その伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数の、その伝送路設備を用いる電気通信役務に係る業務区域と同一の区域内に設置されている全ての同種の伝送路設備に接続される特定移動端末設備の数のうちに占める割合が総務省令で定める割合を超えるもの及び当該電気通信事業者が当該電気通信役務を提供するために設置する電気通信設備であつて総務省令で定めるものの総体なのですが、その中で、最近一年間における収益の額の当該市場における収益のシェアが総務省令で定める割合を超える場合においては、他の電気通信事業者との間の適正な競争関係を確保するため必要があると認めるときは、同法30条3項の

(1)接続業務に関して得た情報の目的外流用の禁止(1号)

(2)不当な優先的取扱・利益供与の禁止(2号)

の義務を負う事業者として指定されることになっています。

実際としては、この「第 二種指定電気通信設備」として、業務区域内で端末シェア10%超を有する携帯電話事業者(NTTドコモ、 KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンクモバイル)指定されています(電気通信設備の接続に関する現状と課題

「非対称規制」についての説明が長くなりました。エントリを変えて、説明を続けましょう。

見えてきた現実、ロボットにも法的責任 (AIと世界)

「見えてきた現実、ロボットにも法的責任 (AIと世界)」という記事がでています。いくつかおもしろい点にふれているのでコメントしてみましょう。

まずは、欧州議会での決議( RESOLUTION )ですが、原文(Civil Law Rules on Robotics European Parliament resolution of 16 February 2017 with recommendations to the Commission on Civil Law Rules on Robotics (2015/2103(INL))
) は、ここになります。

詳細に検討する余裕はないので、タイトルだけみていくと

一般原則
民事責任
ロボットと人工知能の民事利用における責任の一般原則
研究とイノベーション
倫理的原則
欧州機関
知的財産およびデータの流れ
標準化、安全、セキュリティ
自律的移動手段
ケアロボット
医療ロボット
教育および雇用
環境インパクト
民事責任
国際的側面
最終局面
となっています。

理屈としては、これに基づいてロボットの民事責任における指令を作成するように推奨がなされている、ということになりそうです。

自律型のロボットについては、問題がどの程度具体的なのか、という問題がありそうです。自律型致死性兵器は、現実的な問題かもしれませんが、ここで念頭におかれている自動車、ケアロボット等で、どの程度、自律性のあるものが、現実的になるのか、というのは、もう少し具体的な問題が見えてから議論したほうが、議論がズレないでいいような気もしています。

あと、最初に紹介した記事で、個人的に興味深いのは、アルゴリズム取引の問題でしょうか。
「FinTech時代における証券取引の法律問題」については、2016年の情報ネットワーク法学会の研究会で発表したテーマでした。

「AIによる機械的行為を想定していない法律では取り締まりが難しい。」とありますが、それでも、アルゴリズム取引に対する法的対応が模索されているのは、念頭に置かれていいことかと思います。

アルゴリズム取引についていえば、北越紀州製紙株式に係る相場操縦事件が参考になるかと思います。少なくても、アルゴリズムが、金融商品取引法に反した取引を前提としていれば、法執行も可能になるわけです。
(事件については、証券取引等監視委員会「北越紀州製紙株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について(アルゴリズム取引の特性を利用することを意図した相場操縦)」決定要旨

ただ、AIによる機会的行為というものとして、現代の技術をもとにすると、
株価騰落予測システム
時系列株価データをRNN(リカレントニューラルネットワーク)により解析するシステム

学術的に
モメンタム取引戦略への応用
自然言語解析を用いたイベント基盤の株価予測への応用

などがAI技術の応用とされています。いつものことですが、NLP(自然言語処理)だって、AIといっていいので、これもAI技術になるので、AIによる証券取引という分析枠組み自体が、あまり意味がなかったりということもあります。

ここで、(学術的な裏付けを離れて->要は、占いレベル)将来、どのようになるのかというのを推測してみることはおもしろいかと思います。何だかんだいっても、証券市場に関するデータをすべて把握して(証券取引をやる人には当たり前ですが、テクニカル派とファンダメンタル派があるわけですが、それらの人たちが、使うデータを全部のみこませてみましょう。それを特徴量を勝手に探して、株価を理由付けする。それができれば、将来の予測もできる)それから株価を分析するような方向に移ってくることになると思われます。

そうはいっても、そのような分析のできる仕組みを多数の業者ができるとはおもえないです。そうだとすると、もはや、株式市場は、限られた投資システムによる寡占市場になるわけです。プレイヤーは、どのようなプレイヤーが、どの会社の仕組みにもとづいて取引を出すのかを分析することができれば(板の分析ですね)、ほとんど勝ち続けることができるでしょう(証券取引所のコンピュータに近くて注文が出せればの話ですが)。この場合、証券市場をもとにした資本主義社会が生き残り続けることができるのか、思考実験をするのには、あまりにもおもしろいテーマなような気がします。

プロ人材、移籍制限歯止め 公取委、独禁法で保護 働き方、自由度高く

 「プロ人材、移籍制限歯止め 公取委、独禁法で保護 働き方、自由度高く」という記事が出ています。いくつかの点についてコメントをすることができるかと思います

まずは、この記事の「雇用契約に類するものには独禁法は適用しがたいと考えて運用している」という1978年の発言について、法的には、どのように位置づけられるのか、ということでしょうか。

週刊誌的には、「吠えない番犬」時代の発言ということになりそうですが、法的には、労働市場については、独禁法は適用されるのか、という点が問題になります。

まずは、労働市場における被用者側におけるカルテル行為については、独占禁止法が適用されないということでいいかと思います。そもそも、労働組合は、労働市場を制限する団体であり、自由市場を念頭におく法的な仕組みでは、違法とされうる存在になるわけです。労働組合法は、それを独占禁止法の適用範囲外とすることが当然の前提になっているという理解でいいかと思います。

わが国では、労働組合と独占禁止法の関係ってあまり意識されていないような感じでしょうか。米国では、1806年には、フィラデルフィア・コードウェイナー事件があって、労働組合に刑事共謀の理論が適用されており、その後、1908年、米国最高裁判所は、ダンバリー帽子工事件で、独占禁止法が労働者にも適用されるとの結論を出しました。米国の労働法は、その後、クレイトン法6条・20条によって、労働組合に対する適用禁止によって、一つの新しい段階に移行したということができます。わが国の文脈に置き換えると、労働組合法自体が、独占禁止法の適用除外に関する特別法として発展してきた、ということになるかと思います。(この部分については、ウイリアム・グールド著 松田保彦訳「アメリカ労働法入門」12頁以下)

参考までに、
クレイトン法(Clayton Act 1914) 第6条
人間の労働は、商品もしくは商業の客体ではない。反トラスト法は、相互扶助 (mutual help)の目的のために設立され、かつ、資本金を有せず(not having capital stock)、もしくは営利を目的としない(not conducted for profit)労働、農業、または園芸団体の存在および運営を禁止し、またかかる団体の各構成員がその適法な目的を適法に遂行することを禁止し、また制限するものと解してはならない。また当該団体もしくはその構成員を、反トラスト法による取引制限の違法な結合(combinations)または共謀 (conspiracies)とみなしてはならない。
(これについては、 独占禁止法適用除外制度に関する資料(増補)堀越 芳昭(山梨学院大学 教授))

クレイトン法20条は、合衆国におけるいかなる裁判所も回復し得ない損害が生ずることが示され、そのため適切な法的救済が存在しないという場合でない限り、「使用者と被用者の間、あるいは被用者間もしくは雇用されているものと雇用を求めているものとの間における雇用ないし労働条件に関する争議のからんだ、もしくは、それより発生した事件」においては、規制的命令もしくは差止命令を裁可してはならない」と定めています(前出 グールド 22頁)

 

では、雇用主側は、どうでしょうか。この点について、わが国の動向について、詳しく論じたブログがあります。「雇用契約と競争法(2)公取委の見解」では、この経緯が詳細に触れられています。また、「労働契約への独禁法の適用」でも、植村弁護士が検討しています。

IT業界的には、(黒)ジョブスがシュミットにメールを送って、結局、お互いの引き抜きをやめようという合意があり、それから、他の業界にも、これに参加するように誘ったというのが報道されています。

シリコンバレーの人材引き抜き合戦でスティーブ・ジョブズ、セルゲイ・ブリンなどの談合が明るみに

「スティーブ・ジョブズの「引き抜き電話はやめよう」が、Apple、Googleへの反トラスト訴訟を引き起こした」

そして、結局、多額の罰金を支払うことになりました。
Appleなどの「従業員引き抜き防止」秘密協定に対し534億円の和解金支払い命令が下される

法的な解釈としては、雇用契約か否か、というので、解釈が分かれるということになるでしょう。雇用契約か否かは、どう判断するのか、ということは、「指揮命令関係にもとづく関係か」というメルクマールでもって判断されて、その「指揮命令関係」については、就労時間、就労のための場所・機器の提供、労働の内容などが総合的に判断されることになります。
記事によると有識者会議によって議論が深まるとのことですが、なりゆきが注目されるということになります。

ネットワーク中立性講義 その11 競争から考える(3)

でもって、ゼロレーティングについて考えてみましょう。

そもそも、いわゆるゼロレーティンクというのは、通信に関するサービスの提供者が、消費者にたいして、特定のコンテンツやアプリケーション等の通信料を無料とするサービス(ゼロ・レーティング)を提供することをいうと定義することができるでしょう。このゼロレーティングが、ブロードバンドに関する市場との関係で、どのような影響を及ぼしうるのでしょうか。これは、そもそも、ブロードバンドに関する市場をどう考えるかということにも、関連します。

このような電気通信をめぐる市場については、総務省が、「電気通信市場検証会議」という研究会を開催しており、そこでの資料が興味深いものです。この会議は、「電気通信市場に関する動向の分析・検証を充実させ、電気通信事業者の業務の適正性等に関するモニタリング機能の強化等を図り、効率的かつ実効性の高い行政運営を確保するに当たり、客観的かつ専門的な見地から助言を得ることを目的」とするものです。

とくに、市場の分析については、この会議の「市場分析の対象について」(平成28年11月25日 総務省総合通信基盤局 電気通信事業部事業政策課)という添付資料が参考になります

総務省は、従来、「データ通信」、「音声通信」、「法人向けネットワーク」の3領域について、それぞれ、サービス市場を画定してきました。この状況をしめした図は、以下のとおりです。

それを、この添付資料においては、移動系通信について、「音声通信市場」と「データ通信市場」の区分を廃止する、という判断がなされました。その結果、以下の図のような市場画定を前提に議論することとなっています。

モバイルブロードバンド市場について検討するときに、製品市場というのは、「製品特性やその価格、使用用途によって、消費者が交換可能あるいは代替可能であるとみなす全ての製品及び/又はサービス」は、何なのか、ということを考えることになります。単なる携帯電話の数というわけではなくて、ブロードバンドで、いつでも、どこでも、接続してパケット通信をなしうるのか、という観点から、画定されるような気がします(理屈的には、顧客と競争者の視点、消費者の嗜好から、判断される-需要者の範囲の画定の問題はありますね。白石 「独占禁止法」(3版)51頁-ガラケーの台数は入るのか、とか、UQは、とかの細かい論点はありそう)。

でもって、資料にも記載されているのですが、「携帯電話・PHSサービス(1億6,143万契約〔2016年6月末。以下同じ。〕)のうち、音声・データの両通信機能を兼ね備えた音声通信・データ通信共用サー ビス(1億2,175万契約)が75%と主流を占める中、音声通信とデータ通信を切り離した「音声通信市場」と「データ通信市場」という区分は、現在普及しているサービスの実態にそぐわないものとなっていること、音声通信専用サービス(39万契約、0.2%)は、音声通信・データ通信共用サービスへの代替による減少が続き、僅少となってきていること、通信モジュール等を除く多くのデータ通信専用サービスは、音声通信・データ通信共用サービスとも需要の代替性があること、データ通信専用のサービスであるBWAサービスのほとんどがグループ内取引によりLTEサービスと併せて提供されていること」
から、「音声通信市場」と「データ通信市場」には区分せず、競争状況等の分析の段階で考慮することとする、とされています。音声通信が、風前の灯火ともいえる状態になっていることは、総務省も正面から、認識しているところです。

では、キャリア別のシェアは、というと、
(1)メイン利用者のアンケートでいうと、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、Y!mobile、その他MVNO、持っていない、では、32.8%、29.6%、23.3%、3.4%、MVNO 7.4% 持っていない3.5%だそうです。
(2)総務省の資料だと、携帯電話等シェアという計算の仕方だと、ドコモ、KDDIグループ、ソフトバンクグクループで、それぞれ43.3%、28.9%、27.8%となるそうです。

(基本的には、移動系通信の契約数による。資料は、電気通信事業分野における市場の動向(平成28年5月))

電気通信をめぐる具体的な問題は、以下の図のような構造になる、と判断されています。

固定ブロードバンドと移動系通信市場があって、それにいろいろなアプリケーションが絡んでくるのが、競争上の問題の基本的な土俵ということにになります。

それぞれの市場において、支配的地位を有している事業者が排除的な濫用行為をなさないか、というのが、一つの問題になりますが、わが国においては、電気通信事業法によって、非対称的規制が課されているという特徴があります。そのために、諸外国での「ネットワーク中立性」の議論については、競争の維持という観点からも、一定の回答が与えられているということになるのです。

詳しくは、次回に述べることにしましょう。

ネットワーク中立性講義 その10 競争から考える(2)

前のエントリで、現在、ネットワーク中立性が議論されている市場の関係を図示したところです。

では、この市場の関係が、どのような問題を生みうるのか、ということを考えてみる必要があります。

ところで、市場というのを、どのように画定するのか、というのが一大問題であるのは、「アップル信者の存在の科学的証明?」とか、市場の画定の部分で触れました。

インターネット接続の市場というのが、あるというよりも、固定インターネット接続市場とモバイルインターネット接続市場とにわけて考えられるとおもわれます。理屈的には、需要代替性を優先してみるので、需要者からみて、固定は、速いし、パケット量の制限も考えないで済むけど、一方、モバイル接続も、家の外にスマホをもっていっているときには、スマホでのモバイル接続するよね、ということになるかとおもいます。家の場所でのインターネット接続にモバイルインターネット接続が代替的に利用されているかというと、特に、パケット量の制限がある以上、別個の製品として認識されていると考えられます。

ということで、固定インターネット接続市場を考えていくと、この点については、実績先生のアメリカとの比較のスライドが、わかりやすいかとおもいます。(「日本のインターネット政策と ネット中立性」42頁)

物理的なアクセス回線・ブロードバンドアクセスサービス・インターネット接続サービスについて考えると、いわゆる足回りであるNTT東西自体が、個別・具体的なインターネット接続サービスを提供することができない仕組みになっています。固定に関するISPについては、ブロードバンドアクセスサービスの保有者が、その市場における地位を排除的に濫用するというのが制度的にできないということになっているわけです。

一方、モバイルインターネット接続市場についていえば、現実には、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、それぞれ、相当なシェアを有しています。一方、契約数による場合には、MVNOのシェアは、5パーセントとされています。モバイルインターネット市場については、上記電気通信事業者は、ISP機能をみずから所有することができます。

また、モバイルインターネット接続市場の上には、検索・SNS・ショッピング・映像・音楽・ゲーム・地図情報などなどの種々のアプリによって発展する個々のアプリ市場が存在すると認識することができます。

実績先生の「メディアとしてのブロードバンド産業の分析:構造変化とコンテンツ振興政策への含意」によると、ファシリティプロバイダ、サービスプロバイダ、コンテンツディストリビューター、コンテンツプロバイダという各プレーヤーが、今後、次第に垂直的に統合されるようになっていくことが示唆されています(以下の図は、同論文のページより)。

そうだとすると、モバイルブロードバンド接続プロバイダーが、その地位を利用して、他の市場における競争相手を排除しうるのではないか、という論点がでてくることになります。この点については、次のエントリで検討することにしましょう。

 

 

第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会報告書~Connected Industriesの実現に向けて~

第四次産業革命に向けた競争政策の在り方に関する研究会報告書~Connected Industriesの実現に向けて~」がでています。

趣旨としては「データの収集・蓄積(以下「 集積」という。)や活用の現状を俯瞰した上で、競争環境を整備してイノベーションを促進する観点から、どのようにデータの競争力を評価していくのか、今後どのような事態が想定されるのか、またそうした事態が生じた場合にどのような点に着目していくべきか」という点についての報告書になります。

報告書内容としては

(1)データ駆動社会における「競争の特質」(4頁から6頁)(まったく別のタイトルだけど、こういう感じのほうが分かりやすいとおもう)

(2) データ活用事業モデル(同7から12頁)

(3)競争政策の一般論(13頁から27頁)

(4)具体的な事例検討(28頁以下)

となります。

感想になりますが、(1)ないし(3)については、特に、新規なまとめではないので、特にどうのということを考えなくていいかとおもいます。

(4)についてですが、具体的な「市場」との関係で検討もらえると、もうすこし、具体的な感覚がつかめたかなとおもいます。

競争を語るのであれば、具体的な市場を離れては、競争の検討はありえないはずです。まさに、誰が需要者で、供給者は、だれで、その中で、データがどのような役割を果たしているのか、というのが、検討されるべきに思えます。(また、データ、データといっても、仕方がないですね。データには、個人データもあれば、患者のデータ、医療データもあります。ブルドーザーの機械のデータもあれば、AIの教師データもあります。苦労して翻訳したFCCの通知のデータについては、教えてあげたGoogle先生からお駄賃ほしいよね、というのもあるので、それらの性格ごとに法律問題も違うでしょう)。

データが、経済活動のなかで、どのような役割を果たしているのでしょうか。一つは、グーグルの宣伝モデルは、大きいですね。アマゾンのデータから、全消費行動の把握モデルもすごいでしょう。あとは、コマツのブルドーザーの効率化モデルもいいでしょう。ダビンチの手術データ独占モデルも面白いです。コグニティブAPI提供モデルは、どうかな。

こんな感じで考えると、おいしい市場を抑えるために、その競争力の根源であるデータを押さえるというのが、基本的な戦略ですね。そうだとするとそのベースとなるデータをいかにプロプライエタリな形で、「独占」するか、が政策の肝なのかもしれません。

法律的には、公正取引委員会競争政策研究センター「データと競争政策に関する検討会報告書」が、よくできています。近いうちに、検討して、エントリをあげたいです。

公共財(世耕大臣は「Connected Industries」を標語として、共有データを企業や産業の壁を超えて公共財のように持つというビジョン)とかいう考え方は、いま一つ、ピントがずれているように感じます。

アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件

ほとんどEU競争法の部屋になりかけていますけど、それはそれで。でも、駒澤綜合法律事務所は、「ロコでロハスな法律事務所」(死語か)を目指しています。

冗談はさておき、「Google faces a second massive fine from the EU — this time over Android」という記事がでています。欧州委員会が、モバイルOS市場について、アンドロイドOSが、支配的地位の濫用があったとして、7月4日のエントリの比較ショッピングサイト市場に対する検索市場の支配的地位の濫用を根拠とする罰金にもならぶ、罰金を課せられるだろうという記事です。

この事件は、40099 Google Android事件になります。事件の進行状況は、このページからみることができます。

欧州委員会の手続きは、 Statement of Objections(異議告知書)で開始されますが、その際のプレスリリースは、こちらです(2016年4月15日)。ファクト・シートは、こちら。

このファクト・シートによると、

(1)Googleが、自らのアプリケーションやサービスを、排他的にプレ・インストールすることに対して、スマートフォン/タブレットのメーカーに要求またはインセンティブを与えることによって、Googleがライバルのモバイルアプリケーションやサービスの開発と市場アクセスを違法に妨げているかどうか。
(2)Googleが、アプリケーションやサービスをいくつかのAndroid搭載端末にインストールすることを希望するスマートフォンやタブレットメーカーが他のデバイスに修正された競合するAndroidバージョン(いわゆる「Androidフォーク」)を開発したり、販売したりすることを妨げているか、それによって、 競合するモバイルオペレーティングシステムおよびモバイルアプリケーションまたはサービスの開発および市場アクセスを妨げているか、どうか。
(3)Googleが、その他のGoogleアプリケーション、サービス、API(アプリケーションプログラミングインターフェイス)とAndroidデバイス上で配布されている特定のGoogleアプリケーションやサービスを、結びつける/バンドルすることによって、Googleが競合するアプリケーションやサービスの開発や市場アクセスを違法に妨げているかどうか。

が調査の対象ということです。

Statement of Objectionsの内容は、こちら。

「グーグルの市場支配的地位」「委員会の懸念」から構成されています。

「グーグルの市場支配的地位」
「グーグルの市場支配的地位」においては、「dominant in the markets」として、「一般的検索サービス市場」「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」「アンドロイド・モバイルOS市場におけるアプリケーション・ストア市場」において、支配的地位を占めていると主張しています。

「一般的検索サービス市場」は、わかるとして「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」というのは、第三者の製造業者が、デバイスに利用できるものをいうそうです。逆に言うと、垂直統合された開発者によって、利用される基本ソフトは、含まないそうです。

個人的には、アンドロイドOSとiOSが、同一市場ではないという認識をしめしているのですが、これは、?ですね。どう考えても、iPhoneとアンドロイドは、同一の市場で争っているような気がするので、欧州委員会は、どうしちゃったの、という感じです。ECの見解だと、アンドロイドのライバルは、WindowsMobile、FirefoxOSということになるのでしょうか。さらに「アンドロイド・モバイルOS市場」という細かい市場までいくと、どうなのでしょうか。

「委員会の懸念」
「委員会の懸念」においては、グーグル製アプリのライセンス、断片化防止、排他性の項目のもとにさらに論じられています。

グーグル製アプリのライセンス
これは、Android用Googleアプリストア、Playストアを端末に事前インストールすること、Google検索の事前インストールを希望するメーカーは、これらの端末でのデフォルトの検索プロバイダとしすること、また、GoogleのPlayストアや検索機能を事前にインストールしたいメーカーは、GoogleのChromeブラウザをあらかじめインストールしておく必要があるということを意味しています。

グーグルのアンドロイドをインストールする場合に、一定の条件を課しておくということなのですが、「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」「アンドロイド・モバイルOS市場におけるアプリケーション・ストア市場」 などに細分化して、それぞれで、支配的地位を考えていくというのか特徴になりますね。どうも、日本的には、スマートフォンでの経験がポイントなので、その経験として、どのようなものを提供するかは、提供者の裁量がおおきいんじゃないの?という感想をもちそうですが、どうでしょうか。MSのOSと、ブラウザー市場を分けて、IEブラウザつきのWindowsとIEなしのWindowsを発売させたECなわけですが、それが、消費者にとって、どれだけのメリットがあったんでしょうかね。そんなことをしている間に、サービスは、みんなブラウザ上でおこなわれるようになっているわけです。

断片化防止

委員会によると、「Androidはオープンソースのシステムです。つまり、誰でも自由に使用して開発し、変更されたモバイルオペレーティングシステム(いわゆる「Androidフォーク」)を作成することができます。 もちろん、オープンソースモデルは、競争上の懸念を提起しません – 逆に。 委員会の懸念事項は、オープンソースではないAndroid搭載デバイスでのGoogle独自のアプリやサービスの使用条件に関するものです。特に、メーカーがGoogle PlayストアやGoogle検索などのGoogle独自のアプリをそのデバイスにあらかじめインストールしたい場合、Googleは、Androidフォーク実行中のデバイスを販売しないようにする「アンチフラグメンテーション契約」を締結する必要があります。」というのが問題であるということだそうです。

Google独自のアプリやサービスの使用条件として、OS独自の開発をしないという約束をさせることが、OSが、イノベーティブなものになる機会を消費者から奪っているというのが、委員会の主張です。個人的には、Google独自のアプリやサービスを考えるときには、アンドロイド・アプリ/サービス市場(ストアではなくて)を考えるべきでしょうし、そのなかでは、グーグルは、それほど、力があるとは思いません。(私は、純正で使っているのは、ドライブくらいかな。)それによって、イノベーティブなOSの開発を妨げられているというのは、どうも、分析になっとくがいっていないところです。中国製のGマーケットがないところでも、別にイノベーティブな断片化したOSが生まれているとは、おもえないしね、というところです。

どちらにしても、ここらへんの市場画定は、面倒なところです。

排他性

委員会によると、グーグルは、スマートフォンメーカー・タブレットメーカーやネットワークオペレーターに、多額のインセンティブを支払っていて、排他的に、グーグル検索エンジンをプリインストールさせているのを認めている。委員会としては、もし、他の検索サービスがプリ・インストールされていれば、インセンティブが支払われないというのであれば、問題であると考えているとしています。これは、我が国においても、取引の相手方にたいして、取引のライバルと取引しないことを条件として、条件することは、違法とされるので、インセンティブの額・効果が、取引の拒絶なみであれば、そうなるかな、という感じでしょうか。

どうも、「排他性」のところを除いて、微妙な異議告知書のような感じがします。どのようななりゆきになるのでしょうか。

アップル信者の存在の科学的証明?-

ところで、「アップル信者の存在の科学的証明?」というようにエントリの題名を変更しました。これは、上で検討したように、欧州委員会は、iOS市場と、「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」とは、別物であるという認識を有しています。通常の市場画定の作業については、別のページで触れているのですが、欧州委員会は、需要代替性を優先して判断するということをいっています。ということは、需要者をもとに考えて、価格が、5パーセント程度上昇しても、需要者は、代替物には、移動せずに、その価格上昇を許容することになります(SSNIPテストです)。要は、iOSの需要者は、「ライセンス可能なスマートフォンOS」を要した製品とは、別物を使っているので、代替製品ではないと考えていると欧州委員会がデータでもって、判断しているということになります。欧州委員会がどのようなデータを取得しているのかは、よくわかりません。私だったら、オンライン調査で、調べてみたいところですが、それは、さておき、踏まれても、蹴られてもついていきますというのが、iOSの需要者ということになりそうです。世間では、それを「信者」というのですね。